詐偽(偽造・詐称に関する規定)
- 符宝・制敕の偽造・鋳造の主謀は処死。制書の妄增減、近侍官の詐称上旨、省府印信・劄付の偽造(劄付の偽造は杖一百七、再犯流逺)、宣慰司印信・商税務引の偽造、税物雑印・私熬顔色による匿税なども定める。
- 諸王印信・令旨の偽造は処死。私造暦日の告発には賞銀一百両を給し、太史院の印がない暦は違制論とする。敕牒の売買、公差の駅伝冒用、詐称使臣による起馬なども禁じる。
- 宝鈔(紙幣)の偽造は首謀・雕板・抄紙・顔料手配・印造のすべての関与者を処死とし、家産を没収する。両隣の不告発は杖七十七、坊正・社長・巡捕官兵の失察も処罰する。父子で偽鈔を造った場合は皆処死とするが、片方のみが関与し他方が知らなければ連坐しない。捕獲者には銀五錠を賞する。
- 偽銀の焼造は徒、倉の支発糧籌の偽造・冒支官銭は枉法として除名不叙、冒名入仕・子が亡父の官を冒用する行為なども厳しく処罰する。軍官の承襲での年齢詐称、詐って軍功で官を得た者の罷免なども定める。
訴訟(告訴・審理の手続き)
- 告訴は年月・実事を明記し、疑いのみでの告発を禁じる。誣告は反坐(自身が罪を負う)とする。越訴(順を経ずに上訴すること)は笞五十七だが、本属官司の理不尽・冤抑が繰り返された場合は上司に訴えることを認める。
- 婦人が男子に代わって訴訟すること、家私書を発いて訴訟の材料とすること、教令して他人に告発させること(親族関係により減等)などを規定する。妻が夫の悪を告発するのは自首と同視して免罪、逆に夫を重罪で誣告すれば反坐とする。
- 職官同士の相訟は解職・記過とし、越訴を禁じつつ憲司への直訴は越訴としない。奴婢が主を告発すれば処死(本主が赦免を求めれば減一等)。
鬬毆(暴行に関する規定)
- 手足・他物による殴打の傷の程度(拔髪・出血・折歯・毀耳鼻・折手足指・破骨・湯火傷等)に応じ笞二十七から杖一百七まで段階的な量刑を定める。保辜(責任を問う期限)は手足傷十日、他物傷二十日、刃・湯火傷三十日、折跌・破骨は五十日とする。
- 妻妾への非理な殴傷、未婚男婦・舅姑への虐待、モンゴル人と漢人の争闘(漢人は報復せず有司に訴える)、他物による廃疾化などを規定する。
- 職官・軍官・監臨官・幕官と部下・使臣との間の殴打は、身分秩序を反映してそれぞれ異なる量刑(尊長が殴れば軽く、卑幼が殴れば重い傾向)を定める。老人・小民が官長を殴詈した場合は贖罪を認めない。
殺傷(殺人・傷害致死に関する規定)
- 殺人は処死とし、家属に焼埋銀五十両(会赦の場合は倍)を徴す。部民が官長を殴殺した場合は首謀・下手とも処死。故殺・鬬殺・誤殺の区別、モンゴル人が漢人を殴死させた場合は断罰の上出征させ焼埋銀を全額徴する。
- 父が無故に子を殺した場合、子が不孝で父・弟姪と共謀して害された場合、女が嫁いだ後に過失を理由に父に殺された場合など、親族間の殺傷を細かく類別し、量刑・付加刑(財産の帰属先の指定等)を定める。
- 尊長・卑幼間の殺傷、奴と主の間の殺傷、老病者・小児・瞽者による過失致死、庸医の誤治による殺人、失火・馳馬・戯れによる過失致死など、故意・過失の別に応じた焼埋銀の徴収規定を細かく列挙する。
- 焼埋銀の徴収に関する総則(苦主が他所に住む場合の移送、犯人が貧しく徴収できない場合の官の代納、正贓・倍贓の計算方法等)を末尾にまとめる。
禁令(風俗・治安に関する諸規定)
- 度量権衡の不統一に対する処罰、公文書は国字(モンゴル文字)を用いる原則、朝賀の不参・失儀への罰鈔、章服の身分別規定(龍鳳文は禁制品、品級ごとに金・銀の装飾の可否を細かく定める)などを列挙する。
- 甲冑・弓箭・槍刀等の私蔵を厳しく制限し、副数に応じた量刑(甲一副以上は処死等)を定める。嶽瀆祠廟・伏羲媧皇堯舜禹湯后土等の廟、名山大川・寺観・前代名賢の遺跡の毀損を禁じる。
- 喪葬の奢侈品(紙屋・金銀馬等)の使用禁止、夜禁(一更三点で鐘が鳴れば通行禁止、五更三点で解除)とその例外(公務・疾病・産育等)、失火による延焼への責任、私宰牛馬の禁止と老病獣の例外規定などを定める。
- 匿名文書による誣告の禁止と量刑、賭博の禁止(銭物没官、開帳した家も同罪)、賭博の自首による免罪、悪辞曲・雑戯・角觝の術による惑衆の禁止、稼働できない借金の重利(一本一息を超える利息の禁止)なども規定する。
- 私商・行商の文引(通行証)制度、拉木伊克(逃亡奴隷か)の人口・頭匹の識認・帰属規定、有毒の薬の売買制限、下海禁制品(生口・宝貨・銅銭等)の輸出禁止、娼妓の生児の届出義務なども定める。
雜犯(その他の禁令)
- 闘争で大名(尊貴の名)を持ち出す行為、職官の公務中の失言、悪少無頼の徒党結成と陵轢、豪右による長年の暴虐への流配、貴勢の家が奴隷に私的な鉄枷を用いることの禁止などを定める。
捕亡(逃亡・逃犯の捕縛)
- 失盗の際に捕盗官が限内に捕らえられなかった場合の罰俸・解由への記録、他境の盗が逃げ込んだ場合の捕盗官の連座、囚徒の脱獄に対する主守・提牢官の責任、奴婢の逃亡と隠匿者・不告発者の処罰、逃奴の告発者への賞などを定める。
恤刑(在監者への配慮)
- 獄囚は男女・軽重を分けて収容し、司獄・獄卒・提牢官がそれぞれ職責を尽くすことを求める。貧しい在監者への倉米の支給、油炭席薦の支給、疾病時の医療、孕婦の産前産後の扱い(産後百日は決遣を猶予)、七十歳以上・十五歳以下・篤廃残疾者の贖罪換算(笞杖一につき中統鈔一貫)などを定める。
平反(冤罪の是正)
- 冤獄を平反した官吏への恩賞制度、路府軍民長官が反乱鎮圧に乗じて平民を害した場合に冤を正した同僚への優叙、路府曹吏が冤獄を平反した場合の宣慰司部令史への登用などを定める。