- 履歴: 本篇も人物伝ではなく、『周禮』地官司徒の職掌規定をほぼ全文引用したもの。地官は「教」(民の教化・戸籍・土地・徴税)を司る六官の一つ。
総論(周禮より)
- 地官司徒はその属官を率いて邦の教化を掌り、王を助けて諸侯国の民を安んじ懐ける。
大司徒の職掌(周禮より)
- 天下の土地図と人民の数を掌り、山林・川沢・丘陵・墳衍・原隰の名称と分布を弁え、諸侯国・都鄙の境界を定める。
- 土会の法で五種の土地(山林・川沢・丘陵・墳衍・原隰)ごとの物産と住民の特徴を弁え、十二の教え(祀礼・陽礼・陰礼・楽礼・儀・俗・刑・誓・度・世事・賢・庸による教化)を施す。
- 土宜・土均・土圭の法で土地の等級・税制・地中(暦の基準地)を定め、公侯伯子男それぞれの封地の広さと貢租率を規定する。
- 荒政十二(凶年の救済策)、保息六(慈幼・養老・振窮・恤貧・寛疾・安富)、本俗六(民を安んじる六策)を掲げ、郷八刑で民を糾し、五礼六楽で民を教化する。
小司徒の職掌(周禮より)
- 邦の教法を掌り、国中・四郊・都鄙の戸口数を調べ、貴賤老幼廃疾を弁別し、徴役・賦税の基準とする。
- 五人一伍から五師一軍までの軍制を編成し、井田制(九夫一井〜四県一都)により土地を区画して貢賦を課す。
郷師以下、郷里の教化を掌る諸官(周禮より)
- 郷師は各郷の教化と訴訟を統括し、軍役・喪葬・田猟の実務も担う。
- 郷老・郷大夫は郷の政教禁令を掌り、三年ごとの大比(人材登用試験)で賢者・能者を推薦する。
- 州長・党正・族師・閭胥・比長は、州(五党)・党(五族)・族(四閭)・閭(五比)・比(五家)という段階的な地方組織ごとに教化・祭祀・徴発・戒告・相互扶助を担当する。
祭祀・音楽・牧畜を掌る諸官(周禮より)
- 封人は社稷の壇や国境の封土を築き、鼓人・舞師は祭祀・軍事に用いる鼓の音と舞を教える。
- 牧人・牛人・充人は祭祀用の牲畜の飼育と供給を担当する。
土地行政を掌る諸官(周禮より)
- 載師は土地の種類ごとの税率(廛里・埸圃・宅田・官田・公邑など)を定め、閭師は人民・家畜の数を管理して各職業に応じた貢を課す。
- 県師は都鄙の戸口・土地・車馬を調査し軍役に備え、遺人は道路沿いの物資備蓄(委積)で賓客・凶荒・旅人を救済し、均人は力役の均等な割当を行う。
教化・訴訟を掌る諸官(周禮より)
- 師氏・保氏は国子(貴族の子弟)に三徳・三行・六芸・六儀を教え、王の過ちを諫める。
- 司諫・司救・調人・媒氏は、民の徳行の監督、過失の匡正、争いの調停(父の仇は海外に避ける等の復讐規定を含む)、婚姻の登録と仲介を担当する。
市場行政を掌る諸官(周禮より)
- 司市は市場の治教政刑を統括し、朝市・大市・夕市の時間帯と主体を定め、偽り・盗みを禁じる。
- 質人・廛人・胥師・賈師・司虣・司稽・胥・肆長は、それぞれ取引証書の管理、租税徴収、価格審査、暴力の取締り、巡察、店舗管理を分担する。
- 泉府は売れ残り品の買い上げと貸付(利息付き)を行う金融機関的な役所である。
関門を掌る諸官(周禮より)
- 司門・司関は国門・関所の出入管理と課税を、掌節は各種の割符(玉節・角節・虎節・人節・龍節・符節・璽節・旌節)による通行証発行を担当する。
遂人以下、郊外の民政を掌る諸官(周禮より)
- 遂人は郊外(野)の行政単位(鄰・里・酇・鄙・県・遂)を統括し、田里の授与・軍役・貢賦を管理する。
- 遂師・遂大夫・県正・鄙師・酇長・里宰・鄰長は、それぞれの地方単位で戸口調査・訴訟・農事督励・軍役徴発を分担する。
物資供給を掌る諸官(周禮より)
- 旅師・稍人・委人・土均・草人・稲人は、郊外からの穀物・薪炭・軍需物資の徴収、農地の等級評価、種子の選定、水田の灌漑などをそれぞれ担当する。
- 土訓・誦訓は地図・地方の風習・忌避事項を王に説明し、王の巡狩に随行する。
山林川沢を掌る諸官(周禮より)
- 山虞・林衡・川衡・沢虞は山林・川沢の伐採・漁猟の禁令と管理を、迹人・廾人・角人・羽人は狩猟地・鉱物・骨角・羽毛の徴収を、掌葛・掌染草・掌炭・掌荼・掌蜃はそれぞれ葛布・染料・炭・茅・貝殻の徴収を担当する。
苑囿・倉廩を掌る諸官(周禮より)
- 囿人・場人は禁苑の獣と果樹園を管理する。
- 廩人は九穀の数量を管理し年の豊凶を判断、舎人・倉人・司禄・司稼は宮中の穀物出納・穀倉管理・農事の巡察をそれぞれ担当し、舂人・饎人・稾人は米搗き・炊飯・雑穀の供給を担う。