封神演義第二十六回 妲己、計を設け比干を害する (妲己設計害比干)
(詩:北風が瓊瑤を砕く冬、丞相が機に乗じて袍を献ずるも、それが君の妖心をかえって刺激することを誰が知ろう。忠臣の心を割かせる暴政を嘆く一首)
比干、狐皮の袍を献上する
比干は妲己の正体である狐狸の皮をなめして袍襖を作らせ、厳冬の到来を待って献上しようとしていた。仲冬、紂王と妲己が鹿台で雪見の宴を催していたところへ、比干が参内し、鹿台の寒さを案じて袍を献上した。紂王は大いに喜び着用したが、御簾の内からこれを見た妲己は、自分の同族の皮で作られた袍と気づき、内心激しく比干を恨んだ。表向きは「龍体に狐狸の皮毛は似つかわしくない」と諫めて脱がせたが、内心では比干への復讐を誓った。
胡喜媚の登場
ある日、妲己は妖術で顔の妖艶さをわざと抑えて紂王の気を引き、義妹と称する道姑・胡喜媚(紫霄宮で修行中)の話を持ち出した。紂王が会いたいと望むと、妲己は信香を焚けば喜媚が来ると告げる。実は妲己は夜半に元の姿へ戻り、軒轅墳の雉鶏精(喜媚の正体)のもとを訪れ、比干への復讐に協力するよう持ちかけ、宮中で共に栄華を享受しようと誘った。
翌晩、妲己が信香を焚くと、風雲とともに道姑姿の喜媚が現れた。紂王は喜媚の美貌に魅了され、妲己の取り持ちで対面し酒宴となる。妲己が席を外した隙に紂王と喜媚は情を通じ、以後三人で鹿台に同衾するようになった。
妲己、仮病で比干の心臓を求める
ある朝、妲己が突然血を吐いて倒れる芝居を打つ。喜媚は「冀州にいた頃からの持病で、玲瓏の心(七つの穴のある心臓)を煎じて飲ませねば治らない」と偽り、占いと称して「朝中でその心を持つのは亜相比干ただ一人」と告げた。紂王はこれを真に受け、比干に心臓を差し出すよう御札を発した。
比干、姜子牙の符水で身を守り出仕する
比干のもとに次々と急使の御札が届き、事態を知った比干は死を覚悟して家族に遺言する。子が、かつて姜子牙が比干に「危急の際に開けよ」と残した書付を思い出させ、比干はそれに従って符を焼いた水を飲み、五臓を守った上で参内した。
比干、摘心して死す
鹿台で紂王に心臓の提供を迫られた比干は、心の重要性を説いて厳しく諫めたが、紂王は聞き入れず、武士に取り押さえるよう命じた。比干は妲己を罵り、剣を求めて自ら腹を割き、心臓を摘出して投げ捨てた。血は流れ出ず、面は蒼白なまま台を下り、無言で北門へと馬を進めて姿を消した。