隋唐演義第八十二回 李謫仙は詔に応じ異国の書に答え、高力士は讒言を進めて雅調を論う (李謫仙應詔答番書 高力士進讒議雅調)
渤海国からの謎の国書
(詞:李白が殿上で異国の書を草し、脱靴・磨墨で旧怨を晴らした逸話を詠む)
楊貴妃が復宮した後、四方から貢物が引きも切らず届く中、渤海国から解読不能な文字の国書が届いた。侍郎蕭霊はじめ李林甫・楊国忠、翻訳官まで誰一人読めず、玄宗は三日以内に読み解けねば官員を罷免すると激怒した。
李白の登用と番書解読
賀知章の家に寄寓していた李白が番字を読めると聞き、知章が推挙した。李白は当初辞退したが、汝陽王璡・李適之・杜甫らの後押しもあり、五品の冠帯を賜って参内した。李白は国書が渤海国の文字であることを見抜き、非礼な内容(高麗の割譲要求と武力での威嚇)を朗読して見せた。群臣の議論が割れる中、李白は返書を自ら起草し、相手国の文字でも副状を書くと申し出た。
脱靴・磨墨の雪辱
翌日、李白は殿上で詔書を起草するにあたり、かつて自分を退けた楊国忠に磨墨を、高力士に脱靴を命じるよう玄宗に願い出て許された。李白は堂々たる詔文と、渤海文字による副状を書き上げ、これを聞いた渤海使は畏れ入り帰国後降伏を申し出た。玄宗は喜び李白を翰林学士に取り立てた。
清平調と沈香亭の宴
李白は褒賞や官職を固辞し、ただ美酒を望んだ。ある日、玄宗と楊貴妃が沈香亭で牡丹を賞でる宴を催し、新曲を作らせるべく市中で泥酔していた李白を探し出させ、酔いを覚まさせた上で「清平調」三章を即座に詠ませた。詩は玄宗・楊貴妃に絶賛され、楽師たちの演奏と共に披露された。
高力士の讒言
脱靴の恥を根に持つ高力士は、李白の詩「可憐飛燕倚新妝」が楊貴妃を趙飛燕(不品行で知られた漢代の皇后)になぞらえた侮辱だと吹き込み、楊貴妃の怒りを買わせた。以後、楊貴妃と楊国忠はことあるごとに李白を讒言し、玄宗の信任があっても要職には就けられなくなった。李白は讒言を悟りつつも辞官を許されず、いっそう酒に溺れるようになった。