出自
三度退けられても去らない夫を評す
- 柳下惠は魯にあって、三度官を退けられても国を去らず、民を憂え乱を救おうとした。妻は「それはあまりに世の汚れに染まりすぎではありませんか。君子には二つの恥があります。国に道がないのに位が高いこと、国に道があるのに位が低いこと、いずれも恥です。今は乱世にあって三度退けられてもなお去らないのは、恥に近いのではありませんか」と言った。
- 柳下惠は「油油(無知で弱い)民が害に陥ろうとしている、私がそれをやめられようか。それに彼は彼、私は私だ。たとえ裸で振る舞う者がそばにいても、それが私を汚すことはない」と答え、平然とその中に身を置いて低い位で仕え続けた。
- 柳下惠が死んだのち、門人が誄(弔いの言葉)を作ろうとした。妻は「夫子の徳をたたえようとするなら、あなたがた以上にわたくしがよく知っています」と言い、こう誄を作った。「夫子は自らを誇らず、力を出し尽くすことをやめず、誠実で人に害を与えず、柔らかく世に従いながらも強引に事を分けようとせず、恥を忍んで民を救い、その徳はいよいよ大きい。三度退けられてもその徳は隠れなかった。心穏やかな君子として永く励んだ。ああ惜しいことに世を去ってしまった。長寿を願っていたが、いま逝ってしまわれた。ああ悲しいことよ、その魂は去ってしまった。夫子の諡は『惠』がふさわしい」。
- 門人はこれをそのまま誄とし、一字も変えることができなかった。
評
- 君子は柳下惠の妻がその夫の名を輝かせたと評した。詩に「人知其一、莫知其他」とあるのはこのことをいう。
史論
- 頌にいう。柳下惠の妻は賢明で文才があった。柳下惠が死ぬと、門人がその弔いの言葉を求めたが、妻がこれを作り、その文はみごとで誰も改めることができなかった。