唐李問對主客・遅速の術

  • 太宗が言った。「兵は、主となることを貴び、客となることを貴ばない。速きを貴び、久しきを貴ばない。なぜか。」
  • 靖が言った。「兵は、已むを得ずしてこれを用いる、どうして客となり久しくすることがありましょうか。『孫子』は言います、『遠く輸せば則ち百姓は貧しくなる』と。これは客となることの弊であります。また言います、『役は再び籍せず、糧は三たび載せず』と。これは久しくすべからざる験であります。臣は主客の勢を校量するに、客を変じて主と為し、主を変じて客と為す術があります。」
  • 太宗が言った。「どういうことか。」
  • 靖が言った。「『敵に糧を因る』とは、客を変じて主と為すことであります。『飽なる者はこれを飢えしめ、佚なる者はこれを労せしめる』とは、主を変じて客と為すことであります。故に兵は主客・遅速に拘らず、ただ発すれば必ず節に中るのを以て宜しとします。」
  • 太宗が言った。「古人にこの例はあるか。」
  • 靖が言った。「昔、越が呉を伐つに、左右の二軍を以て鼓を鳴らして進ませると、呉は兵を分けてこれを禦ぎました。越は中軍を以て潜かに渉り、鼓を鳴らさず、呉の師を襲って敗りました、これは客を変じて主と為した験であります。石勒が姫澹と戦うに、澹の兵は遠くより来たので、勒は孔萇を前鋒として遣わし、澹の軍を逆撃させ、孔萇は退いて澹はこれを追ってくると、勒は伏兵を以てこれを夾撃し、澹の軍は大敗しました、これは労を変じて佚と為した験であります。古人にはこのような例が多くあります。」