繹史虞祭の礼(虞禮)
『儀禮』士虞礼篇を引く。埋葬直後に死者の魂を安んじるため行う「虞祭」の作法と、続く卒哭・祔・小祥・大祥・禫に至る服喪の経過を記す。
牲器の準備
- (儀禮士虞禮より)豕(豚)を廟門外で煮て供え、洗盥の道具・尊(酒器)・饌(供物)を所定の位置に並べる。割注に、羹の調味や俎に盛る部位の順序が細かく記される。
主人・賓の位取り
- (儀禮士虞禮より)主人・兄弟・賓・婦人がそれぞれ喪服姿で門外や堂に位置し、祝(祭祀を執り行う者)が室内に席を設ける。
饌を供え神に饗する
- (儀禮士虞禮より)祝が苴(敷物)を洗って室に設え、鼎を運び入れて肉を俎に盛り、醴(甘酒)を酌んで祝詞を唱える。祝詞は初虞・再虞・三虞で文言が少しずつ変わる(初虞は「哀薦祫事」、再虞は「哀薦虞事」、三虞は「哀薦成事」)と割注に記される。
尸を迎えて九飯
- (儀禮士虞禮より)死者の代わりを務める「尸」を迎え入れ、盥手ののち席に着かせる。尸は菹・肺・黍稷などを順に食し(九度の飯)、その都度、佐食(祭祀の補助役)が肉を勧める作法が細かく記される。
主人の初献
- (儀禮士虞禮より)主人が尸に酒を勧め(酳)、賓が肝を焼いたものを添える。尸はこれを受けて祭り、味わったのち主人に杯を返す。
主婦の亜献
- (儀禮士虞禮より)主婦が房中で酒を酌み、尸に亜献する。棗・栗の籩(たかつき)を供え、燔(あぶり肉)を添える。
賓長の三献
- (儀禮士虞禮より)賓の長が最後に三献を行い、儀は一区切りとなる。
利成の告げと尸の退出
- (儀禮士虞禮より)祝が戸口で「利成(儀式が滞りなく成った)」と告げ、一同が哭する。尸は退出し、主人以下も順に堂を下りる。
陽厭(尸を立てない場合の儀)
- (儀禮士虞禮より)尸を立てない場合は、供物を室の隅に移して安置し(陽厭)、祝が戸を閉ざして退く簡略な作法をとる。
三虞・卒哭
- (儀禮士虞禮より)三度目の虞祭(三虞)で「卒哭(哭礼を打ち切る)」を行う。以後は定時の哭のみとなる。割注に、士は三月で葬り卒哭は虞の後に行うなど、身分による葬送・卒哭までの期間の差が記される。
餞(出発時の見送りの奠、再掲)
- (儀禮士虞禮より)尸を送り出す際に改めて酒食を供える「餞」の作法があり、尸がいない場合は省略されることも記される。
祔(祖廟へ合祀)
- (儀禮士虞禮より)卒哭の翌日、死者の位牌を祖先の列に加える「祔」の儀を行う。祔先の対象(昆弟・祖姑など)の選び方や、身分に応じた供物(大牢・少牢)の違いが割注に詳しい。
小祥・大祥・禫
- (儀禮の記/禮記より)一年目の祭りを「小祥」、二年目を「大祥」、その後の「禫(喪明けの祭)」と段階を追って服喪が緩められていく次第を記す。喪服の質や、酒食を口にする範囲が段階ごとに定められる。
『禮記』にみる喪礼の意義
- (禮記より)喪礼は哀しみの極みを節度をもって表すものであり、死者を求めても得られぬ悲しみ(望反諸幽)を、拝礼・辟踊(胸を打ち足を踏み鳴らす動作)などの形で表現するとする。銘旗を立てるのは、死者をこのままでは見分けられなくなることを惜しむ心の表れであるとも説く。
親の死に際する哀しみの諸相
- (禮記より)親の死に際して、水や粥も喉を通らぬほどの深い哀しみが、外見にも表れることを説き、辟踊・哭泣の作法が単なる形式ではなく、そうした哀しみを発散させ、体調を保つための知恵でもあるとする。
居喪の作法と限度
- (禮記より)喪に服する間は、飲食を極端に絶って命を損なうことのないよう定め、五十歳以上・六十歳以上・七十歳以上と年齢に応じて服喪の負担を軽減する規定がある。
忌日と終身の哀しみ
- (禮記より)三年の喪は最大の喪であるが、それでもなお、君子には終身の哀しみ(忌日)が残り、忌日には楽事を慎むと説く。