說岳全傳第一回 天は赤鬚龍を下界に遣わし、仏は金翅鳥を人間界に謫す (天遣赤鬚龍下界 佛謫金翅鳥降凡)
宋室の由来と徽宗の代
- 語り手は五代の乱世から説き起こす。華山の隠士・陳摶(希夷先生)が天漢橋で五色の瑞雲を見て「二龍同時に生まれる」と予言する。
- 司徒・趙弘殷の子として生まれたのが趙匡胤(のちの宋太祖)で、上界の霹靂大仙の化身とされる。太祖は陳橋の変で即位し、弟の太宗に位を譲った。太祖から徽宗まで八代の系譜が示される。
- 徽宗は上界の長眉大仙の生まれ変わりとされ、道君皇帝を自称するほど神仙好み。当時の天下は久しく太平で、五穀豊穣・万民安楽であった。
大雷音寺の因縁――女土蝠と金翅大鵬
- 西方極楽世界の大雷音寺で釈迦が説法していたところ、聴聞に来ていた星官・女土蝠が我慢できずに屁をこいてしまう。釈迦は意に介さなかったが、護法神の大鵬金翅明王がこれに激怒し、女土蝠を嘴で突き殺してしまう。
- 女土蝠の霊は東土に転生し、のちに秦檜の妻・王氏となって忠臣を害し、この日の恨みに報いることになる(伏線)。
- 釈迦は事の因果を悟り、大鵬鳥の殺生を戒め、修行の場を追われた大鵬を人間界に下し、功業を積んで罪を償わせたのち山に戻ることを許すとした。大鵬はそのまま東土へ転生に向かう。
陳摶、異変を悟る
- 陳摶に仕える仙童・清風と明月が、師の居眠り中に前山へ遊びに出て、かつて陳摶が趙匡胤と対局した残局の碁盤を見つける(太祖が華山を賭けて負けた故事の由来が語られる)。
- 二人が対局を始めようとした矢先、西北の空に黒気が満ち天変地異の兆しが現れ、慌てて陳摶を起こす。陳摶は「これは大変な因縁だ」と告げる。
- 徽宗の元旦の郊天の祭文で「玉皇大帝」の「玉」の点を誤って「大」の字に打ったため「王皇犬帝」となってしまい、玉帝が激怒して赤鬚龍を女真国黄龍府に降し、のちに中原を侵させ宋室を乱させることにした、という因縁を陳摶が説明する。
- 陳摶は、釈迦がこの赤鬚龍に対抗させるため大鵬鳥を人間界に遣わし、宋室の江山を守らせて十八代までの命数を全うさせようとしていることを見抜き、大鵬の降り立つ先を見に自ら雲に乗って追う。
大鵬、鉄背虬王を討つ
- 大鵬は黄河へ飛び、そこに棲む妖怪・鉄背虬王(かつて許真君に斬られた蛟精の третий子で、河に逃れて修行し得道した者)が水族を従えて遊んでいる場に行き当たり、その左目を突いて深手を負わせ、虬王は河底へ逃げ込む。
- 血気にはやった団魚の精が大鵬に立ち向かうが、たちまち嘴で突き殺される。この団魚の精の霊も東土に転生し、のちに万俟卨となって岳飛を冤罪に陥れ、風波亭で殺す働きをすることになる(伏線)。
- 大鵬はそのまま河南相州のある家の屋根に降り立って姿を消す。陳摶も雲を下り、年老いた道人に姿を変えてその家を訪ねる。
岳家に生まれた赤子
- その家の主人は岳和、妻は姚氏。四十を過ぎてようやく一子を授かり、家中は喜びに沸いていた。
- 老門番は出産直後の穢れを理由に、訪ねてきた道人(陳摶の化身)の斎の申し出を一度は断るが、道人の「福も罪もすべて自分が引き受ける」という言葉に折れ、主人・岳和に取り次ぐ。岳和もためらいつつ、道理を説かれて招き入れることにする。
- 道人は岳和と挨拶を交わし、素性を語り合ったのち、赤子に厄除けを施したいと申し出る。穢れを避けるため傘を差しかけて赤子を抱き出す工夫を教え、その通りにして対面する。
- 道人は赤子の相貌を見て「将来必ず大成する」と述べ、「飛」の名と「鵬挙」の字を授ける。岳和夫婦は大いに喜ぶ。
- 道人はさらに「連れの道友を呼んで共に馳走にあずかりたい」と申し出て中庭に出るが、そこにある二つの品物を見て思わず声を上げる。
- 続きは次回に語られる旨で本回は終わる(次回、洪水と相州の英雄たちの出来事へつながることが予告される)。