- 要旨: 太公望は攻伐の道は言葉にならない機微にあるとし、迅速さ・不意打ち・沈黙を重んじ、天地陰陽の運行を読んで形が見える前に動かず、勝機を見れば躊躇なく動くべきだと説く。
事は語らず、兵は言わず
- 攻伐の勢いは敵の動きに応じ、変化は両陣の間に生じ、奇策と正攻法は尽きることのない源から発するとする。
- 至事(重大な事)は語らず、用兵は言葉にしない。事の至るところは語るに足りず、兵の用いるところは見るに足りないほど密やかであるべきだとする。
- 忽然と往き忽然と来て、独り専らにして人に制されないもの、それが兵であるとする。
先んじて備える
- 兵は聞かれれば議論され、見られれば図られ、知られれば困らされ、明らかにされれば危うくなる。
- 善く戦う者は軍を張り出す前に、善く患いを除く者は事の生じる前に、善く敵に勝つ者は形の現れる前に事を処理し、最上の戦は戦わずして済むものだとする。
- 白刃を交えて勝ちを争うのは良将ではなく、既に失った後に備えを設けるのは上聖ではないとし、智も技も衆人と変わらない者は国の師・国の工にはなれないと説く。
玄黙と不意
- 事は必ず克つことより大なるはなく、用いる術は玄黙(静まりかえって表に出さぬこと)より大なるはなく、動きは不意を突くことより神なるはなく、謀は人に知られないことより善いものはないとする。
- 先んじて勝つ者は、まず敵に弱く見せてから戦う者であり、これによって労力は半分で功は倍になるとする。
天地陰陽への準拠
- 聖人は天地の動きを観察してその法則を知り、陰陽の道に循いその兆候に従い、天地の盈縮に応じることを常とする。
- 万物には死生があり、それは天地の形に因るとし、「形の見えぬうちに戦えば、衆であっても必ず敗れる」と説く。
- 善く戦う者は動じずに構え、勝機を見れば起ち、勝てなければ止まる。恐懼も猶予もあってはならないとする。
果断の重要性
- 用兵の害で猶予に勝るものはなく、三軍の災いで狐疑(疑い迷うこと)に勝るものはない。
- 善き者は利を見て逃さず、時に遇って疑わない。利を失い時に遅れれば、反ってその殃いを受けるとする。
- ゆえに智者は機を逃さず、巧者は一たび決めれば躊躇しない。疾雷は耳を掩う暇もなく、迅電は目を瞑る暇もないほどの速さで動くべきだとし、これに当たる者は破れ、近づく者は滅び、誰もこれを防げないとする。
神明の道
- 将には、語らずして守るところがあれば神であり、見えずして視るところがあれば明であるとする。
- 神明の道を知る者は、野に敵を横行させず、対する国を立たせないほどの力を発揮すると結ぶ。武王はこれに「善哉」と応じる。