鐵冠圖全傳序(序)

序文の趣旨

  • 漢の高祖と明の太祖は、ともに庶民の身から天運を受けて天下を統一した点で共通する、との対比から説き起こす。
  • 高祖は秦の苛政の後を継ぎ、項羽との争いを制して統一を果たした。武力と智略に加え、殺戮を好まなかったことが勝因であり、項羽は強暴ゆえに敗れたと評する。
  • 明の太祖も濠州で義兵を興し、民を重んじる姿勢で西・東・元の勢力を次々に平らげ、短期間で帝業を成し遂げた。恩沢が民に深く及んだために国を長く保ったとする。
  • これに対し李自成・張献忠の二賊は、初めから掠奪と虐殺を事とし、腹を裂き心をえぐり、耳目や足を削ぎ、屍を積んで焼くなど残虐を極め、天の好生の徳に背いたため、最後まで「賊」のままで終わったと断じる。
  • 一時は宮城に入り玉座に上ったものの、座るたびに目眩を起こし、鋳造した貨幣(永昌銭・洪基銭)も通用しなかった逸話を挙げ、民を失う者は天下を失うという理を説く。
  • 秦・楚がかつて漢の高祖にとっての露払い(敵対勢力)であったように、漢・呉は明の太祖の、そして李自成・張献忠は大清の聖主の露払いとなったとまとめ、この序を記すとする。