隋唐演義第二十六回 竇小姐は服を替え他郷へ逃れ、許太監は身一つで虎穴に入る (竇小姐易服走他鄉  許太監空身入虎穴)

鮑山での酒宴

金国俊・童佩之は用事を案じて先に潞州へ帰った。単雄信・王伯当・李玄邃の三人は気ままに山水を巡りながら臨淄の境まで来て、そろそろ別れねばならないと言い合う。単雄信は名残を惜しみ、前方の鮑山(管仲・鮑叔が財を分けた故事の地)で名残の酒を酌み交わそうと誘い、三人は連れ立って山麓の酒肆に入る。

竇建德との出会い

店には先客として李如珪・齊国遠がおり、さらにもう一人、貝州の竇建德がいた。互いに名乗り合い、意気投合して酒宴となる。伯当は李如珪・齊国遠に近況を尋ね、二人は清河で盧明月に敗れて桃花山に移った経緯と、単雄信の招きで秦叔宝の母の祝寿に向かう途中で竇建德と同道するに至った経緯を語る。伯当もまた、秦叔宝を賈潤甫の店で救い、程咬金が盗みを認め、唐公の援助でようやく片が付いた顛末を語って聞かせ、一同は快哉を叫ぶ。

竇建德の身の上話

話が転じ、竇建德が沈痛な面持ちで自らの事情を打ち明ける。妻を亡くした後、朝廷が繍女(宮女)選抜の命を下し、州の役人が娘の竇線娘(十三歳、才色兼備で武芸にも通じる)を上等に報告してしまった。娘は財産をなげうって免除を働きかけたが役人は聞き入れず、ついに家財を売り払って死人を集め対抗しようとするところを親族が止め、竇建德自身も奔走して多額の金を費やしてようやく免除を得た。その後の追及を恐れ、娘と嫂を介休の知人・張善士のもとへ避難させ、自らは旅先で齊・李の二人と行動を共にしていたのだった。単雄信は同情し、しばらく自分の荘へ滞在するよう勧め、伯当・玄邃も同行を承知する。

竇成の急報と別離

一行が宿を出て道を進むうち、路傍で仮眠する竇家の老僕・竇成を見つける。竇成は、貝州では繍女の再選が始まり官吏が家探しをしているため、娘の指示で竇建德を呼び戻しに来たのだと告げる。竇建德は急ぎ介休へ戻ることを決め、単雄信は隋朝の暴政を避けて娘ともども自分の荘へ身を寄せるよう勧める。さらに伯当・玄邃に、才覚のある二人で竇建德に同道し様子を見届けてほしいと頼み、路銀を託す。竇建德は礼を述べ、伯当・玄邃と共に介休へ向かい、単雄信は齊国遠・李如珪を誘うが二人は山寨の手勢が気になるとして辞退し、単雄信は潞州へ帰る。

齊国遠・李如珪の思案

馬上で齊国遠は、竇建德の一件で単雄信が伯当・玄邃だけを供に付けたことに不満を漏らす。李如珪も自分たちの働きを示したいと考え、二人は山寨に戻って手勢を整え、自分たちも介休へ向けて動くことにする。

竇小姐、父と再会

竇線娘は事態の悪化を察し、竇成が発った二日後に男装して嬸母・弟と共に密かに介休を脱出し、途中で父・建德と巡り合う。建德は大喜びし、伯当・玄邃の勧めで一同は一賢荘へ身を寄せることになる。

介休での探索と繍女徴発の噂

李如珪と齊国遠が介休に着いた頃には、伯当・玄邃らの行方は分からず、街では繍女選抜にまつわる噂話ばかりが飛び交っていた。ある家は数千両を贈って免れ、貧しい家の娘は五百両しか用意できず徴発されたという話を聞くうち、李如珪は、勅使が永寧州へ向かったばかりだと知り、ある計略を思いつく。齊国遠に山寨の手勢を率いて先回りさせ、自らも急いで山寨へ戻り一計を練る。

欽差・許庭輔の拉致

勅使・許庭輔一行は介休を発ち永寧州へ向かう途中、清虚閣で暴風雨に遭って休息する。そこへ永寧州の駅丞と称する男(実は変装した李如珪)が現れ、酒に痺れ薬を盛って一行を眠らせ、許庭輔と側仕えの小内監二人を捕らえて山寨へ連れ去る。

山寨での詰問と身代金交渉

山寨で目覚めた許庭輔は、繍女選抜にかこつけて民から金品を貪ったことを李如珪に責められる。齊国遠は一万両を要求し、拒めば命はないと迫る。許庭輔は小内監の一人・周全を州へ使いに出し、州府の官吏たちは体面を恐れて庫の金を工面する。最初に届いた金では足りず、許庭輔がさらに私財を足して合計数千両を支払い、ようやく山を下りることを許される。以後、許庭輔は各地でますます賄賂を貪りながら繍女選びを続けたという。