隋唐演義第九十五回 李楽工は笛を吹き仙翁に遇い、王供奉は碁を聴いて神女に謁する (李樂工吹笛遇仙翁 王供奉聽棋謁神女)
張九齢への追祭と忠臣の顕彰
(詞:妙技が仙界にも通じ、その道を極めれば思わぬ奇遇に恵まれることを詠む)
張鎬は睢陽を奪還し、賀蘭進明の不救を咎めた。上皇(玄宗)は蜀にあって楊貴妃を失った寂寥の中、安禄山の暴虐と死を聞き、かつて安禄山の危険性を見抜いていた張九齢を偲んで墓前への祭文を送り、死節の臣を顕彰するよう詔を発した。
梨園の黄幡綽が賊中から逃れて帰参し、雷海青殉節の詳細を上皇に語った。内侍馮神威が幡綽の忠誠を疑う場面もあったが、幡綽は機知で切り抜けた。
李謨と笛の仙翁
笛の名手李謨は、戦乱で逃げ延びる途中、山寺で虎の妖に遭遇するが危うく難を逃れる。その後、越州で泛舟の宴に興じていた折、老翁が現れ、李謨の笛の音を批評し、自ら笛を吹いて楽器を割ってしまうほどの妙技を見せる。老翁は李謨に新しい笛を授け、人間には吹きこなせない笛を吹いて湖に異変を起こして見せ、正体を明かさぬまま去った。李謨はその後蜀の上皇の元へ帰参し、この不思議な体験を奏上した。
王積薪と仙人の棋譜
高力士はかつて棋の名手・王積薪が旅先で仙人に出会った話を語り、上皇の求めで王積薪本人が経緯を語る。若き日、玄宗自身が微行中に王積薪の宴席に立ち寄り身分を明かさず去った縁で翰林院に召された逸話に始まり、蜀への道中、山中の一軒家で老婆とその嫁が口頭のみで対局する神業のような棋(口頭で座標を告げ合うだけで打つ)を盗み聞きし、翌朝手ほどきを受けて棋力が飛躍的に向上した体験が語られる。上皇はこれらの怪異を仙人の仕業と推測し、張果・葉法善・羅公遠がいれば正体が分かったであろうと惜しんだ。
戦況の好転
折しも粛宗より、永王璘の謀反(江南での僭称帝位)の報と、広平王・郭子儀が回紇の援軍を得て長安を奪還したとの捷報が相次いで届き、上皇は永王討伐を命じつつ、長安回復を喜んだ。