高士傳卷二 東郭順子
田子方が語る師の徳
- 東郭順子は魏の人。道を修め真を守った。田子方が師事し、また魏の文侯の師友ともなった。
- 文侯のそばに侍していた田子方はしばしば渓工を称えた。文侯が「渓工はそなたの師か」と問うと、子方は「いえ、私と同郷の者に過ぎませんが、道を語ることが道理に適うので称えているのです」と答えた。文侯が「では師はいないのか」と問うと、子方は「います」と答え、名を問われて「東郭順子です」と答えた。
- 文侯が「なぜ今まで彼を称えなかったのか」と問うと、子方は「彼は真人であり、容貌は虚を極め、天性のままに真を保ち、清らかで万物を包み込みます。物事に道理が無ければ、正しい姿を示して人を悟らせ、人の作為の心を自然に消し去ります。私ごときに称えられるものではありません」と答えた。
- 子方が退出した後、文侯は「なんと遠く及ばぬことか、徳を全うした君子とは。私は聖智の言葉、仁義の行いを至上と思っていたが、子方の師のことを聞いて、体の力が抜け、口も動かなくなった。私が学んできたものは土人形のようなものにすぎず、魏の国さえも私にとって重荷でしかない」と述べた。