- 要旨: 太公望は用兵の要は地形・気象・虚実を活かした「奇」の運用にあるとし、様々な地形・状況に応じた戦術の目的を列挙した上で、将の資質(仁・勇・智・明・精微・戒・強力)が三軍の成否を左右すると説く。
勝敗を分ける「神勢」
- 昔の善く戦う者は天上や地下で戦えたわけではなく、その成否は皆「神勢」(機微をつかむ勢い)によるとし、これを得た者は栄え、失った者は滅びるとする。
地形・状況に応じた戦術の目的
- 甲を出し兵を陳ね、卒を縦にして行を乱すのは変化を起こすため。
- 草木の茂った深所は逃げ隠れるため、谿谷険阻は車騎を止めるため、隘塞山林は少数で多数を撃つため。
- 窪地や暗い沢は形を匿すため、清明で隠すもののない場は勇力で戦うため。
- 飛矢のように速く弩機のように撃つのは精微な備えを破るため、詭計・伏兵・遠くの誑惑は軍を破り将を擒えるため、四分五裂に見せるのは円陣・方陣を破るため。
- 敵の驚駭に乗じるのは一で十を撃つため、敵の疲労・暮方の宿営に乗じるのは十で百を撃つため。
- 奇技は深水・江河を渡るため、強弩長兵は水を越えて戦うため。
- 長く関を張り遠くを候うことや、急激に見せかけて謬り逃げるのは城邑を降し服させるため。
- 太鼓を鳴らし喧しくするのは奇謀を行うため、大風・激しい雨は前後から挟撃するため、敵の使者を偽称するのは糧道を絶つため。
- 号令を偽り敵と同じ服をするのは敗走に備えるため、義をもって戦うのは衆を励まし敵に勝つため。
- 尊爵重賞は命に従うことを勧めるため、厳刑重罰は怠る者を進ませるため。
- 喜怒・予奪・文武・徐疾を織り交ぜるのは三軍を調和させ臣下を統制するため。
- 高く開けた場所に処るのは警戒のため、険阻を保つのは堅固のため、山林の茂みは往来を隠すため、深い溝・高い塁を築き糧を多く蓄えるのは持久のためとする。
将の資質
- 「戦攻の策を知らねば敵を語れず、分移(兵の分散・移動)ができなければ奇を語れず、治乱に通じなければ変を語れない」と説く。
- 将が仁でなければ三軍は親しまず、将が勇でなければ三軍は鋭くならず、将が智でなければ三軍は大いに疑い、将が明でなければ三軍は大いに傾く。
- 将が精微でなければ三軍は機を失い、将が常に戒めなければ三軍は備えを失い、将が強力でなければ三軍は職分を失うとする。
結び
- 将は人の司命(生死を司る者)であり、三軍はこれと共に治まりこれと共に乱れる。
- 賢将を得れば兵は強く国は栄え、賢将を得なければ兵は弱く国は滅びると結ぶ。武王はこれに「善哉」と応じる。