鐵冠圖全傳第四十二回 李自成衆を率い宮中を捜し、王承恩独り主を守る (李自成率眾搜宮 王承恩隻身保主)
帝と王承恩の再会
- 街の中央に座り込んでいた崇禎帝は、慌ただしく駆けてくる王承恩を見つけて呼び止める。互いに逃げ惑う群衆にはぐれていたのだった。
- 王承恩は帝の乱れた髪を整え、自分の帽子を帝にかぶせて支えながら歩き出す。
出口を求めてさまよう
- 御河橋から東華門へ回るが、いくつもの門が固く閉ざされ石で叩いても開かない。外の喊声から城門突破は難しいと悟り、後宰門を目指す。
- 騎河楼のあたりで一陣の風に帝の帽子が河へ吹き飛ばされる。煤山のふもとまで来ると、後宰門の上には既に賊の旗が翻り、北方からも人馬の喊声が迫っていた。二人は塀を越えて物陰に身を隠す。
- 王承恩は「ここは何もない山かげゆえ賊も来まい、救援を待とう」と帝を慰めるが、実際には既に賊が都を掌握した後であった。
李自成の入城と即位
- 大明門・承天門を破った李闖(李自成)は、承天門の額に矢を放ち吉凶を占うが、「天」の字の下にわずかに逸れて刺さり不機嫌になる。牛金星が「天字の下に中るのは天下を得る吉兆」となだめすかす。
- 軍師の宋炯に急かされる形で吉日を選ばぬまま即位を決め、大順・永昌の元号を定める。皇極殿で龍袍を纏い九龍墩に座した途端、幻覚か九龍が牙を剥き妖怪が現れる幻を見て気絶してしまう。
- 目覚めた李闖は宋炯を「日取りを選ばなかった」と責めるが、宋炯は「天字を射たことこそ天を欺く行い」だとし、改めて吉日を選び直すよう勧める。
「公主」費貴貞との出会い
- 宝物庫や後宮を検分するため寝宮に入ると、周皇后は既に自縊しており、そこに一人の美女が泣いていた。実は皇后付きの宮女・費貴貞(十六歳)で、皇后の後を追わず「公主」と偽って難を逃れようとしていた。
- 李闖は彼女を哀れみ、先に捕らえていた男(李岩)に嫁がせることを決め、李岩は喜んで彼女を伴い退出した。
崇禎帝への追及と決断
- 李闖は崇禎帝の行方が知れないことを気にかけ、宋炯に厳しい布告を出させる。帝を見つけて差し出せば褒賞、匿えば一族皆殺し、三日を過ぎれば城中の民を皆殺しにするという内容だった。
- 布告の噂は塀の外にも及び、これを聞いた崇禎帝は王承恩に「もう探る必要はない、賊がこれほど厳しく朕を追っているなら、城中の民を巻き添えにするより自ら出て捕らわれよう」と言い、塀を越えようとする。