新唐書卷二十八上 志第十八上 曆四上

  • 開元大衍暦は演紀上元閼逢困敦の歳を起点とし、開元12年甲子までの積算は9696万1740算である。

一に曰く、歩中朔術(節気・朔の計算)

  • 通法:3040。策実:111万0343。揲法:8万9773。滅法:9万1200。策餘:1万5943。用差:1万7124。掛限:8万7018。三元之策:15、余664・秒7。四象之策:29、余1613。中盈分:1328・秒14。朔虚分:1427。爻数:60。象統:24。
  • 策実に積算を掛けたものを中積分といい、通法で割った商が積日、爻数(60)で割った余りを甲子から数えて天正中気を得る。三元之策を加えて次気を得る。分を小余、日を大余とし、率を加減する際は下位に余秒があれば同類に従って繰り上げる。日は爻数を超えれば60を差し引く。
  • 揲法で中積分を割った余りを「帰余之掛」といい、中積分からこれを引いたものが朔積分。通法で割って日を求め命日すると天正経朔を得る。一象之日(7日・余1163少)を加えて上弦、倍にして望、3倍して下弦、4倍(一揲)して次月朔を得る。中盈分・朔虚分を帰余之掛に累積して毎月の閏衰を判定し、5万6760以上になればその歳に閏があり、掛限以上ならその月に閏を置く。あるいは定朔の中気の有無により進退を判断する。
  • 常気の小余が通法に満たず中盈分の半分以下なら、象統を掛け秒分を内し3倍5倍して策実から減じ、余りを策餘で割った日数を常気初日から数えて「没日」を得る。経朔の小余が朔虚分に満たなければ通法から小余を引き余りを2倍3倍5倍して滅法から減じ、余りを朔虚分で割った日数を経朔初日から数えて「滅日」を得る。

二に曰く、発斂術(気候・卦候の配当)

  • 天中之策:5、余221・秒31(秒法72)。地中之策:6、余265・秒86(秒法120)。貞悔之策:3、余132・秒103。辰法:760。刻法:304。
  • 各中節から初候を数え、天中之策を加えて次候、さらに加えて末候を得る。中気から公卦の用事を、地中之策を累加して次卦を、貞悔之策を候卦に加えて12節の初外卦の用事を得る。四立から春木・夏火・秋金・冬水の用事を、貞悔之策を季月の中気から減じて土王用事を得る。

24気の初候・次候・末候と卦(公・辟・侯・大夫・卿)

節気 初候 次候 末候 始卦 中卦 終卦
冬至(11月中) 丘蚓結 麋角解 水泉動 公・中孚 辟・復 侯・屯
小寒(12月節) 鴈北鄉 鵲始巢 野雞始雊 侯・屯 大夫・謙 卿・睽
大寒(12月中) 雞始乳 鷙鳥厲疾 水澤腹堅 公・升 辟・臨 侯・小過
立春 東風解凍 蟄蟲始振 魚上冰 侯・小過 大夫・蒙 卿・益
雨水 獺祭魚 鴻鴈來 草木萌動 公・漸 辟・泰 侯・需
驚蟄 桃始華 倉庚鳴 鷹化為鳩 侯・需 大夫・隨 卿・晉
春分(2月中) 玄鳥至 雷乃發聲 始電 公・解 辟・大壯 侯・豫
清明 桐始華 田鼠化為鴽 虹始見 侯・豫 大夫・訟 卿・蠱
穀雨 萍始生 鳴鳩拂其羽 戴勝降于桑 公・革 辟・史 侯・旅
立夏 螻蟈鳴 丘蚓出 王瓜生 侯・旅 大夫・師 卿・比
小滿 苦菜秀 靡草死 小暑至 公・小畜 辟・乾 侯・大有
芒種 螳蜋生 鵙始鳴 反舌無聲 侯・大有 大夫・家人 卿・井
夏至 鹿角解 蜩始鳴 半夏生 公・咸 辟・姤 侯・鼎
小暑 溫風至 蟋蟀居壁 鷹乃學習 侯・鼎 大夫・豐 卿・渙
大暑 腐草為螢 土潤溽暑 大雨時行 公・履 辟・遯 侯・恆
立秋 涼風至 白露降 寒蟬鳴 侯・恆 大夫・節 卿・同人
處暑 鷹祭鳥 天地始肅 禾乃登 公・損 辟・否 侯・巽
白露 鴻鴈來 玄鳥歸 羣鳥養羞 候・巽 大夫・萃 卿・大畜
秋分 雷乃收聲 蟄蟲培戶 水始涸 公・賁 辟・觀 侯・歸妹
寒露 鴻鴈來賓 雀入大水為蛤 菊有黃華 侯・歸妹 大夫・無妄 卿・明夷
霜降 豺乃祭獸 草木黃落 蟄蟲咸俯 公・困 辟・剝 侯・艮
立冬 水始冰 地始凍 野雞入水為蜃 侯・艮 大夫・既濟 卿・噬嗑
小雪 虹藏不見 天氣上騰地氣下降 閉塞而成冬 公・大過 辟・坤 侯・未濟
大雪(11月節) 鶡鳥不鳴 虎始交 荔挺生 侯・未濟 大夫・蹇 卿・頤
  • 各月の閏衰は通法でその月の閏衰を約して日を求め中気から経朔までの日算を得る。卦・候を求めるには天地の策を累加減する。発斂の加時は小余に六爻を掛け辰法で割った半辰の数から求める。

三に曰く、歩日躔術(太陽運行の計算)

  • 乾実:111万0379太。周天度:365、虚分779太。歳差:36太。

定気ごとの盈縮分・先後数・損益率・朓朒積

定気 盈縮分 先後数 損益率 朓朒積
冬至 盈2353 先端 益176 朒初
小寒 盈1845 先2353 益138 朒176
大寒 盈1390 先4198 益104 朒314
立春 盈976 先5588 益73 朒418
雨水 盈588 先6564 益44 朒491
驚蟄 盈214 先7152 益16 朒535
春分 縮214 先7366 損16 朒551
清明 縮588 先7152 損44 朒535
穀雨 縮976 先6564 損73 朒491
立夏 縮1390 先5588 損104 朒418
小滿 縮1845 先4198 損138 朒314
芒種 縮2353 先2353 損176 朒176
夏至 縮2353 後端 益176 朓初
小暑 縮1845 後2353 益138 朓176
大暑 縮1390 後4198 益104 朓314
立秋 縮976 後5588 益73 朓418
處暑 縮588 後6564 益44 朓491
白露 縮214 後7152 益16 朓535
秋分 盈214 後7366 損16 朓551
寒露 盈588 後7152 損44 朓535
霜降 盈976 後6564 損73 朓491
立冬 盈1390 後5588 損104 朓418
小雪 盈1845 後4198 損138 朓314
大雪 盈2353 後2353 損176 朓176
  • 盈縮分を三元之策に盈加縮減し定気の日及び余りを求め、辰数・分を算出する。前後の気の盈縮分から末率・気差・初率・日差・定率を求め、盈縮を累積して各日の先後数・朓朒積の定数を得る複雑な算法が続く。冬至後は陽復として盈は加え縮は減じ、夏至後は陰復として縮は加え盈は減じる。二至では中庸で盈縮がない。

二十八宿の赤道度

  • 南斗26、牛8、婺女12、虚10(虚分779太)、危17、営室16、東壁9、奎16、婁12、胃14、昴11、畢17、觜觿1、参10、東井33、輿鬼3、柳15、七星7、張18、翼18、軫17、角12、亢9、氐15、房5、心5、尾18、箕11、を赤道度とする(畢・觜觿・参・輿鬼の4宿度は古と異なり儀器の実測に基づく常数)。
  • 冬至の歳差の限度:初数12から始まり限ごとに1減じ9限で4に終わる、二立の際は1度弱で平常となる。春分前・秋分後は初限4から始まり限ごとに1増し9限で12に終わり黄道が再び交わる。二分の前後も同様の限で黄道差数(黄赤道差)を求め、黄道度を算出する。
  • 開元12年の黄道度:南斗23半、牛7半、婺女11少、虚10(六虚之差19太)、危17太、営室17少、東壁9太、奎17半、婁12太、胃14太、昴11、畢16少、觜觿1、参9少、東井30、輿鬼2太、柳14少、七星6太、張18太、翼19少、軫18太、角13、亢9半、氐15太、房5、心4太、尾17、箕10少。歳差により時代ごとに度分を改める必要がある。
  • 乾実を中積分から引き通法で度を求め、赤道虚9宿から起算して冬至加時の日度を得る。三元之策を累加して次気の加時日度を得る。躔差・黄赤道差を用いて冬至加時黄道日度を求め、歳差を限数に掛けて三元之策に加え黄道宿次で定気加時日度を求める。定気小余に盈縮分を掛けて夜半日度を求め、日ごとに盈縮分を加減して夜半日度を得る。

四に曰く、歩月離術(月の運行の計算)

  • 転終:670万1279。転終日:27、余1685・秒79。転法:76。転秒法:80。
  • 秒法を朔積分に掛け転終で割った余りを秒法で約して入転分とし通法で日を求め、天正経朔加時の入転を得る。転差日1・余2967・秒1を加えて次朔、一象之策を巡って弦・望を得る。

転日ごとの転分・列衰・転積度・損益率・朓朒積(月の遅速表)

転日 転分 列衰 転積度 損益率 朓朒積
1日 917 進13 度初 益297 朒初
2日 930 進13 12度 益259 朒297
3日 943 進13 24度23分 益220 朒556
4日 956 進14 36度54分 益180 朒776
5日 970 進14 49度22分 益139 朒956
6日 984 進16 62度 益97 朒1095
7日 1000 進18 75度 初益48 朒1192
8日 1018 進19 88度 損64 朒1234
9日 1037 進14 101度42分 損106 朒1170
10日 1051 進14 115度 損148 朒1064
11日 1065 進14 129度 損189 朒916
12日 1079 進13 143度 損229 朒727
13日 1092 進13 157度 損267 朒498
14日 1105 171度46分 初損231末益66 朒231
15日 1112 退13 186度 益289 朓66
16日 1099 退13 200度59分 益250 朓355
17日 1086 退13 215度 益211 朓605
18日 1073 退14 229度 益171 朓816
19日 1059 退14 243度49分 益130 朓987
20日 1045 退17 257度44分 益87 朓1117
21日 1028 退18 271度25分 初益36末損18 朓1204
22日 1010 退18 284度65分 損73 朓1222
23日 992 退14 298度 損116 朓1149
24日 978 退14 311度 損157 朓1033
25日 964 退14 324度 損198 朓876
26日 950 退13 336度57分 損237 朓678
27日 937 退13 349度 損276 朓441
28日 924 361度44分 初損165末益入後 朓165
  • 朔・弦・望の転日の損益率から通率・率差を求め、これを損益して転余・転率・定率を算出し朓朒定数を得る複雑な手続きが続く。第7・14・21・28日にはそれぞれ初数・末数が定められている(例:7日は初2701・末339、14日は初2363・末677、21日は初2024・末1016、28日は初1686・末1354)。
  • 定朔・弦・望の大小余は入気・入転の朓朒定数で朓減朒加して求め、日名が後朔と同じなら大の月、異なれば小の月、中気がなければ閏月とする。定朔・望の夜半日度も同様に加減して求める。

月行九道(九道による月の位置)

  • 合朔の交点が冬は陰暦、夏は陽暦にあれば月は青道を行く。冬至・夏至後は青道の半交が春分の宿にあり黄道の東に当たる。立冬・立夏後は青道の半交が立春の宿にあり黄道の東南に当たる(対衝も同様)。冬は陽暦、夏は陰暦にあれば白道を行き、冬至・夏至後は秋分の宿で黄道の西、立冬・立夏後は立秋の宿で黄道の西北に当たる。春は陽暦、秋は陰暦にあれば朱道を行き、春分・秋分後は夏至の宿で黄道の南、立春・立秋後は立夏の宿で黄道の西南に当たる。春は陰暦、秋は陽暦にあれば黒道を行き、春分・秋分後は冬至の宿で黄道の北、立春・立秋後は立冬の宿で黄道の東北に当たる。四季は8節に分かれ陰陽の交わる所はみな黄道と会するため月には九行がある。
  • 月の交点入七十二候の距交初中黄道日度から5度ごとの限で月と黄道の差数(初数12から限ごとに1減じ4に終わり半交に至れば黄道から6度離れる、以下同様の規則)を求め、これを黄道度に加減して九道定度を得る。冬至・夏至以来の候数に黄道差を掛け18で割ったものが月と赤道の差数となる。日は赤道内を陰、外を陽とし、月は黄道内を陰、外を陽とする。同名・異名の別により加減の符号を定め、黄道度に増損して九道定度を得る。
  • 中気から経朔までの日算に入交汎を加え交終から減じて平交入中気日算を求め、次の交点を求める算法、気初先後数による加減、定数の算出などを経て正交加時黄道日度・九道宿度を求める複雑な手続きが続く。
  • 定朔・弦・望の加時日度から九道の宿度に循次相加し、上弦(91度954分秒22半)・望(倍にして日の対衝)・下弦(3倍)を加えてその日の加時月度を得る。

五に曰く、歩軌漏術(昼夜の長さ・晷影・漏刻の計算)

  • 爻統:1520。象積:480。辰8刻160分。昏・明二刻240分。

定気ごとの陟降率・消息衰・陽城日晷・漏刻・黄道去極度・距中星度

定気 陟降率 消息衰 陽城日晷 漏刻 黄道去極度 距中星度
冬至 降78 息空 丈2尺7寸1分 27刻230分 117度 82度26分
小寒 降72 息11 丈2尺2寸2分 27刻135分 114度35分 82度91分
大寒 降53 息22 丈1尺2寸1分 26刻380分 111度 84度77分
立春 降34 息30 9尺7寸3分 25刻475分 108度 87度
雨水 降(初限)78 息35 8尺2寸1分 24刻470分 103度 91度39分
驚蟄 降1 息39 6尺7寸3分 23刻360分 97度 95度88分
春分 陟5 息39 5尺4寸3分 22刻230分 91度 100度4450分
清明 陟1 息38 4尺3寸2分 21刻120分 85度 105度
穀雨 陟32 息33 3尺3寸 20刻 79度 109度
立夏 陟52 息28 2尺5寸3分 19刻 74度55分 113度
小滿 陟63 息20 1尺9寸576分 18刻 70度 116度
芒種 陟64 息10 1尺6寸 17刻335分 68度25分 117度98分
夏至 降64 消空 1尺4寸7分 17刻250分 67度 118度63分
小暑 降63 消10 1尺6寸 17刻335分 68度25分 117度98分
大暑 降52 消20 1尺9寸5分 18刻 70度 116度
立秋 降32 消28 2尺5寸3分 19刻 74度55分 113度
處暑 降(初限)99 消34・55分 3尺3寸 20刻 79度 109度
白露 降5 消38 4尺3寸2分 21刻120分 85度 105度
秋分 陟1 消39 5尺4寸3分 22刻230分 91度 100度4450分
寒露 陟1 消39 6尺7寸3分 23刻360分 97度 95度88分
霜降 陟34 消24 8尺2寸1分 24刻470分 103度 91度39分
立冬 陟53 消29 9尺7寸3分 25刻475分 108度 87度
小雪 陟72 消21 丈1尺2寸1分 26刻380分 111度 84度77分
大雪 陟78 消11 丈2尺2寸2分 27刻135分 114度35分 82度91分
  • 各気の消息衰に陟降率を陟減陟加して1日ごとの消息定衰を求める。分至の前後1気の外は3日を限として複雑な損益がある(雨水・清明・処暑・寒露初日は特別の損益率が定められる)。これにより1日ごとの晷差・晷数・中晷常数・夜半漏定数・去極定数・距中度定数を算出し、昏中星・曉中星(南中する星)を求める。
  • 南方の戴日(太陽が真上に来る地点)の下では正中に晷(影)がない。戴日の北1度からの差数の増加規則が細かく定められ(初数1379、度ごとに1増から始まり段階的に増加率が変わり72度で増2万840に至る等)、これにより戴日北の毎度の晷数を求める。
  • 九服(諸地方)ではそれぞれ気初日の中晷常数が異なるため、その地の二至の日晷を実測し陽城の戴日北度数と比較して求め、各気の消息定数で加減する。二至の水漏でその地の昼夜刻数を定め、冬夏至差刻から春秋分の初日昼夜刻数を求め、以下同様に消息定衰・差刻から各地の暦を求める算法が続く。