- 要旨: 「練營陣」は、騎兵・歩兵・車兵・輜重兵それぞれの実戦演習(操練)の進め方と、複数営を合わせた陣立て・宿営法を定めた条文集である。号令一つで行軍隊形から戦闘隊形、方営(四角形の野営)へと変化させる手順を細かく規定し、号令系統を誤らせないための注意事項も併せて示す。
騎兵の操練(第一 操馬兵)
- 升帳から下営までの基本手順は「練耳目」の規定に従う。行軍時は左部を前路、中部を中路、右部を後路とし、危険箇所の偵察を先行させる。三路に分かれて進み、教場中央で外囲(左右二部)と子営(中部)に分かれて方営を組む。拒馬・虎蹲砲を配置し、敵が百歩以内に迫れば号令に従って層ごとに鳥銃・快槍・鏜鈀火箭・弓矢と順に射撃し、三十歩以内で鴛鴦陣に組み替えて短兵接戦に移る。著者は、実戦では銃手が片手撃ちで空へ向けて撃つなど不正確な射撃をする悪弊を指摘し、演習でも実戦同様に狙いを正すべきだと戒める。戦闘後は騎兵が突撃を仕上げ、号令に従って整然と退却・帰営する。帰営後は樵採・飲水・炊事を号令に従って順に行い、戦闘の巧拙を講評して解散する。
歩兵の操練(第二 操步兵)
- 手順は騎兵とほぼ同様で、三部が横一列に展開し、敵が百歩以内に迫れば鳥銃・快槍・鏜鈀火箭・弓矢の順に射撃し、三十歩以内で藤牌・狼筅・鏜鈀・快槍(棒として使用)・鳥銃(長刀に持ち替え)の五層からなる鴛鴦陣を組んで戦う。敗走を装って敵を誘い、追ってくれば反転して迎撃する演習も行う。方営を組む手順、樵採・飲水・炊事・講評・帰営の流れは騎兵に準じる。
複数営の行軍・宿営(第三 廣行營・第四 廣下營)
- 営の数が増えるごとに配置を変える規則(二営なら左営を前、右営を後に、三営なら中営を加え、四営・五営はそれぞれ定型の位置取りをする)を示す。宿営時も同様に、営数に応じて外営・子営の層を増やし、五営合営では約1万5千の兵からなる「一つの小城」を形成できるとする。この規則は大きくは十営五営から小さくは一伍五人に至るまで一貫して適用される。
号令伝達上の注意(第五 謹驚馬)
- 発砲などで軍馬を繋ぎ止めておかず暴走させた場合は、当の兵とその馬を管理する者を処罰する。
車兵の操練(第六 操車兵)
- 平時にまず推車の技術、仏狼機・鳥銃・火箭の操作を個別に習熟させてから、車営全体の演習に入る。前門は正廂車を並べ、左右は廂を外向きにして間隔を空けずに連結する。敵の偵察騎に対しては沈黙して動かず、敵が接近すれば車上の鳥銃・火箭・仏狼機を輪番で絶え間なく撃ち続ける(一種が撃つ間に他種が装填する仕組み)。敵が車列に迫れば、大将軍車・火箭車を主将の判断でのみ発射し、車門から歩兵の奇兵が出て鴛鴦陣で迎撃する。歩兵は車から30歩以上離れず、退却も号令に従って段階的に行う。車営を二つ・四つに分割する際の手順(旗の色と砲の数で分割数を示す)も定める。
車内の役割分担(第七 分車任)
- 車正は車内にとどまり車を固守して火器を管理し、出撃はしない。千総は出撃部隊を率い、把総は車を管理し、百総は車の管理と出撃の両方を担う。車正は車内での攻撃を、隊長は出撃部隊の指揮を専管する。
車騎合同の操練(第八 操車騎)
- 車と騎兵を組み合わせた行軍隊形(車列の前後に主将旗鼓・望竿・糧車を置き、騎兵が車列の前後を固める配置)と、方営を組む際の車列合流の手順を細かく定める。伏兵に遭遇した際の対応、敵が接近した際の鳥銃・火箭・仏狼機の輪番射撃、車門からの奇兵出撃と騎兵による追撃・回収の流れも定める。
運用上の注意事項
- 誤射の防止(第九 正車誤): 四面同時に号令を出すと、敵が一面にしか来ていない場合でも全方向が一斉射撃してしまい、味方を傷つけかねない。各面はその面に掲げられた旗の色に応じてのみ応戦すべきだとする。
- 騎兵運用の心得(第十 明用騎): 騎兵の出撃は演習で習熟させるためのものであり、実戦で敵の大軍が車に迫っている際に軽々しく追撃に出すべきではない。状況に応じて判断すべきで、一定の方式に固執してはならないとする。
- 出入りの管理(第十一 稽差避): 演習日には赤い木札で将領の使者の出入りを確認し、無札の者は処罰する。実戦時は令箭・旗号で出入りを管理する。
- 解散時の礼(第十二 正等威): 散会の際、中軍以上は隊列を整えたまま各自の営へ戻り、主将を見送るために待つ必要はない。
- 騎兵と車の連携(第十三 練行伍): 騎兵は車から離れすぎず馬路を確保しつつ、下馬して歩戦する際は速やかに号令に応じるべきだとする。
- 地形への対応(第十四 稱地形): 車営の規模・形は地形に応じて柔軟に変えてよく、一定の型に固執しない。
- 突撃用小型車(第十五 置沖車): 単輪の小型戦車を営の前後に配し、行軍時は隙間を埋め、停止時は車城内の子営として中軍を守り、必要に応じて車城の外に出て突撃に用いる。
輜重兵の操練(第十六 操輜管)
- 平時から戦車営に準じて訓練し、車には千斤程度の土石を積んで実戦を想定した重量訓練を行う。行軍・宿営・応戦の手順は戦車営に準じ、二列で行軍し、危急の際は形にこだわらず車を連結して即席の営を組む。敵が接近すれば火器を輪番で撃ち続け、二十歩以内で奇兵が出撃する。
輜重の運用方針(第十七 分輜責)
- 輜重車は重く鈍いため必ず戦車・騎兵・歩兵の後方を進み、敵の大軍による包囲の危険が大きい。輜重兵には積極的な力戦や首級を求めず、荷を失わずに保つこと自体を功績とする。
馬輜合営(第十八)