大統厯法一上(法原)――編次の趣旨
- 暦を造る者にはそれぞれ拠って立つ本原があり、史はこれを備え録して後世の考証に供すべきである。太初が鍾律から数を起こし、大衍が蓍策に端を発したことは、いずれも本志に詳しい。
- 授時厯は測験と算術を宗とし、ひたすら天に合うことを求めて律呂や卦爻に牽合しなかった。しかしその法の立てられた由来、数の出てきたもと、および晷影・星度については、いずれも全書があった。郭守敬・齊履謙の伝の中に書名が見えて考えることができる。
- ところが元史はまるで採録せず、わずかに李謙の議と厯経の初稿を録するのみで、その後に改めた三応率および立成の数、ならびに割圓弧矢の法、平立定三差の原は、ことごとく削って載せなかった。作者の精意を埋没させたもので、識者はこれを憾みとする。
- 今、『大統厯通軌』および厯草の諸書に拠って、いささか編次する。まず法原、次に立成、次に推歩とする。法原の目は七つ――句股測望、弧矢割圓、黄赤道差、黄赤道内外度、白道交周、日月五星平立定三差、里差刻漏である。
句股測望
- 北京に四丈の表を立て、冬至の日の午正に景の長さ七丈九尺八寸五分を測った。ついで簡儀で太陽が南して地平に至るのを測り、二十六度四十六分半を得た。これを半弧背とする。
- 矢度五度九十一分半を求める。
- 周天の半径から矢を截り去った残り五十四度九十六分を股とする。これが本地から戴日下を去る度である。
- 弦と股から句を別つ術で、句二十六度一十七分六十六秒を求める。これが日出地の半弧弦である。
- 北京に四丈の表を立て、夏至の日の午正に景の長さ一丈一尺七寸一分を測った。ついで簡儀で太陽が南して地平に至るのを測り、七十四度二十六分半を得た。これを半弧背とする。
- 矢度四十三度七十四分少を求める。
- 周天の半径から矢を截り去った残り一十七度一十三分二十五秒を句とする。これが本地から戴日下を去る度である。
- 句と弦から股を別つ術で、股五十八度四十五分半を求める。これが日出地の半弧弦である。
- 二至の日度を合わせて一百度七十三度を得、これを折半して五十度三十六分半を得る。これが北京の赤道出地度である。
- 赤道出地度を周天の四分の一から転じ減じ、残り四十度九十四分九十三秒七十五微を得る。これが北京の北極出地度である。
弧矢割圓
基本の諸率
- 周天径――一百二十一度七十五分少(「少」は用いない)
- 半径――六十〇度八十七分半(これはまた黄赤道の大弦でもある)
- 二至の黄赤道内外の半弧背――二十四度(測ったところを整数に取る)
- 二至の黄赤道の弧矢――四度八十四分八十二秒
- 黄赤道の大句――二十三度八十分七十秒
- 黄赤道の大股――五十六度〇二分六十八秒(半径から矢度の数を減じたもの)
割圓求矢術
- 半弧背の度を自乗して半弧背羃とする。周天径を自乗して上廉とする。
- 上廉に半弧背羃を掛けて正実とする。上廉に径を掛けて益従方とする。半弧背を倍して径を掛け、下廉とする。
- 初商に上廉を掛けた数を益従方から減じ、残りを従方とする。初商を自乗して下廉から減じ、その残りに初商を掛けて従廉とする。従方と従廉を合わせて下法とする。下法に初商を掛けて正実から減じる。実が減らせなければ初商を改める。実に余りがあれば順次に商除する。
- 初商を倍した数に次商を合わせ、これに上廉を掛けた数を益従方から減じ、残りを従方とする。初商と次商を合わせて自乗し、さらに初商を自乗し、この二数を下廉から減じ、その残りに初商の倍数と次商を合わせたものを掛けて従廉とする。従方と従廉を合わせて下法とする。下法に次商を掛けて余実から減じて次商を定める。なお余りがあれば同じ法で商じる。いずれも商じ得た数が矢度の数である(黄道・赤道ともに同じ法を用いる)。
例――半弧背一度から矢度を求める
- 半弧背一度を自乗して一度を得、半弧背羃とする。
- 周天径一百二十一度太を自乗して一萬四千八百二十三度〇六分二十五秒を得、上廉とする。
- 上廉に半弧背羃を掛けて一萬四千八百二十三度〇六分二五を得、正実とする。
- 上廉にさらに径を掛けて一百八十〇萬四千七百〇七度八十五分九十三秒七五を得、益従方とする。
- 半弧背一度を倍して二度、これに径を掛けて二百四十三度五十分を得、下廉とする。
- 初商は八十秒。初商八十秒に上廉一萬四千八百二十三度〇六二五を掛けて一百一十八度五八四五を得、これを益従方一百八十〇萬四千七百〇七度八五九三七五から減じ、残り一百八十〇萬四千五百八十九度二七四八七五を従方とする。
- また初商八十秒を自乗して六十四微を得、これを下廉から減じて残り二百四十三度四九九九三六、これになお八十秒を掛けて一度九四七九九九四八八を得、従廉とする。
- 従廉と従方を合わせて一百八十〇萬四千五百九十一度二二二八七四四八八を得、下法とする。
- 下法に初商を掛けて一萬四千四百三十六度七十二分九七八二九九五九〇四を得、これを正実から減じ、余実三百八十六度三十三分二七一七〇〇四〇九六を得る。
- 次商は二秒。初商八十秒を倍して一分六十秒、これに次商二秒を加えて一分六十二秒を得、上廉一萬四千八百二十三度〇六二五を掛けて二百四十〇度一三三六一二五を得、これを益従方から減じ、残り一百八十〇萬四千四百六十七度七二五七六二五を従方とする。
- また初商・次商あわせて八十二秒を自乗して六十七微を得、これに初商八十秒を自乗した数を加えて一秒三十一微を得、これを下廉から減じて残り二百四十三度四九九八六九、これに先に得た一分六十二秒を掛けて三度九十四分四六九七八七七八を得、従廉とする。
- 従廉と従方を合わせて一百八十〇萬四千四百七十一度六十七分〇四六〇三七七八を得、下法とする。
- 下法に次商を掛けて三百六十〇度八九四三三四〇九二〇七五五六を得、これを余実から減じ、なお二十五度四三八三八二九一二〇二〇四四が残る(一秒に足りないものは棄てて用いない。以下同じ)。
- こうして矢度八十二秒が求まる。他の度についてもみな上の法によって矢度を求め、これを黄赤の相求およびその内外度の根とする(数は後に詳しい)。
黄赤道差
黄道各度の下の赤道積度を求める術
- 周天の半径から黄道の矢度を減じた残りを黄赤道の小弦とする。
- 黄赤道の小弦に黄赤道の大股(大股は割圓の条に見える)を掛けたものを実とし、黄赤道の大弦(半径)を法として割り、黄赤道の小股を得る。
- 黄道の矢を自乗したものを実とし、周天の全径を法として割り、黄道の半背弦差を得る。
- この差を黄道の積度(すなわち黄道の半弧背)から減じた残りを黄道の半弧弦とする。
- 黄道の半弧弦を自乗して股羃とし、黄赤道の小股を自乗して句羃とし、二羃を合わせて開平方して赤道の小弦を得る。
- 黄道の半弧弦に周天の半径(これも赤道の大弦である)を掛けたものを実とし、赤道の小弦を法として割り、赤道の半弧弦を得る。
- 黄赤道の小股(これは赤道の横小句でもある)に赤道の大弦(すなわち半径)を掛けたものを実とし、赤道の小弦を法として割って赤道の横大句を得、これを半径から減じた残りを赤道の横弧矢とする。
- 横弧矢を自乗したものを実とし、全径を法として割って赤道の半背弦差を得る。この差を赤道の半弧弦に加えて赤道の積度とする。
例――黄道の半弧背一度から赤道積度を求める
- 半径六十〇度八十七分五十秒(すなわち黄赤道の大弦)から黄道の矢八十二秒を減じ、残り六十〇度八六六八を黄赤道の小弦とする。
- 黄赤道の小弦に黄赤道の大股五十六度〇二六八を掛けて三千四百一十〇度一七二〇三〇二四を得、実とする。黄赤道の大弦六十〇度八七五を法として割り、五十六度〇一分九十二秒を得る。これが黄赤道の小股(また赤道の小句)である。
- 矢度八十二秒を自乗して六十七微を得、全径一百二十一度七五を法として割り、五十五纎を得る。これが黄道の半背弦差である。
- 黄道の半弧背一度から黄道の半背弦差を減じた残りを半弧弦とするが、差が微以下なので減じず、そのまま一度を半弧弦とする。
- 黄道の半弧弦一度を自乗して一度を得、股羃とする。黄赤道の小股五十六度〇一九二を自乗して三千一百三十八度一五〇七六八六四を得、句羃とする。二羃を合わせて三千一百三十九度一五〇七六八六四を得、弦実として平方に開き、五十六度〇二八一を得る。これが赤道の小弦である。
- 黄道の半弧弦一度に半径(すなわち赤道の大弦)を掛けて六十〇度八七五を得、実とする。赤道の小弦五十六度〇二八一を法として割り、一度〇八分六十五秒を得る。これが赤道の半弧弦である。
- 黄赤道の小股五十六度〇一九二(また赤道の小句)に赤道の大弦(半径)六十〇度八七五を掛けて三千四百一十〇度一六八八を得、実とする。赤道の小弦を法として割り、六十〇度八十六分五十三秒を得る。これが赤道の横大句である。
- 半径六十〇度八十七分五十秒から赤道の大句六十〇度八十六分五十三秒を減じ、残り九十七秒を赤道の横弧矢とする。
- 赤道の横弧矢九十七秒を自乗して九十四微〇九を得、全径を法として割り、七十七纎を得る。これが赤道の背弦差である。
- 赤道の半弧弦一度〇八分六十五秒に赤道の背弦差を加えて赤道積度とするが、今は差が微以下なので加えず、そのまま半弧弦を積度とする。
- こうして赤道積度一度〇八分六十五秒が求まる。他の度もみな上の法によって各黄道度の下の赤道積度を求め、両数を引き算すればすなわち黄赤道差が得られる。これが至後の率である。分後に赤道度から黄道度を求める場合はこれと逆に求めるが、その数はいずれも同じである。
黄赤道相求弧矢諸率立成(上・下)
- 底本にはここに「黄赤道相求弧矢諸率立成 上」および「黄赤相求弧矢諸率立成 下」の表が置かれる。いずれも数表の丁で、本文としての文章はない。
- 下巻の表の欄名は「道積皮・赤道半弧弦・赤道矢度・道積度・度率・黄赤道差」である。
按語
- 按ずるに、郭守敬が創めた法の五端のうち、一に黄赤道差というのが、これがその根率である。旧法は一百一度を相減・相乗したが、授時は句股・弧矢によって方円・斜直の容れるところから差数を求める術を立てた。渾象の理に合い、古に比べて密である。
- ただ至元の厯経に載せるところはきわめて略にすぎ、しかも誤って黄道の矢度を積差とし、黄道の矢差を差率としている。今これを正した。
図説
- 渾円を中ほどで割れば平円となり、平円の一分を任意に割れば弧矢形となる。いずれにも弧背があり、弧弦があり、矢がある。弧矢形を割って半分にすれば、半弧背があり、半弧弦があり、矢がある。弦と矢から句股形が生じる。半弧弦を句とし、矢を半径から減じた残りを股とし、半径を弦とする。句股の内にさらに小句股ができ、小句・小股・小弦がある。大小は互いに求められ、平と側は互いに用いられる。渾円の理はこうして密に近づく。
- 平らなものが赤道、斜めなものが黄道である。二至の黄赤の距から大句股が生じ、各度の黄赤の距から小句股が生じる。
- 外の大円が赤道である。北極から平らに視れば黄道は赤道の内にある。赤道の各度にはそれぞれその半弧弦があって大句股を生じ、またそれぞれ相当する黄道の半弧弦があって小句股を生じる。この二者はいずれも互いに求めることができる。
- 按ずるに、旧史には図がない。しかし表もまた図の属である。今、句股・割圓・弧矢の法は実に歴家の測算の本であり、図がなければ明らかにならない。よってその要となるものを数端、存しておく。
黄赤道内外度
黄道各度が赤道の内外を距る距離および去極の遠近を推す術
- 半径から赤道の小弦を減じた残りを赤道の二弦差とする(これはまた黄赤道の小弧矢であり、内外矢であり、股弦差でもある)。
- 半径から黄道の矢度を減じた残りを黄赤道の小弦とし、これに二至の黄赤道内外の半弧弦を掛けたものを実とし、黄赤道の大弦(すなわち半径)を法として割り、黄赤道の小弧弦を得る(これは黄赤道内外の半弧弦であり、また黄赤道の小句でもある)。
- 黄赤道の小弧矢(すなわち赤道の二弦差)を自乗し、全径で割って半背弦差を得る。この差を黄赤道の小弧弦に加えて黄赤道の小弧の半背とする。これがすなわち黄赤道の内外度である。
- 黄赤道の内外度を、盈初縮末限にあれば加え、縮初盈末限にあれば減じ、いずれも象限度に加減すれば、それぞれ太陽が北極を去る度分が得られる。
例――冬至後四十四度の太陽の去赤道内外度および去極度
- 半径六十〇度八十七分半から、黄道四十四度の下の赤道の小弦五十八度三十五分六十九秒を減じ、残り二度五十一分八十一秒を黄赤道の小弧矢(すなわち内外矢)とする。
- 半径六十〇度八七五から、黄道四十四度の矢一十六度五十六分八十二秒を減じ、残り四十四度三十〇分六十八秒を黄赤道の小弦とする。
- 黄赤道の小弦に、二至の黄赤道内外の半弧弦二十三度七十一分を掛けて一千〇五十〇度五十一分四二三八を得、実とする。黄赤道の大弦六十〇度八七五を法として割り、一十七度二十五分六十九秒を得る。これが黄赤道の小弧弦(すなわち内外の半弧弦)である。
- 黄赤道の小弧矢二度五十一分八十一秒を自乗して実とし、全径一百二十一度七十五分で割って五分二十一秒を得、背弦差とする。この差を黄赤道の小弧弦一十七度二十五分六十九秒に加えて一十七度三十〇分八十九秒を得る。これが二至前後四十四度の太陽が赤道の内外を去る度である。
- 象限九十一度三十一分四十三秒七五に内外度一十七度三〇八九を加えて一百〇八度六十二分三十二秒七五を得る。これが冬至後四十四度の太陽が北極を去る度である。
黄道每度去赤道内外及去北極立成
- 底本にはここに「黄道每度去赤道内外及去北極立成」の表が置かれる。数表の丁で、本文としての文章はない。
白道交周
白赤道の正交が黄赤道の正交を距る極数を推す
- 実測した白道が黄道の内外に出入する六度を置き、半弧弦とする。これはまた大円の弧矢であり、股弦差でもある。
- 半径六十〇度八七五を自乗して三千七百〇五度七六五六二五を得、矢六度で割って六百一十七度六十三分を得、股弦和とする。これに矢六度を加えて合計六百二十三度六十三分を得、大円の径とする。法によって容濶五度七十分を求める。これはまた小句でもある。
- また二至の出入の半弧弦二十三度七十一分を大句とする。
- 大句を法として大股五十六度〇六分五十秒を割り、二度三十七分(整数に取る)を得、度差とする。
- 度差に小句を掛けて小股一十三度四十七分八十二秒を得る。これが容の半長である。
- 半径六十〇度八七五を大弦とし、これに小句五度七十分を掛けたものを実とし、大句二十三度七十一分を法として割り、一十四度六十三分を得る。これが小弦であり、また白赤道の正交が黄赤道の正交を距る半弧弦である。
- 法によって半弧背一十四度六十六分を求める。これが白赤道の正交が黄赤道の正交を距る極数である。