繹史喪服の制(喪服)
『儀禮』喪服篇を引く。喪服には重さの異なる五段階(斬衰・齊衰・大功・小功・緦麻)があり、続柄・身分に応じてどの喪服をどの期間着るかを定める。あわせて『禮記』大傳・喪服小記・服問・雑記・檀弓等からの関連規定、『爾雅』釋親篇の親族呼称も収める。
斬衰三年(最も重い喪)
- (儀禮喪服より)縁を縫わない粗い麻布の喪服(苴絰・杖・絞帶・菅屨)を三年間着る、最も重い喪。対象は、父(子にとって至尊のため)、諸侯にとっての天子、臣にとっての君、嫡長子を亡くした父(正統を継ぐ者のため)、他家の後継ぎとなった者(実親に代わり養家の祖先を継ぐため)、夫を亡くした妻、君を亡くした妾、室にとどまる未婚の女子が父を亡くした場合など。喪服の細部(総の長さ、笄の寸法等)も規定される。
疏衰裳齊三年(齊衰三年)
- (儀禮喪服より)父がすでに亡く母を亡くした場合、継母、慈母(父の命により子とされた妾)、嫡長子を亡くした母などが対象。継母や慈母も実母同様に三年の喪に服すのは、父の配偶または父の命によるものだからと説く。
疏衰裳齊・杖期(一年、杖を用いる)
- (儀禮喪服より)父が存命中に母を亡くした場合(父の至尊を憚り期に留める)、妻を亡くした夫などが対象。
疏衰裳齊・不杖期(一年、杖を用いない)
- (儀禮喪服より)祖父母、伯父・叔父夫婦、兄弟、嫡孫、他家の養子となった者が実の父母を亡くした場合、嫁いだ女子が実の父母(または父を継いだ兄弟)を亡くした場合、同居の継父、姑・姉妹で祭祀を継ぐ者がいない場合、君の父母・妻・嫡長子・祖父母、妾が女君(正妻)を亡くした場合、嫁・舅姑の関係など、多岐にわたる続柄が列挙される。宗子(本家の当主)とその母・妻に対する服喪も、祖先を敬う意味からこの段に含まれる。
疏衰裳齊三月(三か月)
- (儀禮喪服より)領地を失った寄留の君(寄公)とその寓先の民、宗子の母・妻、旧主君とその母・妻、曾祖父母、旧君(仕えていた大夫が去った後の君)などが対象。いずれも「民と同じくする」「祖を敢えて降さず」という理由づけがなされる。
大功九月・殤の喪
- (儀禮喪服より)成人前に亡くなった子・姪・甥・孫などの「殤(若死)」に対する喪、嫁いだ姑・姉妹、従兄弟、養子となった者の実の兄弟、庶孫、嫡子の嫁などが対象。殤は長殤(十六~十九歳)・中殤(十二~十五歳)・下殤(八~十一歳)に分けられ、年齢により喪の重さが変わる仕組みが説明される。
小功五月
- (儀禮喪服より)従祖祖父母、従祖父母、従兄弟、外祖父母、従母(母の姉妹)、夫の姑・姉妹など、やや遠い親族が対象。外祖父母への喪が軽いのは「尊さで加える」、従母への喪は「名(呼称の近さ)で加える」ためと説明される。
緦麻三月(最も軽い喪)
- (儀禮喪服より)族曾祖父母・族祖父母・族兄弟などの遠い同族、外孫、乳母、甥・壻・舅・妻の父母など、姻戚を含む広い範囲が対象となる、最も軽い喪。
殤(若死)の喪の減等規則
- (儀禮喪服より)長殤は本来の喪から一等、中殤も一等、下殤は二等減じるという規則があり、齊衰にあたる殤は大功相当に、大功にあたる殤は小功相当に、というように上位の喪の基準に合わせて減じる原則が示される。
『爾雅』釋親にみる親族呼称
- (爾雅「釋親」より)父方(宗族)・母方(母黨)・妻方(妻黨)・婚姻関係の呼称が体系的に列挙される。父の父を王父、王父の父を曾祖王父、その父を高祖王父と呼び、子・孫・曾孫・玄孫・来孫・晜孫・仍孫・雲孫と世代が下るごとに呼称が変わる。伯父・叔父・従父兄弟・族兄弟などの傍系の呼び分け、母方の外王父・舅・従母、妻方の外舅・外姑・甥・姨、嫁いだ婦人が舅姑・伯叔(夫の兄弟)・女公(夫の姉)などを呼ぶ際の呼称も網羅的に記される。
『禮記』にみる喪服制度の原理(宗法)
- (禮記「喪服小記」「大傳」より)諸侯の庶子が分かれて始祖となる「別子為祖」、その別子の系統を継ぐ「大宗」、父を継ぐだけの「小宗」という宗法の骨組みを説明する。大宗は百世変わらず尊ばれ、小宗は五世で遷るとし、祖を尊ぶから宗を敬い、宗を敬うから族をまとめる(尊祖・敬宗・収族)という論理が、社会秩序(宗廟・社稷・百姓・刑罰の安定)にまで敷衍される。
服の軽重を決める六つの原理
- (禮記「大傳」より)喪服の軽重は、親疎(血縁の近さ)・尊卑・名分・出入(嫁いだか否か)・長幼・従服(誰それに従って服す)の六つの基準で決まるとし、自分から祖に遡る系統は軽く、義によって父から下る系統は重いという原則を示す。
三年の喪の意義
- (禮記「三年問」「喪服四制」等より)三年の喪は、感情の深さに見合う「文(形式)」を立てたものであり、鳥獣ですら仲間を失えば群れを慕って鳴くように、人は情愛の深さゆえに喪に服すと説く。喪服四制として、恩(父への服)・義(君への服)・節(度を超えぬ節度)・権(老幼・病者への配慮)の四つの原理を挙げ、これらが喪服の軽重をすべて説明すると結論づける。