授時暦經上
步氣朔第一(気朔を求める算法)
- 至元18年(1281年)歳次辛巳を暦元とする。往古に遡る場合、下って将来を推す場合とも、暦元からの距年を基準に周歳の消長を百年ごとに一ずつ計算し、応(暦元における各種基準値)は随時測定して求め、暦元自体には用いない。
- 基本定数は次のとおり。日周10000。歳実3652425分。通餘52425分。朔実295305.93分。通閏108753.84分。歳周365日2425分。朔策29日5305.93分。気策15日2184.375分。望策14日7652.965分。弦策7日3826.48少分。気応550600分。閏応201850分。没限7815.625分。気盈2184.375分。朔虚4694.17分。旬周600000。紀法60。
- 「推天正冬至」:求める年までの距算に歳実(過去は百年ごとに長く、将来は百年ごとに短く調整)を乗じて中積とし、気応を加えて通積とする。通積を旬周で割った余りを日周で割ると日数、余りが分となり、甲子から数えて天正冬至の日辰・分を得る(遡って考える場合は気応を中積から減じ旬周で割った余りを旬周から引く)。
- 「求次気」:天正冬至の日分に気策を順次加え、紀法で日を割った余りから各節気の日辰・分秒を求める。
- 「推天正経朔」:中積に閏応を加えて閏積とし、朔実で割った余りを閏餘とする。通積から閏餘を引いたものを朔積とし、旬周で割った余りを日周で割ると天正経朔の日・分秒を得る(遡る場合は中積から閏応を引き朔実で割った余りを朔実から引いて閏餘とする)。
- 「求弦望及次朔」:天正経朔の日・分秒に弦策を順次加え、紀法で割った余りから弦・望・次朔の日・分秒を得る。
- 「推沒日」・「推滅日」:気の分秒が没限以上のものを「有沒之気」、朔の分秒が朔虚分以下のものを「有滅之朔」といい、それぞれ気盈・朔虚を用いて没日・滅日を算出する。
步發斂第二(五行用事・気候の算法)
- 土王策3日436.875分。月閏9063.82分。辰法10000。半辰法5000。刻法1200。
- 「推五行用事」:四立(立春・立夏・立秋・立冬)の日をそれぞれ春木・夏火・秋金・冬水の用事始めとし、土王策を四季の中気から引いてその季の土用の始まりを求める。
- 「気候」:一年を24節気・72候に分け、各月の節気・中気とその物候(東風解凍、蟄虫始振、魚陟負氷など)を配当する。正月の立春・雨水から十二月の小寒・大寒まで、各月の節・中気とそれぞれ三候(初候・次候・末候)が定められている。
- 「推中気去経朔」「推発斂加時」:天正の閏餘から冬至と経朔の日数差を求め、月閏を累加して各中気と経朔の日数差を得る。分秒に十二を乗じ辰法で割って辰数を、残りを刻法で収めて刻を得ることで、発斂(節気・中気)の加時(時刻)を求める。
步日躔第三(太陽の運行の算法)
- 周天分3652575分。周天365度2575分。半周天182度6287.5分。象限91度3243.75分。歳差1.5分。周応3151075分。半歳周182日6212.5分。盈初縮末限88日9092少分。縮初盈末限93日7120少分。
- 「推天正経朔弦望入盈縮暦」:半歳周から閏餘の日・分を引いて天正経朔の入盈縮暦を得る(冬至後は盈、夏至後は縮)。弦策を順次加えて弦・望・次朔の入盈縮暦を求める。
- 「求盈縮差」:入暦が盈初縮末限以下なら初限、それ以上なら半歳周から引いて末限とする(縮も同様)。盈初縮末の場合は立差31・平差24600・定差5133200を用いた三次式により、縮初盈末の場合は立差27・平差22100・定差4870600を用いた三次式により盈縮差を算出する。
- 「赤道宿度」:新制の渾儀で測定した二十八宿の赤道度数を掲げる。東方七宿(角12度10分・亢9度20分・氐16度30分・房5度60分・心6度50分・尾19度10分・箕1度40分、計79度20分)、北方七宿(斗25度20分・牛7度20分・女11度35分・虚8度95.75分・危15度40分・室17度30分・壁8度60分、計93度80.75分)、西方七宿(奎16度10分・婁11度80分・胃15度60分・昴11度30分・畢17度40分・觜0度5分・参11度10分、計83度85分)、南方七宿(井33度30分・鬼2度20分・柳13度30分・星6度30分・張17度25分・翼18度75分・軫17度30分、計108度40分)。これは今の渾儀で常用する測定値であり、往古を考証する際は当時の宿度を用いる。
- 「推冬至赤道日度」「求四正赤道日度」「求四正赤道宿積度」:中積に周応を加え周天分で割った余りから天正冬至加時の赤道日度を、虚宿6度から起算して求める。これに象限を順次加えて春分・夏至・秋分の赤道日度を、各正の赤道宿全度から日度を引いて距後度を求め四正後の赤道宿積度を得る。
- 「黄赤道率」:積度(黄道・赤道それぞれの至後・分後の対応度数)とその度率・積差・差率を表にまとめたもので、初度から92度余まで1度刻みに黄道・赤道間の変換係数を示す精密な対照表である(度率はおおむね1.00台、積差は初度の82秒から92度余で60分台まで漸増する)。
- 「推黄道宿度」:四正後の赤道宿積度から赤道積度を引いた差に黄道率を乗じ赤道率で割った値を黄道積度に加えて二十八宿の黄道積度を求め、前宿の積度を引いて各宿の黄道度・分を得る。
- 「黄道宿度」:東方七宿(角12度87分・亢9度56分・氐16度40分・房5度48分・心6度27分・尾17度95分・箕9度59分、計78度12分)、北方七宿(斗23度47分・牛6度90分・女11度12分・虚9度分空太・危15度95分・室18度32分・壁9度34分、計94度10.75分)、西方七宿(奎17度87分・婁12度36分・胃15度81分・昴11度08分・畢16度50分・觜0度05分・参10度28分、計83度95分)、南方七宿(井31度03分・鬼2度11分・柳13度・星6度31分・張17度79分・翼20度09分・軫18度75分、計109度08分)。これは今暦で測定した赤道値を冬至歳差の位置に準じて算定したもので、上下の考証には歳差ごとに変算した当時の宿度を用いる。
- 「推冬至加時黄道日度」「求四正加時黄道日度」「求四正晨前夜半日度」「求四正後每日晨前夜半黄道日度」「求每日午中黄道日度」「求每日午中黄道積度」「求每日午中赤道日度」:これらは天正冬至の加時黄道日度を起点に、四正(二至二分)の加時黄道日度、晨前夜半日度、毎日の午中黄道日度・積度、赤道日度を順次算出する一連の算式である。
- 「黄道十二次宿度」:危12度64.91秒(娵訾之次、辰は亥)、奎1度73.63秒(降婁之次、辰は戌)、胃3度74.56秒(大梁之次、辰は酉)、畢6度88.5秒(実沈之次、辰は申)、井8度34.94秒(鶉首之次、辰は未)、柳3度86.80秒(鶉火之次、辰は午)、張15度26.6秒(鶉尾之次、辰は巳)、軫10度7.97秒(夀星之次、辰は辰)、氐1度14.52秒(大火之次、辰は夘)、尾3度1.15秒(析木之次、辰は寅)、斗2度76.85秒(星紀之次、辰は丑)、女2度6.38秒(玄枵之次、辰は子)。
- 「求入十二次時刻」:入次宿度から晨前夜半日度を引いた差に日周を乗じ、その日の行定度で割って発斂加時の要領で入次時刻を求める。
步月離第四(月の運行の算法)
- 転終分275546分。転終27日5546分。転中13日7773分。初限84。中限168。周限336。月平行13度3687.5秒。転差1日9759.93秒。弦策7日3826.48少分。上弦91度3143.75秒。望182度6287.5秒。下弦273度9431少秒。転応131904分。
- 「推天正経朔入転」:中積に転応を加え閏餘を引いた値を転終分で割った余りを日周で割り、天正経朔の入転日・分を得る(遡る場合は中積に求める閏餘を加え転応を引き転終で割った余りを転終から引く)。
- 「求弦望及次朔入転」:天正経朔入転に弦策を順次加え転終で割った余りから弦・望・次朔の入転日・分秒を求める(次朔を直接求める場合は転差を加える)。
- 「求経朔弦望入遅疾暦」:入転日・分が転中以下なら疾暦、以上なら転中を引いて遅暦とする。
- 「遅疾転定及積度」:入転日ごとの初末限・遅疾度・転定度・転積度を示す表で、入転0日(疾初、転定度14度67.64分、転積度0)から27日6分(遅、転定度14度71.54分、転積度360度22.79分)まで27段階にわたり、遅疾の度数が初限で最大(約5度4分前後)となり中限・末限にかけて漸減する様子を示す精密な対照表である。
- 「求遅疾差」:遅疾暦日・分に12限20分を乗じ、初限・末限を求めたうえで、盈初縮末と同様に立差325・平差28100・定差11110000を用いた三次式で遅疾差を算出する(別法として遅疾暦日率と損益分から求める方法もある)。
- 「求朔弦望定日」:経朔弦望の盈縮差と遅疾差を同名(盈と遅、縮と疾)は加算、異名(盈と疾、縮と遅)は相殺したうえで820を乗じ遅疾限下の行度で割って加減差とし、経朔弦望の日・分に加減して定朔弦望の日・分を得る。定弦望の分が日出分以下なら1日繰り下げる。定朔の干支が翌月の朔の干支と同じなら大の月、異なれば小の月とし、中気を含まない月を閏月とする。
- 「推定朔弦望加時日月宿度」「推定朔弦望加時赤道月度」:定朔弦望の入暦・盈縮差・冬至加時黄道日躔などから、加時における日月の黄道・赤道宿度を順次算出する。
- 「推朔後平交入転遅疾暦」「求正交日辰」「推正交加時黄道月度」「求正交在二至後初末限」「求定差距差定限度」「求四正赤道宿度」「求月離赤道正交宿度」「求正交後赤道宿積度入初末限」「求月離赤道正交後半交白道(旧名九道)出入赤道内外度及定差」「求月離出入赤道内外白道去極度」「求每交月離白道積度及宿次」「推定朔弦望加時月離白道宿度」「求定朔弦望加時及夜半晨昏入転」「求夜半月度」「求晨昏月度」「求每日晨昏月離白道宿次」:以上は、月の軌道(白道、旧名九道)が黄道・赤道に対して傾き交わる様子から、正交・中交・半交など各交点の位置と時刻、および毎日の月の白道上の宿度・去極度を順次算出する一連の算式群であり、白道が黄道に対し出入りする内外度は最大約23度90分、周天六分の一(60度87.625分)を基準に定差を求める。