大宋中興通俗演義第七十五回 冥司にて秦檜、報応を受ける (冥司中報應秦檜)

さらなる地獄の見学

胡迪は続いて溟泠之獄で、秦檜らが寒水に沈められ刃で切り刻まれる責めを受けているのを見る。案内の役人によれば、彼らは三日ごとに諸獄を巡って苦しみを受け、三年後には牛馬豚などの畜生に生まれ変わって人に食われる報いを受け、既に五十回以上もこれを繰り返しているという。胡迪が「罪に限りはあるのか」と問うと、「万劫を経ても尽きることはない」と答えられる。続いて「奸回之獄」では歴代の奸臣・悪逆の臣百余人が同様の責めを受け、「不忠内臣之獄」では歴代の悪辣な宦官(漢の十常侍、唐の李輔国・仇士良ら、宋の童貫など)が牛の姿に変えられて火責め・湯責めに遭い、東側の獄では不孝・不義・盗賊など生前の悪行に応じた者たちが様々な責め苦を受けている光景を見せられる。胡迪はこれを見て、長年の鬱憤が晴れたと喜ぶ。

判文の作成

案内を終えて戻った胡迪に、閻王は秦檜夫妻父子の罪状を糾弾する判文を書くよう求める。胡迪は秦檜の姦悪ぶりと岳飛殺害の罪、妻王氏や子秦熺の加担を厳しく論じ、その罪は幾万の紙を費やしても書き尽くせず、幾万劫の畜生道を経ても償いきれないと結んだ判文をしたためた。(判文:秦檜一家の悪逆非道を歴代の奸臣に比して糾弾する内容)

忠臣たちの天界訪問と帰還

閻王は胡迪の文才と正しい心を称賛し、胡迪の願いを容れて忠臣義士たちが祀られる「忠賢天爵之府」へ案内する。そこには歴代の忠臣たちが仙人のような姿で迎えられており、胡迪も客として厚遇される。閻王は胡迪に、寿命を七十二歳から一紀(十二年)延ばし、五十一年間富貴を全うできると告げる。胡迪は喜んで礼を述べ、諸公に別れを告げて送り届けられるうちに目を覚ますと、既に夜明けであった。

評語

本回は胡迪の冥府巡りという趣向を借りて、秦檜一党への断罪と岳飛ら忠臣への顕彰を改めて対比させ、善悪の応報は必ず巡るという勧善懲悪の主題で全書を締めくくっている。