封神演義第二十七回 太師、兵を回し十策を陳べる (太師回兵陳十策)
(詩:天運の循環に盛衰あり、いかに勝算を尽くしても数の前には無力。逆行する者はついに滅びると詠む一首)
比干、無心菜の逸話により落命
比干は北門を出て馬を走らせるうち、路傍で「無心菜」を売る婦人に出会い、「人に心が無ければどうなるか」と問う。婦人が「人は心が無ければ死ぬ」と答えると、比干はたちまち落馬し絶命した。追ってきた黄明・周紀がこれを目撃し、黄飛虎に報告した。子牙の符水の力で剖心後も出血せず馬を進められていたが、この問答によってついに力尽きたのだった。
夏招、鹿台で殉節
比干の死を知った下大夫の夏招は激怒し、単身鹿台に上って紂王を「叔父殺しの弑逆者」と面罵し、剣を奪って斬りかかったがかわされ、捕らえられそうになると自ら台から身を投げて死んだ。武成王黄飛虎らは比干の遺骸を収め、世子微子啓が喪に服した。
聞太師、凱旋し朝政の乱れを知る
北海遠征を終えた聞太師が凱旋する。比干の柩や鹿台の威容を見て驚き、百官から事情を聞く。殿上に置かれた炮烙の刑具について武成王から説明を受け、太師は激怒する。紂王が登壇すると、太師は北海平定の労苦を述べつつ、内政の乱れを厳しく問いただし、紂王は言葉に窮した。
黄飛虎、内情を詳細に報告
太師は百官を自邸に集め、黄飛虎に子細を語らせる。飛虎は蘇妲己入内以来の悪政――姜后への虐待、諸侯を招いての殺戮、杜元銑の誅殺、炮烙の刑、姫昌の幽閉、蠆盆の設置、酒池肉林、鹿台造営による民の疲弊、楊任への酷刑、比干の摘心――を余すところなく訴えた。太師は自らの不明を恥じ、三日のうちに条陳を上奏すると宣言し、府門を閉ざして人払いした。
聞太師、十カ条の条陳を上奏
三日後、太師は上表し、鹿台の破却・炮烙の廃止・蠆盆の埋め立て・酒池肉林の撤去・妲己の廃位・費仲と尤渾の処断・倉廩を開いての救民・招安の使者派遣・賢者の登用・言路を開くことの十カ条を求めた。紂王は鹿台破却・妲己廃位・費仲尤渾の処断の三件を渋ったが、太師が強く迫り、結局七件は即時施行、三件は保留となった。費仲・尤渾が太師を非難して殿上に出たため、太師は二人を殴り倒し斬罪を命じたが、紂王は法司による取り調べに留めさせた。
聞太師、再び東海へ出兵
東海で平霊王が反乱を起こしたとの報が入り、聞太師は自ら二十万の兵を率いて再出兵することとし、朝政を黄飛虎に託して忠言を尽くすよう言い含めた上で、朝歌を発った。