西漢演義第八十三回 覇王は陣幕の下で虞姫に別れを告げる (霸王帳下別虞姬)
虞姫との別れ
楚軍がほとんど散り去り、周蘭・桓楚の二人だけが残る中、霸王は「天が我を滅ぼすのか」と嘆いた。虞姫の問いに、霸王は共に過ごした歳月を振り返り、別れを惜しんで涙する。虞姫も別れを拒み、二人は帳中で酒を酌み交わした。霸王は「力山を抜き気は世を蓋う、時利あらず騅逝かず」の歌を詠み、虞姫も「漢兵已に地を略し、四面楚歌の声、大王意気尽く、賤妾何ぞ生を聊んぜん」と和した。
夜明けが迫り、周蘭・桓楚が出発を促す。霸王は虞姫に「劉邦もそなたの美貌なら殺しはしまい」と別れを促すが、虞姫は「大王と生死を共にしたい、男装して従わせてほしい」と願い、渡された剣で自ら命を絶った。霸王は悲しみに崩れ落ち、虞子期も虞姫の死を見て自ら命を絶った。
突囲の激闘
霸王は八百の楚兵を率いて突撃、灌嬰を退け重囲を突破した。漢王・韓信は追撃し、樊噲が山上から諸軍を指揮して包囲網を敷く。曹参らが周蘭・桓楚の殿軍を追い詰め、二人は衆寡敵せず自刃、従者二十余人も殺された。
逃走と道に迷う
霸王は淮河を渡り、わずか百余騎となって陰陵に至るが道に迷う。土地の農夫に道を尋ねると、霸王の悪政を恨む農夫は偽って左の道を教え、霸王は沢に陥るも愛馬・烏騅の跳躍で脱した。楊喜の軍勢に遭遇し、霸王は降伏を勧めるも拒み一騎討ちとなり、楊喜を鞭で打ち落とすが、他の漢将に救われる。さらに英布・彭越・王陵・周勃らに囲まれ、随行はわずか二十八騎となった。
興教院での一夜
日が暮れ、霸王一行は古びた院(興教院)に辿り着き、老人たちに助けられて食事をとった。霸王が刀を研いだ石の跡や馬を飲ませた泉が古蹟として残ったという。夜、霸王は漢王が太陽を抱いて昇天する夢を見て目覚め、「天命は定まっている」と嘆息した。そこへ漢兵接近の報が入り、霸王は再び出立する。