大唐西域記僧伽羅國

  • 要旨: 僧伽羅国(スリランカ)の建国にまつわる二つの伝説(獅子の子孫説と羅刹女国説)を記し、仏牙精舎など仏教の聖地としての繁栄を伝える。

執師子(獅子の子)伝説

  • 一説として、南印度の王女が旅の途中で獅子にさらわれ、山中で暮らすうちに人と獣の間の子(男女)をもうけたとする。
  • 成長した息子が母と妹を連れて人里に逃れ、後に父の獅子が村を荒らすようになったため、息子自ら父を討ち、王から褒賞と追放を同時に受けて船で流され、宝の島に漂着して建てた国がこの国だとし、国名は「獅子を捕えた者」に由来するという伝説を記す。

僧伽羅伝説

  • 仏典に基づく別伝として、宝の島の羅刹女たちが商人を誘い込んで喰う鉄城の物語を記す。
  • 商主僧伽の子・僧伽羅が羅刹女の正体を見破り、天馬の助けで仲間と共に脱出したが、他の商人は羅刹女の誘惑に屈して戻り命を落としたとする。
  • 追ってきた羅刹女の王が僧伽羅の父に取り入り、僧伽羅の反対を押し切って国王に嫁いだ後、正体を現して宮中の人畜を皆殺しにしたため、僧伽羅が王に推挙されて即位し、兵を率いて羅刹女たちを討ち、宝の島を開拓してこの国を建てたとする(僧伽羅は釈迦の前世であるとする)。

仏教二部の分立

  • 仏滅後百年、無憂王の弟・摩醯因陀羅がこの国に正法を広めて以来、仏教が篤く信仰されるようになったとし、伽藍数百か所、僧徒二万余人が大乗上座部を学ぶとする。
  • 仏教伝来後二百余年で摩訶毘訶羅住部(大乗を退け小乗を学ぶ)と阿跋耶祇厘住部(大小二乗を兼学)の二派に分かれたとする。

仏牙精舎ほかの聖地

  • 王宮傍らの仏牙精舎には輝く宝珠が飾られ、王が日に三度仏牙を洗い清め供養するとする。
  • 傍らの精舎の金の仏像は、頭頂の宝珠を盗もうとした盗賊に対し像自ら頭を下げて宝を与えたため、王がこれを聖跡として讃え、以後像は頭を下げた姿のままになったという逸話を記す。
  • 王宮傍らの大厨房ではかつて毎日一万八千人の僧に食事を供していたが、近年の政情不安で中断しているとする。
  • 国は海に近く宝石を産し、王自ら祭祀を行うとする。

䮚迦山と周辺の島

  • 国東南の䮚迦山は釈迦が『楞伽経』を説いたとされる地とする。
  • 南方の海には身長三尺ほどの鳥のくちばしを持つ人々が椰子だけを食べて暮らす島(那羅稽羅洲)があるとし、さらに西の孤島には月の光で水を流す月愛珠を頭に持つ石仏像があるという伝承を記す。
  • 西方の大宝洲は無人で神が棲むとされ、夜に光が見えるが商人が財宝を得ることはできないと記す。