- 要旨: 呾叉始羅国はかつて栄えたが今は荒廃し、拘浪拏太子にまつわる悲劇の伝説で知られる国と記す。
地理と統治
- 周囲二千余里、大都城は周囲十余里、王族が絶えて豪族が争い、かつては迦畢試国、近年は迦湿弥羅国に服属するとする。
- 土地は肥沃で気候は温暖、風俗は軽率で勇猛、仏法を篤く敬うが伽藍は多くが荒廃しているとする。
医羅缽呾羅龍王池
- 城西北の医羅缽呾羅龍王池は、迦葉波仏の時代に樹を傷つけた比丘が生まれ変わった龍が住むとされ、雨乞い・晴れ乞いの際に僧が訪れて祈願する場所とする。
四大宝蔵の一つ
- 龍池の東南の仏塔は、釈迦が未来の弥勒菩薩出現の際に現れるとされる四つの大宝蔵の一つがこの地にあると予言したとされ、地震があってもこの場所だけは揺れないという言い伝えを記す。
舎頭仏塔
- 城北の仏塔は、釈迦が過去世に月光王(戦達羅缽刺婆)として、悟りを求めて自らの頭を千度施したという逸話の地とし、皮膚病の女性が塔を掃除し供養したことで病が治り美貌を得たという奇瑞も伝える。
童受論師の遺跡
- 舎頭仏塔の傍らの伽藍は、経部の童受(拘摩羅邏多)論師が諸論を著した場所とする。
拘浪拏太子の悲劇
- 城外南山の仏塔は、無憂王の太子拘浪拏が継母の讒言により両眼をえぐられた場所とされ、盲人が祈願すると視力を回復することがあると伝える。
- その経緯として、継母の不義な求愛を拒んだ太子が呾叉始羅国の統治を命じられた後、継母が王の印章を偽って盗み「太子の両目をえぐり追放せよ」との偽の勅命を発し、太子はこれに従って両目を失い乞食となって放浪したという顛末を記す。
- 盲目の太子が箜篌を奏でながら悲しい歌を歌ったことで父王がこれに気づき再会し、真相を知った王が継母の一派を処罰したこと、さらに大阿羅漢瞿沙(妙音)が説法の際に集めた人々の涙で太子の目を洗い、視力を回復させたという結末を記す。