隋唐演義第三回 李靖は雄心のままに西嶽に訴え、張衡は讖語を作り李淵を危うくする (逞雄心李靖訴西嶽  造讖語張衡危李淵)

洪水の夢と李渾一族の粛清

  • 隋主は洪水の夢を「水偏の姓を持つ者の禍」と結びつけ、郕国公李渾の一族に疑いを向ける。渾の字に水偏があり、封爵「郕」も夢の「城」に通じると考えた隋主は、李渾の幼子・洪児を理由もなく死に追いやる。

李靖の野心と西嶽廟での占い

  • この一件が世に伝わると、若き李靖(字は薬師)が「李の姓を持つ者が天下を取る」との予兆と受け止め、密かに天子の志を抱く。李靖は華山の西嶽廟に参詣し、自らの運命を占う祝文を捧げ、占いを行う。爻の結果を「吉兆だが天子の相ではない」と読み取り、輔佐の臣となる覚悟を固める。
  • その夜、夢に西嶽の判官が現れ、李靖の将来を記した謎めいた文言を授ける。李靖はこれを胸に刻み、天下取りの野心を捨てて時を待つことにする。

龍宮での代行雨のいきさつ

  • 渭南滞在中、李靖は狩りの途中で道に迷い、一軒の大邸宅に宿を求める。そこは実は龍宮で、応対した老夫人は龍母であった。息子たちが不在のため、雨を降らせる天命を李靖に代行してほしいと頼まれる。
  • 李靖は龍馬に乗り、瓶の水を一滴ずつ落として雨を降らせる役目を務めるが、昼間立ち寄った村への恩返しのつもりで、定められた一滴を大きく超える水を落としてしまう。結果、その一帯は大洪水となり、老夫人は罰として鞭打ちを受ける羽目になる。
  • 詫びとして老夫人は二人の侍女(文婢と武婢)のどちらかを李靖に贈ろうとし、李靖は武の侍女を選ぶ。その侍女は道中、兵法の書を李靖に授けて姿を消す。これにより李靖の兵法はさらに磨かれた。
  • 隋主は現実に近郊で水害が起きたことを知り、自らの夢が「すでに応験した」と考えて疑心をいくらか解く。

太子と佞臣の陰謀

  • 隋主の三子・蜀王秀が晋王(太子)に不満を持ったため、太子は楊素に命じて秀の罪を捏造させ、秀は庶人に落とされる。李淵はこれを諫めるが聞き入れられず、以後太子に一層警戒される。
  • 太子は宇文述・張衡と謀り、李淵を除く策を練る。張衡は「渾・淵はともに水偏の字であり、隋主の猜疑心を利用できる」と献策し、「桃李子、有天下」「楊氏滅、李氏興」という流言を市中に広める。

李渾一族の誅殺と讖言禁圧

  • 隋主はこの流言に不安を募らせ、佞臣裴仁基の讒言により、李渾一族三十二人が謀反の罪でことごとく処刑される。さらに方士安伽陀は「李氏の者を皆殺しにすべき」と進言するが、高熲が「讖言には真偽さまざまあり、徳を修めるべきで刑によって人心を動揺させるべきではない」と諫め、姓李の者を朝廷や兵権から遠ざける穏便な策に落ち着く。
  • 蒲山公・李密も官を辞し、李淵も太原への赴任を願い出て許される。これにより一族は難を逃れた。

太子の新たな謀略

  • 太子は李渾が犠牲になった一方で李淵が無事に難を逃れたことを不満に思い、宇文述と共に李淵一家を亡き者にする新たな計略を練る。その内容は次回に語られる。