宋史卷五十一 天文志第四
二十八宿(下)――奎宿
- 奎宿十六星は「天の武庫」「天豕」「封豕」とも呼ばれ、兵を禁じ暴を防ぎ、また溝や堤を司るとされる。西南の大星は「大豕目」「大将」と呼ばれ、動けば兵乱や洪水の兆、日食にあえば魯国に凶事、辺境で兵乱・水旱が起こるとされた。歳星・熒惑・填星・太白・辰星・客星・彗星・孛星・流星・雲気がこの星に近づいたり侵犯したりする現象は、それぞれ兵乱・盗賊・獄訟・饑饉・洪水・貴人の憂い・将相の死などの兆として占われた(漢代の永元銅儀では十七度、唐の開元游儀では十六度と測られた)。
- 天溷七星は外屏の南にあり、豚を養う厠にたとえられ、暗ければ人心不安、移動すれば憂いの兆とされる。
- 土司空一星は奎宿の角にあり「天倉」とも呼ばれ、土木・城壁・堤防・賞罰の政を司る。明るく黄色ければ天下安泰、彗星・客星が侵犯すれば水旱・民の流亡・兵乱・土木の乱発の兆とされた。
- 策一星は王良の北にあり天子の車馬を司る星とされ、流星・彗星・客星の侵犯は大兵の兆とされた。
- 附路一星(「傅」とも)は閣道の南にあり、大僕(天子の御者)を司る。芒角が動けば車騎が野に出る兆、星が見えなくなれば道路の変異とされた。
- 閣道六星は王良の前にあり、紫宮から天の河へ至る道とされ、天子の行幸の道を象る。動揺すれば宮中に兵乱、彗星・客星の侵犯は国の喪の兆とされた。
- 王良五星は奎宿の北、天の川の中にあり、天子の御者を司る。四星は「天駟」、傍らの一星は「王良」または「天馬」と呼ばれ、動けば車騎が野を満たす兆とされた。太白・熒惑の侵犯は兵乱、彗星・客星の侵犯は兵喪・橋梁不通の兆とされた。
- 外屏七星は奎宿の南にあり、汚穢を遮る役とされる。
- 軍南門は天大将軍の南にあり、出入りを検問する門とされ、星が不明であれば外国の叛乱、動揺すれば兵乱の兆とされた。
- (按語)『歩天歌』はこれら諸星をすべて奎宿に属すとするが、『晋書』天文志にもとづけば、王良・附路・閣道・軍南門・策星は天市垣に属し、外屏・天溷・土司空などの所属も『隋書』天文志・武密の書・『乾象新書』でそれぞれ異なり、諸説一致しない。
婁宿
- 婁三星は「天獄」と呼ばれ、苑牧・犠牲の供給や、兵の興起・衆の聚集を司る。明るく大きければ賦斂が時に適う吉兆、日食・月食・月暈などは宰相・大人・后妃の憂いや疫病・饑饉・兵乱の兆とされ、歳星・熒惑・填星・太白・辰星・客星・彗星・流星の侵犯もそれぞれ兵乱・饑饉・水旱・訟獄などの兆として細かく占われた(漢の永元銅儀・唐の開元游儀ではともに十二度)。
- 天倉六星は婁宿の南にあり穀物の蔵とされ、星の遠近・疎密で豊凶を占い、五星や彗星・客星・流星の侵犯は兵乱・饑饉・倉庫の火災などの兆とされた。
- 右更五星・左更五星は婁宿の西と東にあり、それぞれ牧師の官・山虞の官を司るとされ、占い方は右更に準じた。
- 天大将軍十一星は婁宿の北にあり武事を司る。中央の大星が大将、周りの小星が吏士を表し、動揺すれば兵乱の兆とされた。
- 天庾四星は天倉の東南にあり、露天の穀物の蓄えを司り、占いは天倉に同じ。
- (按語)『晋書』天文志では天倉・天庾を二十八宿の外に置き、天大将軍は天市垣に、左更・右更は『隋書』のみに見え、諸書で所属が異なる。
胃宿
- 胃宿三星は「天の厨蔵」とされ、倉廩・五穀の府を司る。明るければ天下太平・倉実り民安んじ、暗ければ倉が空しく穀貴となる兆とされた。日月食・月暈、歳星・熒惑・填星・太白・辰星・客星・彗星・流星の侵犯は、大臣誅殺・穀物の騰貴・水旱・兵乱・国主の死・土木の乱発など多岐にわたって占われた(漢の永元銅儀では十五度、景祐の測験では十四度)。
- 天囷十三星は胃宿の南にありZ字状(「乙」の形)に並び、御用の倉廩を司る。星が明るければ豊作、暗ければ饑饉、五星や客星・彗星の侵犯は倉庫の空虚や水火の災いの兆とされた。
- 大陵八星は胃宿の北にあり「積京」とも呼ばれ、大喪を司る。中の星が繁ければ諸侯の喪、月・五星・彗星・客星の侵犯は水旱・兵乱・疫病・喪の兆とされた。
- 積尸一星は大陵の中にあり、明るければ大喪、月犯は叛臣の兆、五星の侵犯は天下の大疫の兆とされた。
- 天船九星は大陵の北、天の川の中にあり、渡河・舟運を司る。明るければ天下安泰、日食・五星・彗星・客星の侵犯は水災・兵喪の兆とされた。
- 天廩四星は昴宿の南にあり「天廥」とも呼ばれ、祭祀用の穀物の蓄えと功績への恩賞を司る。明るければ穀物豊作、五星・客星・流星の侵犯は饑饉・旱魃・水害の兆とされた。
- 積水一星は天船の中にあり水災を候う星とされ、熒惑の侵犯は水害の兆とされた。
- (按語)『晋書』天文志では大陵・積尸・天船・積水を天市垣に、天囷・天廩は二十八宿の外に置くなど、武密の書・『乾象新書』・『歩天歌』でそれぞれ所属が異なる。
昴宿
- 昴宿七星は「天の耳」と呼ばれ、西方・獄事・喪事を司り、「旄頭」(北方の星)とも呼ばれる。天子の親征に先駆ける旗を象り、黄道の通り道にあたる。星の数・明暗・動揺により獄の寛厳、兵の起否、豊凶、辺境の安危などが細かく占われ、日月食・月暈、歳星・熒惑・填星・太白・辰星・客星・彗星・流星の侵犯もそれぞれ北方の憂い、女主の失勢、水旱、兵乱の兆として占われた(漢の永元銅儀では十二度、景祐の測験では十一度)。
- 芻槀六星は天苑の西、または天囷の南にあり、天子の穀物の蔵とされ、明暗で貴賎・存否を占う。
- 天陰五星は天子の狩猟に従う臣を象り、不明ならば吉、明るければ機密漏洩の兆とされた。
- 天河一星(「大河」とも)は天廩の北にあり、山林の妖変を候う星とされた。
- 巻舌六星は昴宿の北にあり枢機・智謀・口舌を司る。占いは静穏なら賢人の昇進、動揺すれば讒言の害とされた。
- 天苑十六星は昴・畢の南に環状に並び、天子の禽獣を飼う苑を象る。明るければ家畜繁栄、五星や客星・彗星の侵犯は兵乱・獣の死の兆とされた。
- 天讒一星は巻舌の中にあり巫医を司る星とされ、暗ければ吉、明るく盛んなら君主が佞言を容れる兆とされた。
- 月一星は昴宿の東南にあり蟾蜍を象り、女主・臣下を司る。明るく大きければ女主の専権、太白・熒惑の侵犯は臣下の反乱の兆とされた。
- 礪石四星は五車の西にあり百工の砥石を象り、明るければ兵乱、常であれば吉とされた。
- (按語)『晋書』天文志は天河・巻舌・天讒を天市垣に、天苑を二十八宿の外に置くなど、芻槀・天陰・月・礪石は『隋書』にのみ見え、諸書で所属が異なる。
畢宿
- 畢宿八星は辺境の兵と狩猟を司り、大星は「天高」「辺将」と呼ばれ四夷を鎮撫する尉を象る。『史記』天官書にいう「畢は罕車(狩猟の車)」で、明るく大きければ遠方の来朝、色を失えば辺兵の乱を意味した。日月食・月暈、歳星・熒惑・填星・太白・辰星・客星・彗星・流星の侵犯は、辺地の兵乱・饑饉・洪水・大将の死など、方角ごとに詳細に占われた(漢の永元銅儀では十六度、景祐の測験では十七度)。
- 天節八星は畢の傍、附耳の南にあり、使臣が持つ節を象り、明るく大きければ使者忠実、熒惑・太白の侵犯は使臣の謀反や法令不行の兆とされた。
- 九州殊口九星は天節の南にあり、異民族との通訳を司る官とされ、消える星の数で天下の乱れを占った。
- 附耳一星は畢の下にあり、得失の聞き取りを司る。動揺すれば讒臣が君側にいる兆とされた。
- 九斿九星は玉井の西南にあり天子の旗を象り、太白・熒惑の侵犯は兵騎が野に満ちる兆とされた。
- 天街二星は昴畢の間にあり陰陽の境を象り、内外の関所を司る。明るければ王道が正しく行われ、街の外側が乱れれば讒言が横行する兆とされた。
- 天高四星は畢宿の東北にあり高台を象り、八方の気を望む役とされた。
- 諸王六星は五車の南にあり諸侯の存亡を候う星とされ、明るければ諸侯が服従、見えなくなれば四方に兵が起こる兆とされた。
- 五車五星・三柱九星は畢宿の北にあり五帝の座・車舎を象り、五穀の豊凶(麻・麦・豆・黍・稲)をそれぞれ司る。西北の大星「天庫」は太白・秦分を、東北の「天獄」は辰星・燕趙分を、東南の「天倉」は歳星・魯分を、その南の「司空」は填星・楚分を、西南の「卿」は熒惑・魏分を、それぞれ司るとされた。星の明暗・出没により穀価の騰落や兵乱・水旱が細かく占われた(今の紹興暦法では歳星の運行に一年百四十五分の遅速があるとし、旧説の疑わしさを指摘する)。
- 天潢五星は五車の中にあり河梁・渡し場を司り、月の侵入や五星の留守は兵乱・水害の兆とされた。
- 咸池三星は天潢の南にあり池沼・魚鼈を司り、明るく大きければ吉兆、五星・客星・流星の侵犯は兵乱・旱魃・水害の兆とされた。
- 参旗九星は「天旗」「天弓」とも呼ばれ弓弩による防備を司り、形が弓を張ったようであれば兵乱の兆とされた。
- 天関一星は五車の南にあり日月の通り道、辺境の関門を象る。芒角があれば兵乱、五星の侵犯は貴人の死や関梁の不通の兆とされた。
- 天園十三星は天苑の南にあり菜果の畑を象り、白雲気の侵犯は兵乱の兆とされた。
- (按語)『歩天歌』はこれらをすべて畢宿に属すとするが、武密の書・『乾象新書』では天節・参旗・天関・五車・三柱の所属が畢宿と觜宿とで諸説分かれ、一致しない。
觜宿
- 觜觹三星は三軍の物資を司る蔵とされ、明るければ軍糧が十分、動揺すれば盗賊が横行する兆とされた。日月食・月暈、歳星・熒惑・填星・太白・辰星・客星・彗星・流星の侵犯は、趙国の地の兵乱・穀貴・叛乱などとして占われた(漢の永元銅儀・唐の開元游儀ではともに三度)。
- 坐旗九星は司恠の西北にあり君臣の位を象る星とされ、明るければ国に礼が行われる兆とされた。
- 司恠四星は井宿の鉞星の前にあり、天地・日月・星辰・鳥獣草木の変異を候う役とされた。
- (按語)『歩天歌』は坐旗・司恠を觜宿に属すとするが、武密の書・『乾象新書』はともに参宿に属すとする。
参宿
- 参宿十星は「参伐」「天市」「大辰」「鈇鉞」とも呼ばれ、万物を斬り刈る陰気を助け、天の獄・刑罰・辺城の九訳を司る。中央に横列する三星は左将・右将・後将軍・偏将軍を象り、中の三小星「伐」は鮮卑など外国を司るとされた。明暗・動揺により天下の兵の強弱、大臣の謀反、饑饉などが占われ、日月食・月暈、歳星・熒惑・填星・太白・辰星・客星・彗星・流星の侵犯は秦・燕地の凶事や国政の変化として細かく占われた(漢の永元銅儀では八度、景祐の測験では十度)。
- 玉井四星は参宿の左足の下にあり水泉・厨房を司り、動揺は憂いの兆、彗星・客星・流星の侵犯は水災・領地の喪失の兆とされた。
- 屏二星(「天屏」とも)は玉井の南にあり、明るくなければ人が病む兆とされた。
- 軍井四星は玉井の東南にあり軍営の井戸を象り、熒惑・太白の侵犯は水害・民の不安の兆とされた。
- 厠四星は屏星の東にあり厠を象り、色によって豊凶を占った。
- 天尿一星は天厠の南にあり、色によって年の豊凶・蝗害・水旱・霜害を占い、秋分に候う星とされた。
- (按語)玉井・軍井・屏・天尿の所属は『歩天歌』では参宿だが、『晋書』天文志・武密の書・『乾象新書』・『隋書』天文志・唐の開元游儀でそれぞれ位置づけが異なる。
井宿
- 東井八星は「天の南門」と呼ばれ黄道の通り道で、水衡(水利)の政と法令の公平を司る。鉞一星が井宿の前に付属し、奢侈を戒め斬る役を象る。日月食・月暈、五星・客星・彗星・流星の侵犯は、秦地の旱魃・訟獄・水害・大臣の誅罰・土木の乱発など、干支や季節ごとに細かく占われた(漢の永元銅儀では三十度、唐の開元游儀では三十三度)。
- 五諸侯五星は東井の北にあり、帝の疑事を断じ天心・帝師・帝友・三公・博士を象るとされ、五星や彗星・客星の侵犯は兵乱・諸侯の喪の兆とされた。
- 積水一星・積薪一星は北河の西北・東北にあり、酒食・厨房の供給を司り、不明・熒惑の侵犯は水害・穀価騰貴の兆とされた。
- 南河三星・北河三星は東井を挟み「両河」と呼ばれ、日月五星の常道にあたる。動揺は中国の兵乱、南戍・北戍への星の出入りは諸地方の兵乱・喪・水旱として細かく占われた。
- 四瀆四星は東井の南垣にあり江河淮済の精とされ、明るく大きければ百川の氾濫の兆とされた。
- 水位四星は積薪の東にあり水衡を司り、歳星・熒惑・彗星の侵犯は水害・耕作不振の兆とされた。
- 天罇三星は五諸侯の南にあり施しの器を象り、明るければ豊作、暗ければ凶年とされた。
- 闕丘二星は南河の南にあり天子の双闕を象り、太白・熒惑の侵犯は闕下での戦の兆とされた。
- 軍市十三星は天銭の形をなし軍の交易市を象り、星の多寡で軍糧の余剰・欠乏を占う。
- 野鶏一星は軍市の中にあり変異を主る星とされた。
- 狼一星は東井の東南にあり異民族の侵掠を象り、動揺・明盛は兵乱・器物の騰貴の兆とされた。
- 弧矢九星は狼星の東南にあり天弓を象り、陰謀への備えを司るとされた。
- 老人一星(南極星)は弧矢の南にあり、見えれば治世が安定し天子が長寿、見えなければ兵乱・凶年の兆とされた。
- 丈人二星・子二星・孫二星は軍市の西南にあり長寿と孝慈を象る星とされた。
- 水府四星は東井の西南にあり堤防・道路・溝梁を司り、辰星・客星の侵犯は大水の兆とされた。
- (按語)『歩天歌』はこれら十八座をすべて東井に属すとするが、武密の書・『乾象新書』では丈人・子・孫・水府の所属が牛宿・参宿など諸説に分かれる。
鬼宿
- 輿鬼五星は姦謀を観察する「天目」とされ、東北星は積馬、東南星は積兵、西南星は積布帛、西北星は積金玉をそれぞれ司り、中央星「積尸」は死喪・祠祀を、また「鉄鑕」として誅殺を司るとされた。明暗により穀物の豊凶や兵乱、大臣の誅罰が占われ、日月食・月暈、歳星・熒惑・填星・太白・辰星・客星・彗星・流星の侵犯は、后・太子・貴臣の憂いや疫病・土木の乱発などとして詳細に占われた(漢の永元銅儀では四度、景祐の測験では三度)。
- 爟四星は鬼宿の西北(または軒轅の西)にあり烽火を司り、明るければ辺境に警報がある兆とされた。
- 天狗七星は狼星の北にあり財貨の守護を司り、動移すれば兵乱・饑饉・盗賊の兆とされた。
- 外厨六星は天子の外厨を象り、占いは天厨に同じ。
- 積尸気一星は鬼宿の中にあり死喪・祠祀を司る星とされた。
- 天紀一星は外厨の南にあり禽獣の齢を司り、太白・熒惑の侵犯は禽獣の死・民の不安の兆とされた。
- 天社六星は弧矢の南にあり、古の共工氏の子・勾龍が治水に功があったのを祀る星とされ、明るければ社稷が安泰、暗く動揺すれば下克上の兆とされた。
- (按語)諸書で爟・天狗・外厨・天紀・天社の所属が井宿・柳宿・牛宿など分かれるが、ここでは『歩天歌』に従いすべて鬼宿に属すとしつつ諸説を併記する。
柳宿
- 柳宿八星は「天の厨宰」とされ、飲食・雷雨・木工を司り、「天庫」「鳥喙」とも呼ばれる。明るければ大臣が謹み厨食が十分、開けば民が饑える兆とされた。日月食・月暈、五星・客星・彗星・流星の侵犯は、宮室の不安・大臣の憂い・土木の乱発・兵乱・旱魃・疫病として占われた(漢の永元銅儀では十四度、唐の開元游儀では十五度、景祐の測験では十五度)。
- 酒旗三星は軒轅の右角の南にあり宴享・飲食の官を司り、揃わなければ大喪、明るければ宴楽が慎まれる兆とされた。
- (按語)酒旗の所属は『晋書』天文志では天市垣、『歩天歌』では柳宿・七星宿の両説がある。
七星宿
- 七星七星(「天都」とも)は衣裳・文繍と急兵を司り、明るければ王道盛ん、暗ければ賢良が去る兆とされた。日月食・月暈、五星・客星・彗星・流星の侵犯は、周分の憂い・橋梁の不通・地震・火災・貴臣の死罪などとして占われた(景祐の測験では七度)。
- 軒轅十七星は七星の北にあり后妃・士職を司る星座で、「東陵」「権星」とも呼ばれる。南の大星が女主、北の一星が夫人(屏・上将)、次の一星が妃(次将)を象り、雷雨・電光・霜露・虹霓などの二十四変を主るとされた。明暗・動揺により后妃・太后の安否、宮中の廃立が細かく占われた。
- 天稷五星は七星の南にあり農正を司り、明るければ豊作、暗ければ饑饉の兆とされた。
- 天相三星は七星の北(または酒旗の南)にあり丞相・大臣を象り、五星・彗星・客星の侵犯は后妃・将相の憂い、大臣の誅罰の兆とされた。
- 内平四星は三台の南にあり刑罰の公平を司る官とされた。
- (按語)軒轅・天稷・天相・内平の所属は『晋書』天文志・武密の書・『乾象新書』・『歩天歌』でそれぞれ異なり、ここでは諸説を併記する。
張宿
- 張宿六星は珍宝・宗廟の用具・衣服、および天厨の飲食・賞賚を司る。明るければ礼が正しく行われ、動けば賞賚があり、移動すれば天下に叛乱の兆とされた。日月食・月暈、五星・客星・彗星・流星の侵犯は、財宝や大臣の黜免、后の憂い、土木の乱発として細かく占われた(漢の永元銅儀では十七度、唐の開元游儀では十八度、景祐の測験では十八度)。
- 天廟十四星は張宿の南にあり天子の祖廟を象り、明るければ吉、微細であれば軍食の不通・兵乱の兆とされた。
翼宿
- 翼宿二十二星は「天の楽府」とされ、俳優・戯楽と異民族の使者を司る。明るく大きければ礼楽が興り四方から使者が来る兆、動揺すれば蛮夷の使者が来る兆とされた。日月食・月暈、五星・客星・彗星・流星の侵犯は、大将の死、女主の失勢、大臣の憂い、洪水・大風などとして細かく占われた(漢の永元銅儀では十九度、唐の開元游儀では十八度、景祐の測験では十八度)。
- 東甌五星は翼宿の南にあり蛮夷の星とされ、動揺すれば異民族の叛乱、太白・熒惑の侵犯は現地の兵乱の兆とされた。
- (按語)東甌は『晋書』天文志では二十八宿の外に置かれるが、『乾象新書』は張宿に、武密の書は翼宿に属すとする。
軫宿
- 軫宿四星は冡宰・輔臣、車騎・軍の出入りを司り、また風・喪事を占う星とされた。明るく大きければ車駕が整い、集まれば兵乱の兆とされた。轄二星は軫宿の両脇にあり王侯(左轄は同姓、右轄は異姓)を象り、日月食・月暈、五星・客星・彗星・流星の侵犯は、将相の憂い、水害・穀物の騰貴、辺境の兵乱などとして詳細に占われた(漢の永元銅儀では十八度、景祐の測験でも十八度)。
- 長沙一星は軫宿の中にあり寿命を司り、明るければ君主の長寿・子孫の繁栄の兆とされた。
- 青丘七星は軫宿の東南にあり異民族の国を象り、明るければ夷兵が盛んになる兆とされた。
- 軍門二星は青丘の西(または土司空の北)にあり天子の六宮の門を象り、常と異なる星の動きは道路の不通の兆とされた。
- 器府三十二星は軫宿の南にあり楽器の府を象り、明るければ音楽が調和する兆とされた。
- 土司空四星は青丘の西にあり境域を司り、明るければ天下豊作、暗ければ耕桑が廃れる兆とされた。
- (按語)左轄・右轄・長沙・軍門・土司空・青丘・器府の所属は『晋書』天文志・武密の書・『乾象新書』・『歩天歌』でそれぞれ異なるが、ここでは『歩天歌』に従い軫宿に属すとしつつ諸説を併記する。