十六国春秋前涼錄六 索紞

数々の占夢

  • 索紞、字は叔徹。燉煌の人。若くして京師へ遊学し太学で学び、経籍に博く通じ通儒となった。陰陽・天文に明るく術数・占候に長け、中国が乱れることを予見し世を避けて郷里へ帰った。郷人は紞に吉凶を占いに来る者が門前市をなすほどであったが、紞は事を多くすべきではないとして、偽りの説を語って効験がないふりをし、これをやめさせた。ただ夢占いだけは悔いのないものとし、問う者を拒まなかった。
  • 孝廉の令狐策は氷の上に立ち氷の下の人と語る夢を見た。紞は氷がまだ融けぬうちの婚姻の事を示す夢だと占い、あなたが媒酌をすることになるだろうと告げた。策は老齢を理由に固辞したが、折しも太守田豹が策に子のために郷人の張公徴の娘を娶らせるよう頼み、まさに仲春に婚儀が成った。
  • 郡主簿の張宅は馬に乗り山を駆け上り家の周りを三周し、松柏だけが見え門の場所が分からない夢を見た。紞はこれを三年後の大禍の予兆と占い、果たして宅は寔の妻の弟・賈摹の謀反に加担し誅殺された。
  • 黄平は馬が舞い数十人が馬に向かって手を叩く夢を見たと問うと、紞は火事の予兆だと答え、平が帰る前に果たして火事が起こった。
  • 郡功曹の張邈は狼が一本の脚を食う夢を見た。紞は「脚の肉が食われるのは『却』の字を表す」と占い、折しも東方の異民族が反乱を起こし使者行は取りやめとなった。
  • 宋桶は家の中に赤い衣を着た人がいて激しく杖で打つ夢を見た。紞は「腹一杯肉を食べることだ」と占い、三日を過ぎ三軒を過ぎたところで皆肉を食べることができた。
  • 紞の占夢はことごとく的中したという。太守陰澹は紞を西閣祭酒に招いたが、紞は老いを理由に辞退した。澹は束帛の礼を尽くし毎月羊と酒を贈った。享年七十五、自宅で卒した(「如君所夢」は一に「士如帰妻」に作る)。