元史卷一百二 志第五十 刑法一

総説

  • 古来、天下を有する者は聖帝明王といえども刑法をなくして治めることはできない。徳義で導いても従わなければ法で律し、法にも背けば刑罰を科すのはやむを得ない。先王が刑を制したのは威を立てるためではなく治を輔けるためであり、書に「士は百姓を刑の中で制し徳を敬うよう教える」とあるのもそのためである。後世は専ら刑罰を用いて治めようとし、本末軽重の理を見失っている。歴代の得失は史にあらわれている。
  • 元は興った当初、法の整備がなく百司の獄訟裁断は金律を用い頗る厳酷であった。世祖が宋を平定し天下を統一すると繁苛を簡除し新律を定め、これを「至元新格」と号した。仁宗の時、格例のうち風紀に関わるものを類集し「風憲宏綱」と号した。英宗の時、宰執儒臣に前書を損益させ「大元通制」を完成させた。その大綱は詔制・条格・断例の三種からなり、詔制94条、条格1151条、断例717条、いずれも世祖以来の法制事例を纂集したものである。
  • 五刑は七から五十七までを笞刑、六十七から一百七までを杖刑とし、徒刑は年数と杖数を組み合わせ加減した。塩徒・盗賊は決杖の上さらに鐐(足かせ)を科し、流刑は南人を遼陽以北へ、北人を南方湖広へ遷した。死刑は斬のみで絞刑はなく、悪逆の甚だしい者には凌遅処死があった。古の墨・劓・剕・宮・大辟の五刑から肉刑を除き笞・杖・徒・流・死の五刑としたのは元朝の軽典であり、これも一種の仁政といえる。
  • 世祖は宰臣に「朕が怒って罪ある者を殺せと命じても、汝は殺してはならない。必ず一両日おいて覆奏せよ」と述べた。この言葉は古の仁君にも劣らない。以後の歴代の君も刑を恤み、郡国に疑獄があれば必ず官を遣わし覆訊させ、死罪の審録に寃罪なきよう努めた。大徳年間、王約は「国朝の制では笞杖は十分の七に減じられており、今の杖一百は九十に止めるべきで、さらに十を加えてはならない」と上言した。このように元朝の君臣は軽典を尊んだことで、百年の間天下が安寧であったのも偶然ではない。
  • しかしその弊として南北で制度が異なり、事は繁瑣となり、狡猾な吏が文法を弄び比附で私を行い、凶頑不法の徒がしばしば赦宥で免れ、西僧の仏事や恣意の縦囚で奸宄が売られ、善良な者が泣き寝入りする事態も生じた。識者はこれを憂えた。元の刑法は仁厚を得た一方で緩弛で検束を欠いたところに失があった。ここに実際の条例を按じ次第を追い、後世が得失を考える資とすべく「刑法志」を作る。

名例

五刑

  • 笞刑: 七下・十七・二十七・三十七・四十七・五十七。
  • 杖刑: 六十七・七十七・八十七・九十七・一百七。
  • 徒刑: 一年(杖六十七)・一年半(杖七十七)・二年(杖八十七)・二年半(杖九十七)・三年(杖一百七)。
  • 流刑: 遼陽・湖北・迤北の三地。
  • 死刑: 斬・凌遅処死の二等。

五服

  • 斬衰(3年・杖期・期・5月・3月に相当する場合あり):子が父のため、婦が夫の父のために服す類。
  • 斉衰(3年・杖期・期・5月・3月に相当する場合あり):子が母のため、婦が夫の母のために服す類。
  • 大功(9月、長殤9月、中殤7月):同堂兄弟・姑母妹で嫁いだ者のために服す類。
  • 小功(5月、殤の場合あり):伯叔祖父母・従兄弟のために服す類。
  • 緦麻(3月):族兄弟・族曽祖父母のために服す類。

十悪

  • 謀反: 社稷を危うくすることを謀るもの。
  • 謀大逆: 宗廟・山陵・宮闕を毀すことを謀るもの。
  • 謀叛: 国に背き偽(敵国)に従うことを謀るもの。
  • 悪逆: 祖父母・父母を殴打・謀殺し、伯叔父母・姑・兄姉・外祖父母・夫・夫の祖父母父母を殺すなどの類。
  • 不道: 一家の死罪に当たらぬ者3人を殺し、または人を支解し、蠱毒・厭魅を造畜するもの。
  • 大不敬: 大祀神御の物・乗輿服御の物を盗み、御璽を偽造し、御薬を誤って調合し、封題を誤り、御膳を誤り食禁を犯し、御幸の舟船を不牢固にし、乗輿を指斥し情理切害なるもの、制使に対捍し人臣の礼を欠くもの。
  • 不孝: 祖父母・父母を詈言詛盟し、祖父母父母が在るのに別籍異財し、供養に欠け、父母の喪中に嫁娶し楽を作し服を釈いて吉に従い、祖父母父母の喪を聞いて匿し哀を挙げず、祖父母父母の死を詐称するもの。
  • 不睦: 緦麻以上の親を謀殺・売却し、夫を告げ、大功以上の尊長・小功尊属を殴打するもの。
  • 不義: 本属の府主・刺史・県令・受業の師・吏卒を殺し、本部五品以上の官長を殺し、夫の喪を聞いて哀を挙げず楽を作し服を釈いて吉に従い改嫁するもの。
  • 内乱: 小功以上の親、父祖の妾を姦し、または和姦するもの。

八議

  • 議親: 皇帝の袒免以上の親、太皇太后・皇太后の緦麻以上の親、皇后の小功以上の親。
  • 議故: 故旧の者。
  • 議賢: 大徳行ある者。
  • 議能: 大才業ある者。
  • 議功: 大功勲ある者。
  • 議貴: 職事官三品以上、散官二品以上、爵一品の者。
  • 議勤: 大勤労ある者。
  • 議賓: 先代の後を承け国賓となった者。

贖刑(附)

  • 牧民官の公罪が軽い場合は罰贖を許す。
  • 職官が夜禁を犯した場合は贖とする。
  • 70歳以上・15歳以下で杖責に耐えない者は贖とする。
  • 癃篤(重病)・残疾で科決を妨げる者は贖とする。

衛禁

  • 宿衛は3日交替で四門の鑰を掌り、昏に閉じ晨に啓く、慎まねばならない。
  • 事を言おうと宮殿に闌入し上聞を求めた者は杖一百七、元籍に発遣。
  • 刀を帯びて殿廷に闌入した者は杖八十七・流遠。
  • 皇城角楼に登り盗みをなす者は死罪。
  • 禁衛に闌入し金玉宝器を盗む者は死罪。
  • 禁苑に輒入し官獣を盗殺する者は、首謀は杖八十七・徒二年、従犯は一等減じいずれも刺字。知りながら告げなかった者は笞四十七、掌門衛が賄賂を受け縦放すれば杖五十七、坐鋪守把の軍人が誰何しなければ杖二十七。
  • 漢人南人が宿衛士に投充し総宿衛官が輒く収納すればともに坐罪。
  • 大都・上都の諸城門で夜に急務があり出入りする際は夜行象牙圓符及び織成聖旨を検め、たとえ牙符があっても織成聖旨がなければ何人も開門せず、違反者は死罪。

職制上

  • 官府の印章は長官が収め、次官がこれを封じ、差故の際は牒を発して次官に、さらに下の者に封じさせ、私人に付してはならない。
  • 郡県の城門の鎖鑰はすべて有司が掌る。
  • 有司の薦挙・刑名・出納等の文字は、故がない限り必ず円署(連署)で行う。
  • 職官が任所到着で上司百里以内なら公参し、百里以外は免除、上司が理由なく徴会し公務を稽失させることを禁じる。
  • 内外百司の呈署文字は下から上へ論定した上で行う。
  • 省府以下百司は公務ごとに朱銷簿を置き按治官が随時考える。
  • 職司の公坐は同職者が到任順に上座、順を越えて坐す者は正す。
  • 有司の公事は各官が連署して上司に申稟、故があれば対読の首領官が代書しその理由を名下に記す。曹吏が輒く名を代書すれば罪する。
  • 職官が代を受けて除せられる際は所便に従い解由を具え、私に都に赴くことを禁じる。
  • 有司の案牘・籍帳は架閣に編次し、各路提控案牘・架閣庫官は経歴・知事とともに掌り、散府州県は知事・提挙が、都は吏目・典史が掌り、任満に相継いで交割し慎まねばならない。
  • 枢密院・行省の文卷は軍数・辺関兵機を除き監察御史の考閲を受ける。
  • 職官が上司の委任を受けたが所治に官がいない場合は回申を許し、擅に首領官吏に摂事させてはならない。
  • 職官が官物を都に運ぶ際、常所差でない者は籍を置き輪差し徇私偏頗を禁じる。
  • 吏員の遷調で廉訪司書吏は道路を避け、府州県吏は本貫を避ける。
  • 有司が印信を紛失し速やかに尋獲すれば罰俸1月、尋ねられなければ礼部に申し別に鋳造、元の掌印官は解職の上坐罪し、元の印を得ぬ限り由(人事評価)を求めることはできない。
  • 辺関文字を毀損・匿す者は流罪。
  • 蒙古人が官にあって法を犯し罪が定まれば、必ず蒙古官が断罪し行杖もこれに準ずる。
  • 四怯薛及び諸王駙馬蒙古色目人の姦盗詐偽は大宗正府が治める。
  • 親女を権貴に献じて進用を求めた者は、既得の命を追奪し家財を没入する。
  • 官吏が在任中に親戚故旧及び理応追往すべき人と交際するのは許されるが、それ以外は禁じる。
  • 職官が到任時に部下から執見の儀物を受け取れば受贓に準じ減等論罪。
  • 職官が部民の事後に謝礼の物を受ければ笞二十七・記過。
  • 上司・出使官が使所で燕享・餽遺を受ければ枉法に準じ2等減、経過の途中で受ければさらに1等減、いずれも台憲が察する。
  • 職官及び出身者が事に因り財を受けた場合、枉法なら除名不叙、不枉法なら殿三年(3年昇進停止)で再犯不叙、無禄者は1等減とする。至元鈔基準で贓額に応じた細かい笞杖・除名の規定がある(枉法は1貫〜10貫笞四十七、10貫〜20貫五十七、20貫〜50貫杖七十七、100貫以上一百七で除名不叙。不枉法は1貫〜20貫笞四十七で本等叙、以下贓額に応じ邊遠任・降等叙などを定める)。
  • 内外百司官吏が受贓を悔い自首すれば不尽不実でない限り免罪、知人が告発しようとして自首すれば贓を主に還し罪2等減、他処で発覚した事を知って首すれば知らずとも知って首したものとして扱う。詭名代首は認めず、実病で親属が代首する場合は許す。台憲官吏の受贓は自首の限りでない。
  • 職官が有罪者を恐嚇し財を求めて得られなかった場合は笞二十七。
  • 官吏の贓罪の告発形態(実取・過度人が知らず官吏も知らぬ場合・官吏が知りつつ後で取る場合・元来言わず錢物を誣陷のため置いた場合)に応じ坐罪の対象を区別する。
  • 職官が贓罪を犯し罪状明白なれば停職して断罪を聴く。奴賤の官も贓罪を犯せば除名。
  • 職官の贓罪は生前に罪状明白であれば死後も家属に納贓を責める。
  • 官吏の贓罪は原免・自首なら免罪、過を経て人に罪を及ぼした場合は坐さない。台官が問う贓罰は台に、省官が問う贓罰は省に帰す。
  • 職官が贓罪の罪状明白でありながら問官を誣告すれば、断罪の後さらに徒罪を科す。
  • 官吏の家人が受贓した場合は官吏の法より2等減じ坐す。官吏が知らず知って首すれば家人ともに免罪、首さなければ官吏は家人の法より2等減、家人は本法により坐す。官吏が知情で家人に受財させた場合は官吏が本法、家人は免坐。官吏が実に知らない場合は家人のみ坐す。
  • 職官が除を受け未任のうちに承差で贓を犯せば見任と同様に論じ、遷転官が已任で文憑を受けぬうちに贓を犯した場合も同様。吏が未出職で受贓すれば出職後に発覚しても所受の職を罷す。
  • 銭穀官吏が不枉法の受贓なら贓のみ計り論罪し殿年叙とはしない。
  • 職官が受贓を聞知し発覚前に主に還した場合は、知人が告げようとして自首したものとして2等減。枉法なら先職より3等降叙、不枉法なら解職し別叙。
  • 職官が官銭を侵用すれば枉法として論じ、赦に会っても除名不叙。
  • 職官が在任中の贓罪を問われ罪状明白なのに疾を称する場合は停職させ対問。
  • 職官が携えた親属・傔従が部下の財を受けても入己の贓がなければ赦に会えば復職を許す。
  • 外任牧守が贓罪を問われる中で近臣の奏により入朝を命じられた場合は元問官に付する。
  • 職官が贓罪で逃亡した場合は獄が成立したものとして扱う。
  • 職官が受贓の罪で丁憂に服する場合、終制の日に究問し、軍官は丁憂の対象としない。
  • 職官が贓を承伏の上で赦に会えば罪を免じ贓を徴し降黜は条文通り、未承伏なら論じない。
  • 職官が受贓した後改悔して主に還し、なお主が告発すれば論じない。
  • 職官が財を受け人の請託を行った場合は贓を計り論罪。
  • 小吏の贓罪はすべて断罪除名。庫子等の職ですでに出身があり添給禄米のない者は小吏の贓罪と同一に論じない。
  • 掾吏出身で流に入るべき者、または職官として転補された者も贓を犯せば吏員と同様に除名。府州県首領官で朝命によらぬ者も吏員と同様。
  • 吏員の取受が真犯(実際の枉法)でなければ除名しない。
  • 流外官が民詞を越権受理すれば笞一十七、首領官二十七、記過。
  • 臨民官が無職田の州県で虚しく徴収して民に及ぼせば断罪解職記過。
  • 職司の官が茶酒市肆・倡優の家に頻繁に出入りすれば断罪罷職。
  • 監臨官が弓手を私役すれば笞二十七(3名以上は加1等)、弓手の馬を占用すれば笞一十七、いずれも記過。本管官吏が輒く応付すればそれぞれ1等減。
  • 内外官吏が疾病を称し百日満ちれば闕とし、期年後に他任。
  • 職官が連続で2罪を犯し軽罪を先に断じ重罪が後で発覚した場合は罪を最後に発覚した方に従い殿降する。
  • 有過で問われ詐死し罪を逃れようとした者は杖六十七、有官者は罷職不叙、贓が多ければ重く論じる。
  • 行省以下の大小司存の長官が首領官を非理に折辱すれば禁じ、首領官に過失があれば上司に申し長官が擅に問うことを許さない。処決が不公なら首領官は覆奏し直接上司に申すことを許す。
  • 隨朝官が故なく参内しなければ坐罪待選。
  • 職官が宣勅を受けながら地遠く官卑なるを理由に赴かなければ受命を奪い田を植えさせ謫す。または在任中詐病を称して去った者は3年後に2等降叙、その同僚で徇私して文書を与えた者は1等降叙。
  • 受命職官の闕期が及んでも辨証・勾稽・喪葬・疾病等の公私事情で赴任できない場合、始末を本処有司に自陳し保勘給据の上再叙、元の注地方は有司の保勘が実でなければ坐罪。
  • 除官を受けた者が闕次に及ばぬうちに任所に先住し代者を待てば本管上司が究める。
  • 各衙門が聴除・罷閑の私人を差遣することを禁じる。
  • 職官が親の死を聞いても奔喪しなければ杖六十七・先職より2等降叙・雑職叙、喪を終えぬうちに赴官すれば笞四十七・1等降叙・終制の日に叙、罪があるのに詐って親喪を称した者は杖八十七・除名不叙、親が久しく没していたのに始死を詐称すれば笞五十七・見任解職・雑職叙。父母憂に丁せざる者も奔喪しない場合と同罪。
  • 官吏が私罪で逮問中に父母の大故に遭えば奔赴丁憂を聴し、終制の日に公罪を追問し矜恕する。
  • 職官の父母亡くして喪を匿し宴楽に耽り、国哀の際に私家で音楽を設ければ罷して不叙。
  • 外任官の謁告には仮故を具申し風憲官が糾察する。
  • 職官が祖父母父母を遷葬する際は假20日と馬程日70里分を給し限内の俸銭も支給、限を過ぎて至らねば停職。
  • 職官の任満解由が給されるべきなのに給されない、または過失があるのに開寫しない場合は有司に罪が及び、解由が部に到着後功罪を増損して実に反すれば同様。
  • 罷免された官吏が復叙の際に解由をもらい過名を匿せば初めの給由有司に罪が及ぶ。
  • 過を匿し仕を求め発覚すれば笞四十七・追奪不叙。
  • 職官が致仕の年齢に達しても止まらなければ廉訪司が糾黜する。
  • 職官の殿年(昇進停止期間)は停職の月日から起算する。
  • 遠方官の親が70歳以上の場合、元籍有司の保勘により近闕への配置を許すが冒濫は坐罪。
  • 職官が王事で没した場合、その継嗣は2等降じて蔭叙。
  • 内外百司の五品以上が進上する表章は蒙古字で書き敬意を失わず、漢字でも副本を書く。
  • 内外百司の進賀表箋は式に則り繕写・謄籍・印識し、廟諱・御名を犯すことを禁じる。
  • 内外百司が出す劄付で額設の訳史がある場合は蒙古字で書写。
  • 蒙古・回回の訳使を兼設する内外百司は行移・勘合文字の標訳・関防に兼用する。
  • 内外百司の公移は尊卑の序を保ち定制に従うが、執政が外郡に出て部に申す公文書は姓のみ書き名を書かない。
  • 人臣が口伝で聖旨と称し事を行うことを禁じる。
  • 大小の機務は必ず中書を経由するが、枢密院・御史台・徽政・宣政の諸院は自ら所職を言上できる。その他が中書を経ず上聞し、さらに中書を経ず所司に直行させれば違制論、所司も稟白せず輒く受行すれば監察御史・廉訪司が糾す。
  • 中書の機務の議を漏らした者は漏らした事の軽重に応じ論罪。
  • 省部官で宿衛に隷する者は昼は治事し夜は番直する。
  • 検校官が中書及び六曹の務を勾検し稽違があれば省掾が呈省論罰、部吏がその場で罪名を録し開呈。
  • 行省が擅に軍人を営繕(公廨であっても)に役すれば奏請なくとも議罪。
  • 行省が軍情でない軍人を擅に役することを禁じる。
  • 行省長官2員には金虎符を給し典軍させるが、雲南行省官のみ全員に符を給す。
  • 各処行省所轄軍官の軍情怠慢は提調軍馬長官が断遣、その他の雑犯は受宣官以上は咨稟、受勅官以下はその場で断ずる。
  • 行省の歳支銭糧は各処正官が季ごとに照勘し歳終に会成し、行省が式に照らし考核・徴収・籍録し、都省・台憲官がこれを閲実する。
  • 方面の大臣が金を受け賊を縦にし乱を成せば斬、その佐官が金を受け阿順して匡正しなければ坐罪、赦に会っても除名。
  • 枢密院及び各省所轄軍官の麾下(征戍出処の士卒)が饑寒不贍・役使不均・私人代替・在家逃亡・貨賄横行の弊があれば、百戸の罪は千戸に、千戸の罪は万戸に及び、万戸の罪は枢密院・行省帥府がその状を奏し論罪する。
  • 宣徽院所抽分の馬牛羊官は程期を厳にし供億を制し鈐束の法を謹み、欺官擾民があれば廉訪司が糾す。
  • 翰林院が制書を訳写する際は必ず中書省に呈しその稿を共議、辺遠軍情の重事以外の文卷は監察御史の考閲を受ける。
  • 宣政院の文卷は仏事修理を除き制外照刷、その余の文卷及び内外司存も照刷する。
  • 徽政院及び齊哩克昆人(怯憐口人)の旧設諸府司の文卷も台憲の照刷を受ける。
  • 台官の職掌は官箴を飭し吏課を稽し内は羣祀を秩序づけ外は行人を察し軍国の奏議に与り民庶の寃辞に達する。有司の刑名・賦役・銓選・会計・調度・徴収・営繕・鞫勘・審訊・勾稽、及び庶官の廉貪、禁の張弛、編民の惸独・流移・強暴・兼併をすべて糾挙する。
  • 行台官は行省・宣慰司以下の軍民官吏の作姦犯科、窮民の流離失業、豪強家の民利奪取、按察官の不称職を察する。その他は内台と同様の法。
  • 御史台所轄の各道憲司で民に寃滞があり台に訴えれば著籍し歳終に会して各道の殿最を考え黜陟する。
  • 台憲が察する天下官吏の贓汚・欺詐・稽違で刑書に入る罪は歳ごとにその数と罪状を集計し中書に上程・蔵する。
  • 内外台は歳ごとに監察御史を遣わし各省文卷を刷磨し各道廉訪司官吏の臧否を察し、官が称職せざれば台に呈し黜罰、吏が称職せざればその場で罷する。
  • 風憲の薦挙は必ず最績を考え、弾劾は必ず罪状を明らかにし、挙劾が失当ならともに坐す。
  • 殿中侍御史は廷臣の奏事に必ず随従し内廷にあって関与すべきでない者を糾斥し、朝会祭祀での失儀・越次・不至者を糾罰、文武百官の謁假事故3日以上は曹状を報告、官府の剏置・百官の礼任事被差往還も曹状で報告。
  • 廉訪分司官は毎季孟夏初旬に出て録囚、仲秋中旬に出て按治、翌年孟夏中旬に還る。憚遠違期・託故避事する者は監察御史が劾す。
  • 廉訪司は各路軍民官吏の過罪が明白なれば6品以下は総司に牒し論罪、5品以上は台に申し聞奏する。
  • 廉訪司官が擅に軍器庫を封点すれば笞三十七・解職別叙。
  • 官吏の受贓を事主が告発せずとも監察御史・廉訪司が察し糾す。
  • 行省官及び首領官の受賂を廉訪司が察知すれば台に上げ台が問う。
  • 行省理問所の問う公事に廉訪司が輒く逮問することを禁じる。
  • 職官の受贓は廉訪司が親臨聴決し、やむを得ぬ場合は敵品の有司老成廉能の正官を摘み問わせる。
  • 按問される官吏に寃抑があれば御史台に陳理を許すが、その言が実で被告の言が虚罪であれば加等、故に按問官吏を摭って事を構える者は禁じる。
  • 職官の贓を問う際は遽に刑を施さず衆証明白でなお承伏しない場合のみ加刑、軍官はまず佩符を奪ってから問う。
  • 風憲官吏の受贓は加等断罪、不枉法でも除名。
  • 方面の臣が入覲時に部下官吏の俸銭を斂め礼物を備えることを禁じる。
  • 湖南北・江西・両広で溪洞蛮獠の竊発を監臨官が禁治不厳・故縦すれば軍官笞三十七・管民官二十七、いずれも階1等削り記過。
  • 辺隅の鎮守が不厳で他盗が境に入り殺掠すれば軍官は坐罪、民官は坐さない。
  • 軍民官が辺陲を鎮撫し3年嘯聚の盗なければ民官1資減、軍官散官1階昇進、5年なければ軍民官各1等昇進。
  • 郡県の版籍は所司が謹んで保管し正官が相継いで管理する。
  • 勧農官は歳終に治所の農桑水利の成績を上司に報告、上司は所部の成績を大司農・部に上げ、部が勤惰成否を考え省に上程し殿最する。怠慢な者は罪する。
  • 職官が田を行き民戸から齊斂(不当徴収)した場合は多科として断罪。
  • 財を受け民の差徭を占用した者は枉法論。
  • 額課は所在の管民正官が事を董し他故で次官が通摂する場合も同様。
  • 額収の銭糧は各処計吏が歳一度省に会し、齊斂があれば案治官が挙劾する。
  • 郡県は歳に3限で税糧を徴収し初限10月末・中限11月末・末限12月末とし、違えば初限笞四十・再犯杖八十、結攬した者と自願結攬人はともに家財没入し元科の数を倍徴、正官が糧を部せず権官が部して失陥・輸不足に至れば達嚕噶齊・管民官ともに坐す。
  • 州県義倉の糧数が不実で監臨が挙察を怠れば罪する。
  • 職官が禁刑の日に公事を決断すれば罰俸1月、吏は笞二十七・記過。
  • 有司が小罪を杖頭の非法杖で人を致死させれば判署官吏に坐罪。
  • 訴えられた官吏を訴えた者が有罪であっても被訴官吏は推問しない。
  • 有司が輒く帷薄私事に憑り妄言し人を逮繋すれば笞四十七・解職・期年後叙。
  • 職官の解由・致仕後の追奪は見任と同様、婚姻田債等の事は子孫弟侄に限り陳訴させ有司が輒く侵凌することを禁じる。
  • 職官が吏民を毀罵したと親聞でなく告げれば問わず、違反者は罪する。
  • 職官が訴訟を聴く際、有服の親・婚姻の家・受業の師・讐嫌の人に関わる場合は回避すべきで回避しなければその犯した所により坐罪、官法で尊長を臨決すれば赦に会っても解職降叙。
  • 有司の事が蒙古軍に関わる場合は管軍官と約会して問う。
  • 管軍官・鄂囉官及び塩運司・打補鷹坊軍匠・各投下管領の諸色人等が強竊盗賊・偽造宝鈔・掠売人口・発塚放火・姦淫等の死罪を犯せば有司が問う。闘訟・婚田・良賤・銭債・財産・宗継絶及び科差不公で自相告言する場合は本管が理問、民戸に関わる場合は有司と約会し問う。3度約しても至らねば有司が就便断ずる。
  • 州県の鄰境軍民相関の詞訟は元告が被論の官司に赴き断じ約会の例に含まれない。断が不当なら上司へ陳訴を許し元断官吏を罪する。
  • 僧道儒人の争いは有司が問わず各教の3家の掌る者に会問させる。
  • 哈達大師は掌教念経のみ、回回人の刑名・戸婚・銭糧の詞訟は有司が問う。
  • 僧人の姦盗詐偽・傷人命等の重罪は有司が問い、僧同士の争いは各寺院住持・本管頭目が問い、僧俗の田土争いは有司と約会、至らねば有司が問う。
  • 各寺院の税糧は前宋所有の常住及び世祖賜与の田土を除き免糧、後に人が布施・自力典売した田は例により納糧。
  • 管民官が公事で部下を摂用する際は信牌を用い、擾衆する差人を禁じる。
  • 掩骼埋胔(無縁の骨・死体の埋葬)は有司の職で、饑歳の流莩や中路の暴死で親属のない場合は検覆の上地主・隣人に付し収葬、検覆不要な場合も収葬する。
  • 鄰邑救災恤患の礼を守らず飢歳に閉糴すれば罪する。
  • 郡県の災傷を時を過ぎて申さない、または実を申さない、按治官が時に検踏しない場合はいずれも罪する。
  • 蟲蝗の災に有司が捕獲を怠れば路官各罰俸1月、州官各笞十七、県官各二十七、記過。
  • 水旱の災で民が艱食し有司が時に申報賑恤せず転徙饑莩に至れば正官笞三十七・佐官二十七、いずれも解職し先職より1等降叙。
  • 有司の灾傷検覆が熟を荒とする、または救えるものを救えないとする過誤の程度(1頃以上・20頃以上・200頃以上・500頃以上)に応じ罰俸・笞刑を科す。荒を熟として民に糧を課せば笞四十七で罷職、託故で検覆を妨げ遅延させれば笞三十七。
  • 義夫節婦孝子順孫の節行で旌表すべき者は所属有司が挙げ監察御史・廉訪司が察するが、冒濫があれば元の挙者にも罪が及ぶ。
  • 高年帛を賜う際、受くべき者を有司が実に報せなければ正官笞四十七・解職別叙。
  • 州県が茂異秀才を挙げる際、監察御史・廉訪司の体察を経ぬ者は開申できない。
  • 民が弑逆を犯し有司が故なく聴理しなければ杖六十七・解見任・殿三年・雑職叙。
  • 検屍を有司が故に遷延し、または検覆牒到を受けず屍が変じた場合、正官笞三十七・首領官吏各四十七、親臨せず人に代行させ増減不実・軽重移易となった場合、及び初覆検官が相符した場合、正官はその軽重に応じ論罪黜降、首領官吏は各笞五十七で罷す。仵作行人は杖七十七、受財があれば枉法論。
  • 有司の監獄で囚人が病死し虚偽の検屍文案を立て検官への関覆を怠れば正官笞四十七・解職別叙、代替済で赦に会っても過を記す。
  • 職官が屍傷の覆検で屍がすでに焚瘞されているのに初検の申詳に付会するだけならば解職別叙、すでに改除された場合も過を記す。
  • 藩王及び軍馬が経過する郡県は委積・館労を応給の官物内から支遣し行省に申し知らせるが、擅に移易・齊斂すれば禁じる。
  • 郡県は聖旨・令旨や諸王駙馬大臣の経過がなければ郊迎で公務を妨げてはならず、銭物での餞別も禁じ按治官が常に糾察する。
  • 職官が軍情違誤を犯した場合、受勅官は各路がその場で断じ、受宣官は都省・行省の処分に従い、その他の公罪は各路が輒く断じてはならない。
  • 部送する囚徒が途中の州県で獄に寄せず旅舎に監収し反禁して逃亡させた場合、部送官笞三十七・還職、当処の防護官笞四十七・捕賊に充て記過。
  • 有司が各処から遞送される流囚を輒く主意で故縦すれば杖六十七・解職・先品より1等降叙、刑部が記過。
  • 和顧和買は時に依り対物を備え価を給うべきところ、官吏権豪が結攬し営私害公すれば罪する。
  • 有司が諸物の和買で余分を估計し価を分受すれば盗官銭に準じ論じ、分受せずとも冒估の多寡で論じる。監臨及び当該官吏が詭名で申納すれば物価を全没収、価鈔を尅落すれば不枉法贓に準じ、価を即時に支給しなければ台憲官が糾す。
  • 職官が輒く親故人事の物を民に散らせ銭財を鳩斂すれば時価との差額を不枉法贓2等減で科罪し、銭物は主に還す。職官が私に民力を用いれば笞二十七・記過・追顧直を民に給す。職官が所属官吏の俸銭を尅除し公用や進上礼物に充てても既に去職した者は問わない。
  • 在任官が属吏の俸を斂め去官者に贈れば笞四十七・還職。
  • 職官が所部内の駅馬を輒く借騎すれば笞三十七・先職より1等降叙・記過。
  • 職官が所部で親故及び理応往復すべき家でない相手に慶吊の礼を輒く行うことを禁じ、違反者は罪する。