繹史喪礼(士喪礼下篇)(喪禮(自既夕以下士喪禮之下篇也))

『儀禮』士喪禮篇(後半は既夕礼を含む)を引く。士階級の喪礼を、臨終から埋葬・反哭までの時系列に沿って記す。割注には『禮記』喪大記・檀弓・雑記・喪服小記等からの関連規定が多数付される。

臨終

  • (儀禮士喪禮より)死者を適室に移し、歛衾(覆い布)で覆う。割注に、病篤い者の看護の作法、絶気の際に男は婦人の手に、婦人は男の手に抱かれて死んではならないという定め、五祀への祈禱などが記される。

復(魂呼び)

  • (儀禮士喪禮より)「復者」が死者の衣服を持って屋根に上り、北を向いて三度「臯(ああ)某よ、復(かえれ)」と呼び、衣を投げ下ろして死者に着せる。身分により用いる衣が異なる(君は袞衣、大夫は玄纁など)。

楔歯・綴足

  • (儀禮士喪禮より)角製の匙で歯を開き(楔歯)、几で足を固定する(綴足)。脯醢・醴酒を供えて帷で堂を覆う。

赴(訃報)

  • (儀禮士喪禮より)主人は西階の東で南面し、訃報を伝える使者に拝礼して送り出す。相手の身分(君・大夫・士)によって訃告の文言が異なる定めが割注にまとめられる。

哭位

  • (儀禮士喪禮より)主人・衆主人・婦人・親族がそれぞれ定位置(牀の東西・室の内外)に着いて哭する。喪主を誰が務めるか(男主・女主、同姓による代行など)についての細則も記される。

弔・襚(弔問と衣服の贈与)

  • (儀禮士喪禮より)君の使者が弔問に訪れ、致命・拝礼の作法を行う。続いて君の使者が死者に着せる衣服(襚)を届け、主人が拝礼して受ける。親族・友人による襚も、身分に応じた作法で行われる。

銘(旗印)

  • (儀禮士喪禮より)死者の身分に応じた布で銘(柩の傍に立てる旗)を作り、「某氏某の柩」と記して竹竿に掲げる。

陳具(沐浴・襲の準備)

  • (儀禮士喪禮より)甸人が沐浴用の穴を掘り、盆・瓶などの器を洗い清め、襲(死装束)の衣類を房中に並べる。稲米・沐巾・浴巾・櫛なども準備される。

沐浴

  • (儀禮士喪禮より)管人が水を汲み、米をといで沐(髪を洗う湯)を煮る。遺体を沐浴させ、爪を切り、髪を結い、明衣(死装束の下着)を着せる。

含(口に米・貝を含ませる)

  • (儀禮士喪禮より)主人が肌脱ぎで盥で手を洗い、貝と米を死者の口に含ませる作法。割注に、天子は九貝、諸侯は七、大夫は五、士は三という数の定めが記される。

襲(死装束を着せる)

  • (儀禮士喪禮より)瞑目布や握手(手を包む布)を施し、衣を三重に重ねて着せ、帯・笏・決(弓を引く道具)などを整え、最後に「冒」(袋状の覆い)で全身を覆う。

重(死者の魂の依代)

  • (儀禮士喪禮より)木を刻んで「重」という依代を庭に立て、余った米を鬲に入れて葦席で覆い、銘旗をその上に置く。

小斂(第一の納棺準備)

  • (儀禮士喪禮より)衣を房の南側に並べ、絞(結び紐)・衾(かけ布)・祭服などを順に重ねる。牲を煮た鼎を門外に並べ、遺体を牀に移して小斂(第一の包み)を行う。君・大夫・士で衣の枚数や絞・衾の材質に差がある。

大斂(納棺)

  • (儀禮士喪禮より)主人・主婦が遺体に取りすがって哭し(馮尸)、遺体を堂に移す。のち棺に納めて蓋をする(大斂)。棺は君は隅を漆で三重に塗るなど身分により仕様が異なる。君が弔問に訪れた場合の特別な作法(君視斂)も詳しく記される。

成服(喪服を着る)

  • (儀禮士喪禮より)死後三日目に喪服を正式に着る。杖をつき、君からの下賜品には拝礼するが、一般の賓には拝礼しない。倚廬(仮小屋)に住み、粥をすすり、経帯を解かない生活の細則が記される。

朝夕哭・朝夕奠

  • (儀禮士喪禮より)毎朝夕、定位置で哭礼を行い、酒食(奠)を供える。徹(片付け)・設(供え直し)の順序も細かく定められる。

朔月奠・薦新

  • (儀禮士喪禮より)毎月一日には特に手厚い奠(朔奠)を行い、季節の初物(薦新)があればこれも供える。

筮宅(墓地の占い)

  • (儀禮士喪禮より)冢人が墓穴の四隅を計り、筮者が蓍で墓所の吉凶を占う。祝詞には「哀子某、その父某甫のために墓所を占う、後の艱(わざわい)のなきように」との文言が記される。

視椁・明器

  • (儀禮士喪禮より)椁(外棺)が完成すると主人がこれを検分し、副葬品(明器)を殯門外に並べて示す。

卜日(葬送の日を占う)

  • (儀禮士喪禮より)卜人が亀甲を用いて葬送の日を占い、涖卜(占いの立会人)・宗人が手順を取り仕切る。占った結果は主婦や親族、賓客にも順次告げられる。

啓(柩を開き祖廟へ移す)

  • (儀禮士喪禮より)葬送の日が近づくと、柩を開いて祖廟に移す「朝祖」の儀を行う。柩を軸車に載せ、重・銘旗を先導させて祖廟に向かい、両楹の間に安置する。

飾柩車(柩車の装飾)

  • (儀禮士喪禮より)柩に帷・池(飾りの垂れ)などを施す。君は龍を描いた帷に振容(揺れる飾り)を、大夫・士はそれぞれ簡略な意匠を用いるなど、身分による差が細かく規定される。

陳器(副葬品を並べる)

  • (儀禮士喪禮より)明器(弓矢・農具・食器・武具・杖笠など実用の形を模した副葬品)を柩車の西に並べる。

祖奠(出発前の奠)

  • (儀禮士喪禮より)柩を出発させる前に最後の奠を供え、馬を薦める儀を行う。

賵(弔問国からの贈物)

  • (儀禮士喪禮より)主君や他国の賓が馬・幣などを贈る「賵」の儀があり、主人はこれを受けて哭拝する。

遣奠(出棺前の最後の奠)

  • (儀禮士喪禮より)出棺直前、羊・豕などを供えた最後の奠(遣奠)を行う。

薦馬・読賵(副葬の馬を献じ、贈物目録を読む)

  • (儀禮士喪禮より)柩車に副える馬を牽き出し、史が贈られた品々の目録(賵書)を読み上げる。

柩の出発(柩行)

  • (儀禮士喪禮より)柩は商祝の先導で邦門を出て墓所へ向かう。途中、君からの贈物(追加の賵)を受けることもある。

窆(埋葬)

  • (儀禮士喪禮より)墓穴に副葬品を並べ、柩を穴に下ろす(窆)。主人は哭踊し、埋葬後は土をかけ、木を立てて標とする。

反哭

  • (儀禮士喪禮より)葬送を終えた一同は家に戻り、殯のあった場所で改めて哭礼を行う。以後は朝夕の哭のみを続け、奠は行わない。