列女傳卷一 齊田稷母

賄賂を戒める

  • 斉の田稷子の母である。田稷子は斉の宰相となり、下役から賄賂として金百鎰を受け取り、母に贈った。母は「あなたは宰相となって三年、これまで俸禄がこれほど多かったことはない。士大夫としての正当な費用でこれを得たのか。どこから得たものか」と問うた。田稷子は「実は下役から受け取ったものです」と答えた。
  • 母は「私は、士たる者は身を修め行いを潔白にし、いい加減に利得を得ようとせず、誠意を尽くして偽りを行わず、義に反することは心にかけず、道理に反する利益は家に入れないと聞いている。言行が一致し、内実と外見が相応じるものである。今、君はあなたに官を任せ、厚い俸禄を与えている。それは言行によって君に報いるためである。人臣として君に仕えるのは、子として父に仕えるのと同じである。力を尽くし、忠信を欺かず、忠義を尽くすことに努め、命に従って死を賭し、廉潔公正であってこそ、無事に過ごせるのだ。今あなたはこれに反しており、忠義から遠く離れている。人臣として不忠であれば、人子として不孝であるのと同じこと。不義の財は私のものではなく、不孝の子は私の子ではない。すぐに出て行きなさい」と諭した。

王への訴えと復職

  • 田稷子は恥じ入って退出し、金を返して自ら宣王のもとに罪を告白し、処罰を求めた。宣王はこれを聞いて母の義を大いに称え、田稷子の罪を赦して宰相の位に復させ、その公金を母に賜った。君子は「稷母は廉潔で人を感化する力があった」と評した。

史論

  • 『詩経』に「あの君子は、いい加減に食事をしない」とあるが、功もなく俸禄を食むことをしないというのに、まして賄賂を受け取るなど許されるはずがない。
  • 頌に曰く、田稷の母は廉潔で正直、賄賂を受け取った子を責め、それを不徳としたが、忠孝の事に力を尽くさせた。君子は俸禄を受けても、最後まで無駄食いをしないものである、という。