列女傳卷五 周主忠妾

主母の不義と毒酒の計

  • 周主忠妾は周の大夫の妻の媵妾(付き添いの侍女)である。この大夫は主父と号し、衛から周に仕官し、二年後に帰ることになっていた。主父の妻は近隣の男と密通しており、主父にばれることを恐れる不倫相手に「心配は無用、毒酒を用意して待ち構えている」と語った。
  • 三日後、主父が帰宅すると、妻は「あなたのために苦労して酒を用意しました」と、媵婢に酒を取らせて差し出させた。媵婢はこれが毒酒であると知り、そのまま差し出せば主父を殺すことになり不義、告げれば主母を殺すことになり不忠と考え、あえて倒れる真似をして酒をこぼした。主父は怒って媵婢を鞭打った。

忠義を貫いた媵婢

  • 事後、妻は媵婢が事の次第を告げることを恐れ、別の落ち度を口実に殺そうとしたが、媵婢は死を覚悟しながらも最後まで真相を明かさなかった。主父の弟がこの事情を知り主父に告げると、主父は驚いて媵婢を許し、妻を鞭打って殺した。
  • 主父は人を遣わして密かに媵婢に「事情を知りながらなぜ言わず、死にかけたのか」と尋ねさせると、媵婢は「主人を殺して自分だけ生き延び、なお主人に恥を負わせるくらいなら、死んだほうがましです。どうして言えましょうか」と答えた。主父はその義を高く評価し貴び、妻として娶ろうとしたが、媵婢は「主人が辱められて死に、私だけが生き残るのは無礼です。主人の座に代わるのも礼に背きます。無礼と背礼のどちらか一つでも辛いのに、両方を負っては生きられません」と辞退した。
  • 自殺しようとしたところを聞いた主父は、厚い贈り物を持たせて他家へ嫁がせた。周辺の人々はこぞってこの媵婢を娶ろうと争った。

史論

  • 君子は忠妾を「仁厚である」と評した。名声はどんなに小さくとも聞こえぬことはなく、行いはどんなに隠されても現れないことはない。『詩経』に「応えぬ言葉はなく、報われぬ徳はない」とあるのはこのことをいう。
  • 頌に曰く、周の主家の忠妾は慈しみ深く序をわきまえていた。主母が淫らな行いに及び毒酒で主父を害そうとしたとき、媵婢は酒を差し出す役目を負いながら倒れる真似をして害を除き、忠義を全うしてついにその福を受けた、という。