- 要旨: 序論は、玄奘が見聞した西域諸国の記録を著す意義と、天竺・葱嶺周辺の地理的世界観(須弥山世界説、四大洲、四主の風俗類型)を述べ、以下の各国記述の枠組みを示す。
記述の意義
- 唐の威徳が四方に及び、遠方の異民族も帰服している現状を踏まえ、実際に見聞した事柄を記録することの意義を述べる。
- 仏典伝来の過程で生じた翻訳の訛りを正すため、正確な地名・呼称を伝えることを目指すとする。
仏教的世界観と四大洲
- 須弥山(蘇迷盧山)を中心とする仏教的宇宙観を紹介し、周囲を七金山・七海が取り巻き、外側の鹹海に東西南北の四大洲(東毘提訶洲・南贍部洲・西瞿陀尼洲・北拘盧洲)があるとする。
- 転輪王(金輪王・銀輪王・銅輪王・鉄輪王)の支配範囲がそれぞれ異なるという伝承を紹介する。
- 贍部洲(人間の世界)の中心に位置する無熱悩池(アナヴァタプタ池)から四つの大河(殑伽河=ガンジス川、信度河=インダス川、縛芻河=アム川、徙多河)が流れ出るという伝承を述べる。
四主の風俗
- 贍部洲を象主(インド、暑湿の地で学問を好む)、宝主(西方、海に臨み財貨を重んじる)、馬主(北方、寒冷で騎馬に長じ荒々しい)、人主(東方、中国、温和で礼義を重んじる)の四つの気質圏に分けて特徴づける。
- 東方(人主の地)が最も礼儀にすぐれ、インド(象主の地)は心を清め生死を離れる教えに優れるとする。
- 記録する地域ごとの風俗の詳しさは既存の史書の充実度に応じて差があるとし、以下、黒嶺以西の胡地の風俗の概略(城郭に住み農牧を営み、財を重んじ礼を軽んじる、婚姻・葬送の習俗など)を述べたうえで、各国の記述に入るとする。