繹史月令(月令)

夏小正にみる月ごとの物候

  • (夏小正より)正月から十二月まで、月ごとの動植物の変化(雁の北帰、雉の鳴き声、魚の氷上への浮上、田鼠の出現、蚕の飼育開始など)と農事(耕起・除草・公田への奉仕・蚕織)を記す。各項目には解説的な割注が付き、語の由来(例:「陟」は昇る意、「祭魚」は獺が魚を並べて食べる様子)を説明する。
  • 三月の「参則伏」、四月の「南門正」、五月の「浮游有殷」など、星辰の見え隠れによる時期の確認も月ごとに記される。
  • 末尾に、夏小正は夏后氏(あるいは子夏・戴徳)の作と伝えられるが、伝写の過程で誤脱が多く校訂しがたいとする編者の注記がある。

周書「周月」「時訓」にみる暦法

  • (周書より)周公が三統の暦法を正した経緯を述べ、周の正月(子月)の位置づけ、四季・十二月・中気(雨水・春分など二十四節気の中気)の配当を説明する。
  • 殷は建丑(十二月)、周は建子(十一月)を正月とするなど、夏殷周三代の正朔の違いと、その由来(陽気の萌しの度合いによる三微説)を記す。
  • (周書「時訓」より)二十四節気ごとに五日刻みで生じる物候(東風解凍、蟄虫始振、桃始華、鴻雁来など)を列挙し、それぞれの物候が現れない場合に生じる凶兆(政治の乱れ・災異)を対応させる。

礼記「月令」にみる四季の政令

  • (礼記より)孟春から季冬まで十二月について、太陽の位置・昏旦の中星・十干十二支・五帝五神・五虫五音・律・数・味・臭・祭祀・天子の居所や車馬服飾の色を規定する。
  • 各月に行うべき政令(農事の奨励、山林川沢の保護、婚姻・祭祀・軍事・土木の可否、刑罰の緩急など)を詳述し、時節に反した政令(例えば孟春に夏令・秋令・冬令を行った場合)がもたらす災異を月ごとに列記する。
  • 割注に淮南子「時則訓」の対応記事や、逸礼・易通卦験・詩緯・春秋緯などの類似記述を多数引用し、月令の内容を補強する。

管子にみる四時・五行の政令論

  • (管子「四時」より)東西南北中央の五方にそれぞれ「星」「日」「土」「辰」「月」を配し、四季の政令(春の五政・夏の五政・秋の五政・冬の五政)と、時節に反した場合の災異(春に冬政を行えば凋み、秋政を行えば霜が降りるなど)を論じる。
  • (管子「五行」より)甲子・丙子・戊子・庚子・壬子の日を基準に木火土金水の五行が七十二日ずつ天下を治めるとし、それぞれの時に行うべき政令と、誤れば生じる災異(旱・水・兵乱・疫病など)を詳述する。割注に淮南子・春秋繁露・孝経鉤命訣の類似記述を付す。

天文の変遷に関する編者按語

編者按

  • 堯典と月令とで仲春・仲夏・仲秋・仲冬の昏中星が食い違うのは、歳差(歳周と天周のわずかな差)によるものであり、月令の記述は測度の精密さでは後世の暦家に及ばないとする考証を付す。

:夏小正の割注は、各語句の字義や記述順序の意図(善悪・軽重による書き分けなど)を解説する伝統的な訓詁で、原文はほぼ全文にわたって細かい注が付されている。 :礼記月令の割注には、淮南子の対応する時則訓の文、易通卦験・詩緯歴枢・孝経援神契・孝経鉤命訣・春秋考異郵など緯書の記述、逸礼の関連文が多数引かれ、月令の政令や物候の記述を天文・災異思想の面から補足している。