大宋中興通俗演義第六十七回 何鋳、再び金国へ使いする (何鑄復使如金國)
李夫人の不吉な夢
- 鄂州にいた岳飛の妻李氏は、夫子が出立して一月、朝廷からの音信が絶えたことを不安に思っていた。ある夜、鴛鴦を手に抱いて帰る夫の夢を見たと娘の銀瓶に語る。
- 銀瓶も、兄と張将軍がそれぞれ木を抱えて帰る夢を見たと答えた。二人は不安になり、王師婆に神を降ろして吉凶を占わせる。
- 神託は「無事、ただ血の光の災いあり」とだけ告げて去った。師婆は改めて夢を解き、鴛鴦の夢は「鴛鴦を引き裂く」意、木を抱く夢は「休」の字を示し不吉と説く。母娘は動揺した。
訃報と臨安行
- 家僕の金安が駆け込み、老相公・小相公・張将軍の三人が朝廷に殺されたと告げる。夫人と銀瓶は卒倒するほど驚いた。
- 銀瓶は、父兄が張憲と共に処刑されたのは不審であり、奸人の計略に違いないとして、母に自ら臨安へ赴き真相を確かめるよう勧める。
- 夫人は次男岳雷らに留守を託し、金安に船を用意させ、銀瓶とともに揚子江を下って臨安へ向かった。
遺骸との対面と銀瓶の死
- 臨安に着いた夫人は、金安を通じて岳飛らの遺骸を秘かに埋葬した人物を探し出す。その人物は、岳飛の名声を思って三人の遺骸を一所に葬り、証拠として絨の帯を保管していたと語った。
- 夫人はその帯を見て号泣し、九曲の裏道で遺骸を確認する。岳飛の姿は生きているようで、背には「精忠報国」の四字が刻まれ、全身に杖の痕があった。三人に新しい衣を着せ、改葬の支度をした。
- 銀瓶は父兄の惨死を嘆き、井戸に身を投げて死んだ。夫人と金安らは深く悲しみ、遺体を引き上げて岳飛らと共に西湖北の棲霞嶺に葬り、張憲は東山神寿巷に葬った。
- 夫人は鄂州に戻り、岳飛の位牌を祀った。まもなく秦檜の腹心王会が来て岳飛・張憲両家の家財を没収し、家族は嶺南へ流された。
金国の反応と講和の使い
- 金の熙宗は岳飛父子の死を喜び、諸酋も祝杯を挙げ「和議はこれで固まった」と語った。兀朮も、南朝で恐るべきは岳飛のみであったとして再度の講和使派遣を進言し、熙宗は蕭毅を宋へ遣わした。
- 蕭毅は臨安で高宗に謁見。高宗は徽宗の梓宮と韋太后がいまだ帰らぬことを訴え、講和の誠意を示すよう強く求めた。蕭毅は言葉に詰まった。
- 高宗は何鑄・曹勛を金へ遣わし、韋太后の帰還を重ねて請わせた。何鑄・曹勛・蕭毅はそれぞれ熙宗に太后帰還の情理を説き、熙宗はついに承諾。徽宗・鄭后・邢后の三梓宮と韋太后の帰還を約した。
- 左丞相耶律徳は翻意を諫めたが、熙宗は一度出した言葉は違えられないとして退け、劉筈に冊命を持たせ、宋を大宋皇帝として認め、梓宮と太后の送還を命じた。