- 要旨: 太公望は騎兵の運用に「十勝」と「九敗」があるとし、勝機となる十の状況と、陥ってはならない九の死地・敗地を具体的に列挙する。
騎の十勝
- 敵が到着直後で行陣が定まらず前後が繋がっていないとき、その前騎を陥れ左右を撃てば敵は必ず走る。
- 敵の行陣が整い堅固で士卒が戦意旺盛なとき、我が騎は翼して離れず、あるいは馳せ往き馳せ来て、風のように迅く雷のように激しく、白昼を昏くし旌旗や衣服を頻繁に変えれば、敵軍に克てる。
- 敵の行陣が固まらず士卒に戦意がないとき、その前後に迫り左右を狩り立て翼して撃てば、敵は必ず恐れる。
- 敵が夕暮れに宿営に帰ろうとし三軍が驚き恐れているとき、両脇を翼し疾くその後を撃ち、塁口に迫って入らせなければ、敵は必ず敗れる。
- 敵に険阻の守りがなく深く長駆してくるとき、糧道を絶てば敵は必ず飢える。
- 地が平らで四方から敵を見渡せるとき、車騎で陥れれば敵は必ず乱れる。
- 敵が奔走し士卒が散乱しているとき、両脇を翼するか前後を掩うかすれば、その将を擒えられる。
- 敵が夕暮れに引き返そうとし兵が多く行陣が必ず乱れるとき、我が騎を十で隊、百で屯、車を五で聚、十で群とし、旌旗を多く立て強弩を交え、両脇を撃つか前後を絶つかすれば、敵将を虜にできる。
- これらが騎の十勝である。
騎の九敗
- 騎で敵を陥れても陣を破れず、敵が偽って走り車騎で我が後を反撃してくる、これが騎の敗地である。
- 敗走を追って険を越え長駆して止まらず、敵が我が両脇に伏せさらに後を絶つ、これが騎の囲地である。
- 往って還る道なく入って出る道がない、これを天井に陥り地穴に頓すると呼び、騎の死地である。
- 入る所が狭く出る所が遠く、弱い敵が強い我を撃て、少ない敵が多い我を撃てる、これが騎の没地である。
- 大澗深谷や茂った林木、これが騎の竭地である。
- 左右に水があり前に大きな丘、後ろに高い山があり、三軍が二つの水の間で戦い敵に表裏を占められる、これが騎の艱地である。
- 敵に糧道を絶たれ往って還る道がない、これが騎の困地である。
- 汚れた低地や沼沢で、進退がぬかるむ、これが騎の患地である。
- 左に深い溝、右に坑や丘があり、高低差が平地のように見えて進退を誘う、これが騎の陥地である。
- これら九つが騎の死地であり、明将はこれを遠く避け、闇将はここで陥り敗れると結ぶ。