鐵冠圖全傳第三十六回 全軍を喪い建泰踏まれ、空城の計で唐通を射る (喪全師馬踏建太 設空城箭射唐通)

李建太の最期

  • 賊軍が城内に迫ると、李建太は馬に飛び乗って逃げようとしたが、誤って西門から出て賊兵に遭遇し、驚いて落馬した。
  • 流賊が城になだれ込み、天下兵馬大元帥であった李建太を踏み潰して惨殺した。遺体すら残らなかった。
  • 城内の軍民は逃げ惑うか賊に降るかのいずれかとなり、李建太が蓄えていた糧草もすべて流賊の手に渡った。

李闖、八達嶺へ進軍

  • 李岩は宣府へ戦勝を報告する書状を送り、李闖は喜んだ。
  • 居庸関を守る太監・王進忠が密書を送り、関を献じて内応することを申し出た。李闖は宋炯と相談のうえ進軍を決め、沙城・懐来などを次々に攻略した。
  • 榆林の総兵は守り切れぬと悟り、自刃した。
  • 賊軍はやがて八達嶺に至り、大営を構えた。八達嶺は北京の咽喉にあたる要害で、上下二つの関からなり、上関は険しい山と高い城壁に守られ、南口を経て北京へ至る要路であった。

于希祖と馬岱の内応計

  • 八達嶺守備の于希祖(少保于謙の子孫)は、居庸関総兵・馬岱のもとを訪れ、王進忠から届いた買収の密書と銀を差し出した。密書は于希祖に馬岱暗殺と八達嶺明け渡しを命じるものだった。
  • 馬岱は驚いたが、于希祖の耳打ちで計略を授かり、意を通じ合った。
  • 翌日、馬岱は兵を集め、王進忠の陰謀を明かしたうえで、銀を将兵に分け与え、忠義を尽くして関を死守するよう説いた。将士は感激して忠誠を誓った。
  • 南関を固く閉ざして王進忠が賊に呼応できないようにし、京へ援軍を求める上奏を送るとともに、延慶の唐通将軍にも救援を要請した。

八達嶺の伏兵と唐通の戦死

  • 探馬が、流賊が岔道を過ぎて八達嶺に迫っていると報告した。馬岱・于希祖は城門を固く閉ざし、偽の内応者を送って李闖をおびき出す計略を仕掛け、城の西門内に大砲と木石を伏せた。
  • 二更、賊の大軍が接近したが、合図の大砲が不発に終わり、伏兵は狼狽した。それでも李闖・宋炯の先鋒は闇の中で混乱し、擂木や滾石で多数の死傷者を出して敗走した。折よく唐通の援軍が駆けつけ、李闖は残兵五万を率いて敗走した。
  • 宋炯は、唐通が延慶の兵を八達嶺救援に出したため延慶が手薄になったと見て、李闖に延慶急襲を進言。李闖は延慶を陥落させ、城内の民を皆殺しにした。
  • さらに宋炯は伏兵を配し、戻ってきた唐通軍を城外で殲滅する策を立てた。唐通は奮戦して血路を開いたが、城門で千斤の鋼閘が落とされ、馬もろとも壕に転落し、乱箭に射られて壮絶な最期を遂げた。三軍は総崩れとなり降伏した。
  • 李闖は延慶に留まらず、再び八達嶺の麓に兵を進めて遠く陣を張った。関中では唐通戦死の報に馬岱・于希祖が涙し、援軍の到着を待って賊を破る構えを固めた。