- 要旨: 六種類の地形(通・掛・支・隘・険・遠)に応じた戦術を説き、敗北を招く六つの軍の状態(走・弛・陥・崩・乱・北)はすべて将の過失によるものだとし、地形を知り兵を愛することが勝利の基盤であると論じる。
六種の地形と戦術
- 通形(往来自由な地)では高く日当たりの良い場所を先に占め糧道を確保する。
- 掛形(行きやすく帰りにくい地)では敵に備えがなければ出て勝てるが、備えがあれば出ても勝てず帰還が難しいため不利とする。
- 支形(双方とも出ると不利な地)では敵に誘われても出るべきでなく、引き下がって敵が半ば出たところを撃つのが有利だとする。
- 隘形(狭い地)では自軍が先に占めれば兵を満たして敵を待ち、敵が先に占めていれば満ちていれば従わず、満ちていなければ従う。
- 険形(険阻な地)では自軍が先に占めれば高所で敵を待ち、敵が先に占めていれば引き下がって従わない。
- 遠形(互いに離れた地)では勢力が均衡していれば挑戦は不利とする。
- これら六つは地の道であり、将の重大な責務として熟考すべきだとする。
敗北を招く六つの状態
- 走(勢力互角なのに一で十を撃つ無謀)・弛(兵が強く吏が弱い統制の乱れ)・陥(吏が強く兵が弱い統制の乱れ)・崩(大吏が怒って服さず勝手に戦う)・乱(将が弱く教練が行き届かない)・北(将が敵情を見誤り弱兵で強敵に当たらせる)の六つを挙げ、これらはいずれも天災ではなく将の過失であり、重大な責務として熟考すべきだとする。
地形は用兵の助け
- 地形は用兵を助けるものであり、敵情を見極め険阻・遠近を計算するのが上将の道だとし、これを知って戦う者は必ず勝ち、知らずに戦う者は必ず敗れるとする。
- 戦の道理として必ず勝てるなら、君主が戦うなと言っても戦うべきであり、勝てないなら君主が戦えと言っても戦わなくてよいとする。進んで名誉を求めず、退いて罪を避けず、ただ民を保ち君主の利益に合致することを求める将こそ国の宝であるとする。
兵を愛することと甘やかすことの違い
- 兵を赤子のように慈しめば共に深い谷にも赴くことができ、愛児のように扱えば共に死ぬこともできるとするが、厚遇しながら使いこなせず、愛しながら命令できず、乱れても治められないなら、驕った子のようなもので用いることができないとする。
勝敗を知る条件の重なり
- 自軍が撃てることを知っていても敵が撃てないことを知らなければ勝率は半分であり、敵が撃てることを知っていても自軍が撃てないことを知らなければ勝率は半分であり、敵も自軍も撃てることを知っていても地形が戦いに適さないことを知らなければ勝率は半分であるとし、兵を知る者は迷わず窮しないとする。
- 「彼を知り己を知れば勝ちて危うからず、天を知り地を知れば勝ちを全うできる」と結ぶ。