新唐書卷二十六 志第十六 曆二

麟徳暦の制定経緯

  • 高宗の代、戊寅暦はますます疎かになり、李淳風が甲子元暦を作って献じた。太史に麟徳2年から頒用させ、これを麟徳暦と呼んだ。古暦には章・蔀、元・紀、日分・度分など複雑な単位があったが、淳風は総法1340でこれを統一した。中晷(日時計の影)を測る術を精密化して冬至・夏至を考証し、木製の渾天図を作って黄道を測定した。また劉焯の皇極暦の方法によって取捨を行った。当時これを精密と評価し、太史令瞿曇羅が上呈した経緯暦と並行して用いた。
  • 弘道元年12月甲寅朔・壬午晦。8月、翌年元日を甲申とする詔が出たため、癸未晦に繰り上げられた。
  • 永昌元年11月、載初と改元し周正(周の暦法)を用い、12月を臘月、建寅の月を1月とした。神功2年、司暦が臘月を閏月とすべきところを誤り、前年の晦日に月が東方に見えたため、太后は正月を閏10月とする詔を出した。この年、甲子の年に南至(冬至)となり聖暦と改元、瞿曇羅に光宅暦を作らせ用いようとしたが、3年に至り光宅暦の作成は中止され、再び夏正(夏の暦法)を用い、開元16年まで続いた。

麟徳暦の暦法数値

  • 麟徳暦は麟徳元年甲子を起点とし、上元からの積算は26万9880算。総法:1340。朞実:48万9428。常朔実:3万9571(362を加えると盈朔実、351を減じると朒朔実)。辰率:335。
  • 朞実に積算を掛けたものが朞総。総法で割った商が日数、60で割った余りを甲子から数えて冬至を得る。15日・小余292小分6分の5を累加して次の気を得る。小余に6を掛け辰率で割った商で加時(時刻)を定める。
  • 常朔実で朞総を割った余りが閏餘。朞総から閏餘を引いたものが総実、総法で割った商が冬至から引いて天正常朔を得る。常朔の小余と閏餘を朞総から引いたものを総実とし、29日・小余711を常朔に加えて次朔、7日・小余512太を加えて上弦、さらに加えて望・下弦を得る。

進綱・退紀と二十四気の消息表

  • 進綱:16(秋分後)。退紀:17(春分後)。
中節 躔差率 消息総 先後率 盈朒積
冬至 益722 息初 先54 盈初
小寒 益618 息722 先46 盈54
大寒 益514 息1340 先38 盈100
立春 益514 息1854 先38 盈138
啓蟄 益618 息2368 先46 盈176
雨水 益722 息2986 先54 盈222
春分 益722 息3708 後54 盈276
清明 損618 息2986 後46 盈222
穀雨 損514 息2368 後38 盈176
立夏 損514 息1854 後38 盈138
小満 損618 息1340 後46 盈100
芒種 損722 息722 後54 盈54
夏至 益722 消初 先54 朒初
小暑 益618 消722 先46 朒54
大暑 益514 消1340 先38 朒100
立秋 益514 消1854 先38 朒138
処暑 益618 消2368 先46 朒176
白露 益722 消2986 先54 朒222
秋分 益722 消3708 後54 朒276
寒露 損618 消2986 後46 朒222
霜降 損514 消2368 後38 朒176
立冬 損514 消1854 後38 朒138
小雪 損618 消1340 後46 朒100
大雪 損722 消722 後54 朒54

(各気の率と後気の率を平均して末率を求め、二率の差から総差・別差を算出し、循環的に加減して各日の躔差・先後率・消息を求める算法が続く。定気の算出は消息積により常気を加減して求める。)

変周・月の遅速表

  • 変周:44万3077。変日:27、余743、変奇1。変奇法:12。月程法:67。
  • 奇法を総実に掛け変周で割った余りを奇法で割ると変分が得られる。総法で割った商を日に加え、天正常朔夜半の入変を得る。7日・余512・奇9を加えて上弦、さらに加えて望・下弦・次朔を得る。
変日 離程 増減率 遅速積
1日 985 増134 速初
2日 974 増117 速134
3日 962 増99 速251
4日 948 増78 速350
5日 933 増56 速428
6日 918 増33 速484
7日 902 初増9末減隠 速517
8日 886 減14 速526
9日 870 減38 速512
10日 854 減64 速474
11日 839 減85 速412
12日 826 減104 速327
13日 815 減121 速223
14日 808 初減102末増29 速102
15日 810 増128 遅29
16日 819 増115 遅157
17日 832 増95 遅272
18日 846 増74 遅367
19日 861 増52 遅441
20日 877 増28 遅493
21日 893 増4 遅521
22日 909 減20 遅525
23日 925 減44 遅505
24日 941 減68 遅461
25日 955 減89 遅393
26日 968 減108 遅304
27日 979 減125 遅196
28日 985 初減144末増入後 遅71
  • (離程の前後差から進退差を求め、朔・弦・望の入曆日の増減率から通率・率差を算出し、経辰変率・転余・定率を求める複雑な算法が続く。第7・14・21・28日についてはそれぞれ初数・末数が定められている。)
  • 定朔・弦・望の日は、遅速の定数を朒朒小余に加減して定め、日名が次朔と同じなら大の月、異なれば小の月、中気がなければ閏月とする。晦・二日の消息、弦望の消息も同様に調整する。

黄道宿度と日躔・月離

  • 黄道の宿度:南斗24度328分、牛7度、婺女11度、虚10度、危16度、営室18度、東壁10度、奎17度、婁13度、胃15度、昴11度、畢16度、觜觿2度、参9度、東井30度、輿鬼4度、柳14度、七星7度、張17度、翼19度、軫18度、角13度、亢10度、氐16度、房5度、心5度、尾18度、箕10度。
  • 冬至の日躔(太陽位置)は南斗12度と定める。15度292分小分5ずつ加えて各定気の加時日度を求める。日躔差により気初夜半の日躔度を求め、1日1度ずつ加え躔差で調整し、次日の値を得る。
  • 合朔度(月の位置)は上弦で91度417分、望で182度834分、下弦で273度1251分を加える。天正常朔夜半の入変日及び余りに基づき月離を求め、1日ごとに加算して次日の値を得る。夜半月離は朔後は昏度、望後は晨度として求める。

昼夜漏刻・晨前刻など

  • 辰刻:8分24。刻分法:72。
定気 晨前刻 黄道去極度 屈伸率 発斂差
冬至 30刻 115度 伸1 益16
小寒 29刻54分 113度 伸3 益16
大寒 29刻 110度 伸6 益22
立春 28刻33分 107度 伸9 益9
啓蟄 27刻 102度 伸10 益7
雨水 26刻 97度 伸11 益3
春分 25刻 91度 伸12 損3
清明 23刻54分 85度 伸11 損7
穀雨 22刻42分 79度 伸10 損9
立夏 21刻39分 74度 伸9 損22
小満 20刻54分 70度 伸6 損16
芒種 20刻 68度 伸3 損16
夏至 20刻 67度 屈1 益16
小暑 20刻 68度 屈3 益16
大暑 20刻54分 70度 屈6 益22
立秋 21刻39分 74度 屈9 益9
処暑 22刻42分 79度 屈10 益7
白露 23刻54分 85度 屈11 益3
秋分 25刻 91度 屈12 損3
寒露 26刻 97度 屈11 損7
霜降 27刻 102度 屈10 損9
立冬 28刻33分 107度 屈9 損22
小雪 29刻 110度 屈6 損16
大雪 29刻54分 113度 屈3 損16

(各気の屈伸率に発斂差を損益して1日ごとの屈伸率を求め、これを累計して晨前定刻・夜刻・昼刻・去極度・昏旦中星(南中する星)などを算出する複雑な手続きが続く。赤道は太初暦の星距に同じとする。)

遊交(月の交点運行)の数値

  • 遊交終率:1093万9313。奇率:300。約終:3万6464、奇113。交中:1万8232、奇56半。交終日:27、余284、奇113。交中日:13、余812、奇56半。虧朔:3106、奇187。実望:1万9785、奇150。後準:1553、奇93半。前準:1万6678、奇263。
  • (総実に奇率を掛け終率で割った余りから入交分を求め、常朔小余を加えて朔汎交分を得る。以下、望・次朔の計算、朔望の交分と限数の比較による日食・月食の判定、去交時数・差率などの複雑な算法が続く。)
  • 月が外道にあるとき朔でも通常は日食しないが、夏至初日は初準248を用い、去交分が初準以下で加時が午正前後7刻以内なら食す。日ごとの変準・刻準・時準・差準を計算し判定する。月が内道にあるときは朔で通常は食すが、夏至初日は初準1373を用い、去交分が初準以上で加時が午正前後18刻以内なら不食のこともある。
  • 望の去交前後定分は季節ごとに定数(冬224・夏54・春交後100交前200・秋交後200交前100)を減じ、残りがなければ既(皆既食)、余りがあれば後準で割って月食の分(欠ける割合)を求める。
  • 朔交(日食)は月が内道の場合、季節ごとの蝕差(558、春分後は日ごとに6ずつ損じる等)を用いて不蝕分・蝕分を算出し、加時による時差の調整を経て日食の大分を求める。

五星(歳星・熒惑・鎮星・太白・辰星)の暦法数値

  • 歳星:総率53万4483奇45。伏分2万4031奇72半。終日398・余1163奇45。平見は冬至〜小寒6日均減、大寒以降は日ごとに67分ずつ損じ、春分は平常、以後日ごとに89分加える、立夏〜小満6日均加、芒種は日ごとに89分損じ、夏至〜立秋4日均加、処暑は日ごとに178分損じ、白露は平常、以後日ごとに52分減じ、小雪〜大雪6日均減。運行は順行114日18度509分(1日1分ずつ遅くなる)、前留26日、旋退42日6度12分(1日2分ずつ速くなる)、さらに42日6度12分退(1日2分ずつ遅くなる)、後留25日、後順114日18度509分(1日1分ずつ速くなる)で夕伏する。
  • 熒惑:総率104万5080奇60。伏分9万7090奇30。終日779・余1220奇60。平見は冬至27日減、以後日ごとに603分損じ、大寒は日ごとに402分加え、雨水〜穀雨27日均加、立夏は日ごとに198分損じ、立秋は平常、処暑は日ごとに198分減じ、小雪〜大雪27日均減。前順・前遅・前留・退・後留・後遅・後疾の各段階の日率・度率が冬至から大雪まで気候に応じて細かく変化する複雑な規則があり、合前伏71日736分・行54度736分で伏する。
  • 鎮星:総率50万6623奇29。伏分2万2831奇64半。終日378・余103奇29。平見は冬至初日から4日減、以後日ごとに89分加える。大寒〜春分8日均減、清明は日ごとに59分損じ、小暑初は平常、以後日ごとに89分加え、白露初は8日加え以後日ごとに178分損じ、秋分4日均加、寒露は日ごとに59分損じ、小雪初は平常、以後日ごとに89分減じる。運行は順行83日7度290分(1日半分遅くなる)、前留37日、旋退51日2度491分(速度変化あり)、後留37日、後順83日7度290分で夕伏する。
  • 太白:総率78万4449奇9。伏分5万6224奇54半。終日583・余1229奇9。夕見伏256日、晨見伏327日余1229奇9。夕平見は冬至初め平常、以後日ごとに100分損じ、啓蟄〜春分9日均減、清明は日ごとに100分損じ、芒種は平常、夏至は日ごとに100分加え、処暑〜秋分9日均加、寒露は日ごとに100分損じ、大雪は平常。夕順行・平行・遅行・留・退の各段階も季節に応じ日度が変化する。晨平見・晨退・晨留・晨遅行・晨平行・晨疾行も同様。
  • 辰星:総率15万5278奇66。伏分2万2699奇33。終日115・余1178奇66。夕見伏52日、晨見伏63日余1178奇66。夕平見は冬至〜清明平常、穀雨〜芒種2日均減、夏至〜大暑平常、立秋〜霜降は見えないことがある(一定条件で例外的に見える)、立冬〜大雪平常。夕疾行12日17度(1日1度503分、大暑〜処暑は12日17度2分)、夕平行9日9度、夕遅行6日4度(大暑以降を除く)、夕留5日で夕伏する。晨平見・晨留・晨遅行・晨平行・晨疾行も同様の規則による。
  • (各星とも、伏分を総実から減じ総率で割って平見の所在を求め、常見・定見を経て入見宿度・行度を算出する複雑な計算手順が続く。)
  • 中宗が復位した後、太史丞南宮説は麟徳暦の上元が五星の入気加減を伴い合璧連珠の正当な起点でないとして、神龍元年(乙巳)を起点とする乙巳元暦を作った。上元からの積算は41万4360算、11月甲子朔夜半冬至から七曜が牽牛の初度に起こるとした。黄道はあるが赤道はなく、五星はまず定合を推算してから伏日を加えて定見を求める点が異なるが、他は淳風の術と同じであった。この方法は成立したが睿宗の即位とともに廃止された。