元史演義第四十六回 新を得て旧を懐い人面再び逢い、后を納れ妃と為し天倫志異なり (得新懷舊人面重逢 納后為妃天倫志異)

皇次子の養育と燕帖木兒への厚遇

  • 皇次子古納答剌は燕帖木兒に護られて阿魯渾撤里の旧邸に移り、太平王邸の女官らの世話を受けて無事に快方へ向かう。文宗夫妻は喜び、燕帖木兒とその弟撒敦、看護に当たった者たちに金銀・鈔を厚く下賜した。
  • 文宗はさらに燕帖木兒の邸宅を新築し、太平王生祠を建てて頌徳碑を立てる。燕帖木兒の子塔剌海を宮中に召して帝后の養子とし、皇次子も「燕帖古思」と改名させて燕帖木兒との義理の親子関係を示した。
  • 文宗は燕帖木兒に「お前の子は朕の子、朕の子はお前の子」と語り、実の兄嫂を死なせた一方で他人を骨肉のように扱う矛盾が描かれる。

泰定后妃への下賜と燕帖木兒の思惑

  • 太平王妃が病没すると、文宗は弔問し、さらに宗女数人と高麗出身の寵姫不顏帖你を燕帖木兒に下賜する。燕帖木兒は大被を作って夜ごと数人の女性を侍らせるが、正妃の座は空けたままにしており、周囲は理由を知らない。
  • 実は燕帖木兒はかねて東安州に幽居する泰定皇后(八不罕)に思いを寄せていたが、内外の政務に追われて訪ねる暇がなかった。

東安州訪問

  • ようやく暇を得た燕帖木兒は狩猟を名目に東安州へ赴き、泰定后および二妃(必罕・速哥答里)と再会する。歓談のうちに酒宴となり、燕帖木兒は泰定后を上座に据えて杯を勧め、次第に座は乱れていく。
  • 燕帖木兒は「皇后も二妃も寂しく過ごすことはない」とほのめかし、ついに「皇后に王妃として降嫁してほしい」と口にする。泰定后は表向きたしなめつつも拒みきれず、二妃が席を外すと二人きりになり、そのまま結ばれる。二妃も後から加わり、四人の関係が結ばれた。
  • 数日滞在した後、燕帖木兒は都へ帰り、後日輿を差し向けて三人を迎える約束をする。

泰定后妃の入輿と婚礼

  • 帰京後、燕帖木兒は新邸を整え、迎えの使者を東安州へ送る。泰定后妃は喜んで上京し、太平王の新邸に迎え入れられる。京中では燕帖木兒が新たに王妃を娶ったと評判になり、文宗も太保伯顏から事情を知って賞品を贈る。
  • 婚礼の日、八不罕(泰定后)以下三人は正装で新邸に入り、燕帖木兒と夫婦の礼を行う。八不罕は察吉兒公主と旧知の間柄であったため、気まずさを隠しつつ礼をする。
  • 夜、燕帖木兒は八不罕に「明宗皇后(八不沙)でさえ毒殺された。あなたが東安に留まっていれば危うかったが、私の妻となった今は心配ない」と語り、恩を着せる。八不罕は感激して身を捧げる。翌夜は必罕姉妹とも情を交わした。
  • (詩:綱常道義が失われ、皇后が権臣に降嫁したことを非難する内容)

評語

  • 本回は表向き艶聞を描きつつ、燕帖木兒の権勢を笠に着た貪淫と、泰定后妃が名分を捨てて辱めを甘受したことの両方を暗に批判している。廷臣が誰も諫めなかったことに、元朝滅亡の兆しが見える。