元史卷一百四 刑法志第五十二 刑法三

食貨――塩・茶・鉄・竹・酒の専売法

  • 私塩を犯した者は杖七十七・徒二年、財産の半分を没収してその半分を告発者に賞与する。塩の引(許可証)の偽造は斬、鹽貨の犯界(越境販売)は私塩罪より一等減じる。提点官が取締を怠った場合は初犯笞四十・再犯杖八十・三犯は上奏して定罪する。
  • 大都の南北両城の関廂には塩局を設けて官が発売し、その他の州県郷村は塩商の興販に任せる。塩に灰土・硝鹻を混ぜることを禁じる。モンゴル人の私煮塩は常法に依る。私塩の再犯・三犯の量刑段階、婦人は免徒とする規定などを定める。
  • 茶法も塩法に準じ、引目の期限内不批(三日以内に官司へ提出しないこと)、字号の改抹、夾帶(不正な数量隠匿)を私茶法として処罰する。茶引の偽造は斬。産金地の官の権衡の公正、産銅地の私錬の禁止も併せて定める。
  • 鉄法は私塩よりやや軽く杖六十とし、鉄引の偽造は省部印信の偽造と同罪とする。農器・鍋釜・刀鎌等は禁令の対象外とし、江南の鉄貨は淮漢以北への販売を禁じる。衛輝等の私竹の販売、住宅内の私用竹の抽分義務も定める。
  • 私酒(薩滿阿喇克酒等)の製造は杖七十・徒二年、財産の半分没収。モンゴル・漢軍の私造酒醋麹は常法により、私酒の飲用は笞三十七。犯界の酒は瓶数に応じ罰鈔・笞刑を科す(罪の上限は六十七・鈔五十両)。
  • 匿税(脱税)は物貨の半分を没収し、その半分を告発者に賞与する。辦課官の抽分・強要による不正収税、市舶の私販(金銀銅銭・人口・軍器等の下海禁止)とその抽分(三十分の一)の規定、公験・公憑による舶船の管理、番国の朝貢品の検査なども定める。海門の鎮守軍官が番邦と通謀し舶貨を漏らした場合は除名不叙とする。

大惡(謀反・不忠不孝の重罪)

  • 社稷を危うくする謀は誅、謀逆の議論を主導した者は処死・賛同者は流。潜謀反乱者は処死、宅主・両隣で知りながら告発しない者も同罪とする(悔悟して自首すれば免罪の上、賞を給する)。謀反が既に反状に至った場合は首謀・同情者を凌遅処死、従犯は処死とし、連坐する家族も罪に問う。
  • 妖言で衆を惑わし嘯聚した首謀・同謀は処死、神異を仮託した狂謀・乗輿を指斥する者・詞曲で犯上を誣いた者も処死とする。祖父母・父母を弑した子孫は凌遲処死とし、瘋狂による場合も処死とする。醉って父母を殴った場合で他に子がなければ死罪を免じ養老させる例外を定める。
  • 祖父母・父母を殴傷した者は処死。義父・義母の殺傷、祖先の墳墓を発掘して財物を盗む行為、姑舅を殴殺した婦、兄弟間の殺傷(財産を図って収嫂した父子など特に悪質な例)を凌遲・処死とし、屍を戮する等の付加刑も定める。
  • 主人を殺傷した奴・主を詬詈した奴・主婿を殴殺した奴はいずれも重罰(凌遲や処死)とする。魘魅(呪詛)で大臣・夫・父を害した者、蠱毒を用いた者、人を殺して鬼を祭る採生を凌遲処死とする。

姦非(姦通に関する規定)

  • 和姦(合意の姦通)は杖七十七、有夫の女は八十七、強姦して婦が死ねば処死、無夫の女への強姦は杖一百七。翁が男婦を欺姦した場合の処死・杖刑の区別、宿衛士と宮女の姦通は出軍とする。
  • 兄弟・伯叔・姪との姦通、居喪中の姦通、僧尼道士女冠の姦通(還俗させる)、幼女への強姦(十歳以下)の重罰、職官の姦通は常律に加え除名とすることなどを定める。
  • 姦夫姦婦が共謀して夫を殺した場合は皆処死し、姦夫の家属からも焼埋銀を徴す。夫が姦を現場で見つけて姦夫を殺した場合は無罪。姦婦が夫を殺す共謀に加わった場合は凌遲処死とする。

盜賊(窃盗・強盗に関する規定)

  • 共同で盗んだ者は贓を合算して論じ、首謀者を首犯とする。竊盗は初犯左臂・再犯右臂・三犯項に刺字し、強盗は初犯から項に刺字して警跡人とする。モンゴル人・婦人は刺字の対象外とする。
  • 徒罪は一年から三年まで杖六十七から一百七まで段階的に定め、金銀銅鉄の洞冶・屯田・堤岸橋道等で就役させる。強盗が持仗して人を傷つければ財を得なくても皆死、竊盗は贓額に応じ笞から徒まで累進する詳細な量刑表を定める。
  • 駝馬牛驢騾を盗んだ場合の量刑(駱駝が最も重く初犯首犯で徒二年半、羊・猪は最も軽い)、盗庫藏銭物・盗乗輿服御器物(不分首従皆処死)、鈔庫・鈔印の盗難(処死)など、財の性質に応じた別建ての量刑を定める。
  • 墳墓の発掘・棺槨の破壊・屍骸の毀損は竊盗・強盗・傷人に準じて論じ、燒埋銀を徴す。諸王・駙馬の墳寝を盗掘した者は不分首從皆処死とする。事主が盗人を殺しても無罪、夜間侵入者を殴殺しても無罪とする例外も定める。
  • 親属間の相盗(緦麻以上の親、婚姻の家)は刺字・倍贓の対象外とし、尊卑の続柄に応じ減等する。奴が主の財を盗んだ場合、佃客が地主の財を盗んだ場合なども特別に減軽する。
  • 良人の掠売(人身売買)は一人なら流、二人以上なら処死、婚姻名目での偽装売買にも処罰を定める。警跡人(刺字された前科者)の管理制度、五年間無犯であれば籍を除く規定、告発・捕獲による恩典なども定める。
  • 盗を悔いて贓を主に還した場合の減罪、事発前の自首による免罪、子が父を盗みで告発した場合の免罪(自首とみなす)など、自首・悔悟に関する減免規定を最後にまとめる。