繹史斉桓公の覇業(三)(齊桓公霸業(三)(管子著書上))
本篇は『管子』のうち治国論を中心とする諸篇(牧民・形勢・七法・版法・幼官など)から抜粋・要約したもので、桓公・管仲の直接の対話ではなく、管仲に仮託された政治思想の集成である。
牧民
- (管子「牧民」より)国を治める要諦は四時・倉廩の充実にあり、「倉廩実ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」と説く。礼・義・廉・恥の四維が絶えれば国は傾き、危うくなり、覆り、ついに滅びるとする。
- 民心に順うことが政治の要であり、民が憂うことを除き、望むことを与えれば遠者も自ずと親しむとする(「四順」)。
- 「国を不傾の地に置き、不涸の倉に積み、不竭の府に蔵す」等の比喩で、徳を授け、五穀を務め、民心に順う政治の要諦を説く(「士経」)。
- 家・郷・国・天下は一体であり、上に立つ者の好悪が民を導くとし、君主は私心を隠さず賢者を用いるべきと説く(「六親五法」)。
形勢
- (管子「形勢」より)山や淵の永続性、蛟龍・虎豹が本拠を得て威を発揮する例を引き、君主も本拠(徳・信)を守るべきことを説く。
- 「必得の事は頼むに足らず、必諾の言は信ずるに足らず」など、慎重さと道理を重んじる処世訓を列挙する。
- 天道に順う者は栄え、逆らう者は敗れるとし、君主の言行の一貫性(「言而不可復、行而不可再」)を戒める。
権修
- (管子「権修」より)土地が広くとも民が治まらねば富国たりえず、税制・賞罰の適正さが国力の基礎とする。
- 民の労力・時間には限りがあるため、これを無限に用いようとする欲を戒め、「民より取るに度あり、これを用いるに止あり」とする財政規律を説く。
- 小礼・小義・小廉・小恥を慎まぬ者に大礼・大義を求めることはできないとし、日常の細事から徳を積む重要性を説く。
立政
- (管子「立政」より)国の治乱は刑罰の当否、安危は防備の巧拙、貧富は税制の適否によるとし、徳・功・能に見合わぬ地位や褒賞を与えぬよう戒める(「三本」)。
- 君主が慎むべき四事(仁徳なき者への大権授与、譲るべき賢者を退けること、罰の私情による回避、地の利を軽んじること)を説く(「四固」)。
- 郷里制度(伍・什・里・游・州)による民の連座監察制度と、季節ごとの布告(「首憲」「首事」)の仕組みを詳述する。
- 官職に応じた衣服・俸禄の制度(「服制」)、九つの敗政(寝兵・兼愛・全生などの過度な思想が招く弊害、「九敗」)を列挙する。
乗馬・七法ほか
- (管子「乗馬」より)都市の立地は大河・大山を頼み、地の均分・爵位の秩序・市場の理・黄金の量目を政治の基準とすべきと説く。
- (管子「七法」より)「則(基準)・象(比況)・法(規範)・化(教化)・決塞(取捨)・心術(誠意)・計数(計量)」の七つが政治の根本であるとし、これらを明らかにしないまま号令・軍事を行えば必ず失敗すると説く。
- 軍事論として、財・工・器・士・教・習・徧知天下・機数の八つで敵に勝る国のみが天下を正しうると説く(「為兵之数」)。
版法・幼官
- (管子「版法」より)君主の喜怒による恣意的な賞罰を戒め、慶賞と刑罰を明確な基準に基づき行うことを説く。
- (管子「幼官」より)四季に応じた政務・服色・音律・数を対応させる陰陽五行的な統治論を展開し、諸侯との盟約儀礼(「一会諸侯」から「九会諸侯」まで)を段階的に列挙する。