大宋中興通俗演義第五十六回 岳飛の兵、黄竜府に迫る (岳飛兵近黃龍府)
秦檜と王氏の密謀
- 丞相秦檜は権勢を握って以来、政務を顧みず、妻王氏と西湖で遊興にふけっていた。
- 酒宴の最中、金の四太子兀朮の使者が密書を届ける。兀朮は岳飛父子の殺害を秦檜に求めていた。
- 秦檜が手だてに悩むと、王氏は策を授けた。金国との和議を口実に岳飛らに班師(撤兵)を命じさせ、軍権を奪ってから罪を着せて始末すればよいという。
- 秦檜はこの案を喜び、翌日高宗に奏上して岳飛召還の勅命を得た。
岳飛、朱仙鎮で北伐を進める
- 使者李若虚が班師を伝えるが、岳飛は「金軍の勢いは尽き、今こそ中原回復の好機」と拒み、若虚を空しく帰らせる。
- 岳飛は張憲・周真・梁興ら三十六人の統制官を率い、総勢三十万の軍で渡河を期す。近隣の州県の民や豪傑も呼応し、糧秣を運んで官軍を迎えた。
- 燕京以南では金の号令が行われなくなるほど岳家軍が優勢となり、兀朮も度重なる敗戦に嘆息。金軍の副将韓常や馬陵思謀配下の兵ら、宋の民出身の金兵が続々と岳飛に投降を申し出た。
- 岳飛は「黄龍府まで攻め上り、諸君と痛飲しよう」と語る。夜、星を仰いで奸臣が朝廷を惑わしていることを察し、「満江紅」の詞を詠んで志を示した。
- 翌日、部下に永安・永昌・永熙の三陵を修めさせ、汴京奪還を期して軍備を整えた。
秦檜の妨害と十二道の金牌
- 李若虚の復命を聞いた高宗は岳飛の進軍を認めようとするが、秦檜が反対し、諸将の召還を強く求める。
- 岳飛は「兀朮の勢力は尽き、今こそ中原回復の好機。召還されれば十年の功が一日で潰える」と再度上奏するが、秦檜は台官王次翁らを使い、岳飛の孤立を理由に班師を促させ、高宗はこれを許した。
- 一日のうちに十二道もの金字牌が届き、岳飛は東に向かって拝礼し、涙を流して奸臣の妨害を嘆く。将士も皆憤った。
- 岳雲・張憲は撤兵の延期を願うが、使者田思中は君命に従うよう説く。岳飛は熟慮の末、抗命は不忠になると悟り、撤兵を決意。田思中には情報の口外を禁じて帰らせた。