- 高祖は諱を邦、字を季という。初め昭霊后が大沢の堤で休んでいたとき、夢に神と交わった。おりしも雷電が鳴り空は暗く、太上皇が見に行くと蛟龍がその上に臨んでいた。やがて身ごもって高祖を生んだ。
- 高い鼻すじに龍のような顔、美しい髭をたくわえ、左の股に七十二の黒子があった。寛大で人を愛し、大きな知恵と度量があった。
- かつて泗水の亭長を務めた。王媪や武負の店で掛けで酒を飲み、酔って店に泊まると、店の主人は高祖の上に不思議な光を見た。二人はこれを異として、証文を折り破って代金を請求しなかった。
- 単父の呂公は人相を見るのを好み、娘には貴い相があると考えていた。仇を避けて沛に移り、沛の令が娘を求めたが与えず、高祖の容貌を見て非凡と見抜き、娘を妻とした。これが呂后で、孝惠と魯元公主を生んだ。
- ある老父が通りかかって飲み物を乞い、呂后・孝惠・魯元公主を相してみな大貴の相だと言った。高祖を見ると大いに喜び「夫人と子らはあなたのおかげで貴いのです。あなたの貴さは言葉にできません」と言い、去って二度と現れなかった。
- 高祖は亭長として囚徒を驪山に送る途中、夜、豊の西の沢を通ると蛇が道をふさいだので、剣を抜いて斬り、通り過ぎた。後から来た者が、老婆が蛇を哭して「これは白帝の子だ。今しがた赤帝の子に出会って殺された」と言うのを見た。老婆は忽然と姿を消した。
- 高祖は役人を避けて山沢に隠れたが、呂后はいつもその居場所を知っていた。高祖のいる場所の上には赤い雲気が立っていたという。望気の者が「山東に天子の気がある」と言い、秦の始皇帝は東方に巡遊してこれを抑えようとした。