呉伸、再び万言書を上る
- 十二月十二日、迪功郎に任じられていた呉伸が再度上書した。「天に二日なく、民に二王なし」との理を掲げ、南北に真偽の主が並び立つ現状を憂い、夷斉・王蠋の節義を慕いつつ、先の上書で官を得た恩に報いるべく、あらためて七つの観点から現状分析と献策を行う。
- (一)敵情の虚実:金軍が四川攻略に兵力を傾ければ、劉豫は東方で孤立する。金軍の実情は見かけほど強大ではないと説く。
- (二)国勢の安危:中原こそ天下の根本であり、これを取り戻さねば四方も定まらないとし、東南に偏在する現状の危うさを説く。
- (三)将帥の賢愚:将たる者は謀を第一とすべきだが、現在の将は世襲や勇猛のみで選ばれ、忠義の絆に乏しいと批判する。
- (四)財賦の得失:諸将が私的な交易・搾取に走り、老弱の兵を多く抱えて国費を浪費している実態を指摘する。
- (五)士卒の能否:東南の兵も西北の兵も、法と賞罰の運用次第で勇怯が決まるとし、現状の軍紀の緩みを憂う。
- (六)人事の従違:中原の民はなお宋を慕っており、劉豫の圧政下でも南朝の王師を待望していると説き、民心の面では有利であるとする。
- (七)侵陵の萌し:淮南を単なる防衛線ではなく死活的な要地と位置づけ、東晋が淝水の戦いで先制したように、機先を制すべきと説く。
- これらを踏まえ、劉豫と金を同時に相手取るのは危険だが、先に劉豫を討てば金は自ずと制せられるとし、光武帝・謝玄らの寡兵で大軍を破った故事を引きつつ、陛下自らが親征し、劉豫討伐の兵を挙げるべきと強く訴える。
- 末尾では、天変(火災の頻発)を中原回帰の促しと解釈し、金からの通好の使者についても油断せず、その隙に乗じて親征を断行すべきと説き、自らの至誠を尽くして上奏を締めくくる。