三國演義第三十四回 蔡夫人は屏を隔てて密語を聞き、劉皇叔は馬を躍らせ檀渓を渡る (蔡夫人隔屏聽密語 劉皇叔躍馬過檀溪)
銅雀台の建設
- 曹操は地中から掘り出した銅雀を吉兆として銅雀台の建設を命じる。末子・曹植の提案で銅雀・玉龍・金鳳の三台と空中に架ける橋を計画し、曹操は聡明な曹植を大いに気に入る。
- 曹植と曹丕に鄴での築台を任せ、曹操は袁紹から得た大軍を率いて許都に戻り、論功行賞を行う。郭嘉には貞侯を追贈しその子を養う。荀彧の進言で南征(劉表・孫権攻め)はしばらく見送り、屯田で力を養う方針を取る。
江夏の反乱平定と的盧馬
- 荊州では降将・張武、陳孫が江夏で反乱を起こし、玄德が劉表の命でこれを討伐する。趙雲が張武を討ち取ってその愛馬(後の的盧)を得、張飛が陳孫を討ち取り乱を鎮める。
- 玄德はこの駿馬を劉表に贈るが、蒯越が「この馬は的盧といい主に災いをなす相がある」と諫め、劉表はいったん受け取った馬を玄德に返し、代わりに新野への駐屯を勧める。
- 新野へ向かう途中、幕賓の伊籍が玄德に的盧馬の凶相を伝えるが、玄德は「生死は天命」として意に介さず、以後伊籍と親交を深める。
新野の善政と劉禅誕生
- 玄德は新野で善政を敷き民に慕われる。建安十二年、甘夫人が劉禅を出産する(懐妊時の瑞兆や胎夢が語られる)。
劉表との確執の芽
- 曹操が北征で許都を留守にした隙に、玄德は劉表に許都急襲を進言するが受け入れられず、劉表は言いよどんで嘆息するのみで、蔡夫人が屏風の陰でこれを窺う。
- 後日、曹操の北征成功を聞いた劉表は好機を逃したことを悔いつつ、後継問題(前妻の子・劉琦か、後妻蔡氏の子・劉琮か)を玄德に打ち明ける。玄德は「長を廃し幼を立てるのは乱の元」と諫め、これを盗み聞いた蔡夫人は玄德への恨みを深める。
- 酒席で玄德はふと自らの太もも(髀肉)の肉付きを嘆き功業の遅れを口にし、さらに酒の勢いで「もし自分に基盤があれば天下は問題にならない」と失言する。劉表は無言のまま押し黙る。
- (詩:曹操をも認めさせた英雄・玄德が、いまだ大業を果たせず嘆く姿と、後の三分天下を暗示する)
蔡瑁の陰謀と的盧馬の跳躍
- 蔡夫人は盗み聞いた言葉を根拠に玄德の野心を訴え、蔡瑁と謀って館舎の玄德を襲おうとするが、伊籍の急報で玄德はいち早く新野へ逃げ帰る。
- 蔡瑁は玄德になりすまして壁に反逆の詩を書き劉表に讒言するが、劉表は玄德の人柄を疑わずこれを削り取り、蔡瑁の即時追討も退ける。
- 蔡瑁は蔡夫人と諮り、襄陽での大会を口実に劉表本人ではなく玄德に接客役を任せ、そこで謀殺を図る計画を立てる。
襄陽会の危機と檀渓の跳躍
- 襄陽に招かれた玄德は趙雲ら護衛と共に赴くが、蔡瑁は東・南・北の三門を固め、西門だけを檀渓の難所として空けておく計略を巡らし、宴席で趙雲を別室に誘い出して手薄にする。
- 酒宴の最中、伊籍が玄德に危険を耳打ちし、玄德は的盧馬に飛び乗って単騎で西門から脱出する。
- 檀渓に行く手を阻まれ絶体絶命となるが、「的盧よ、今日こそ我を助けよ」と叫ぶと馬は水中から跳躍し、対岸へ渡り切る。
- (詩:檀渓を飛び越えた玄德の危機一髪の様子と、後の天下三分を惹起した英雄の姿を詠む蘇軾の古詩)
- 対岸から追いついた蔡瑁に玄德は「なぜ我を害そうとするのか」と問い詰め、蔡瑁は否定しつつ弓を構えようとするが、玄德は馬を返してその場を逃れる。ちょうどそこへ西門から趙雲が三百の兵を率いて駆けつける。