資治通鑑周紀三 赧王 十七年 前299年

孟嘗君、秦で失脚

  • ある者が秦王に、孟嘗君が秦の相となれば斉を先に考えて秦を後回しにするので危険だと讒言した。
  • 秦王は楼緩を宰相に任じ、孟嘗君を捕らえて殺そうとした。

狐白裘と狗盗

  • 孟嘗君は人を通じて秦王の寵姫に助命を求めた。
  • 姫は、かつて孟嘗君が秦王に献じた狐白裘を欲しがった。
  • しかしその裘はすでに手元になかったため、食客の中の盗賊まがいの技能を持つ者が秦の蔵に忍び込み、これを盗み出して姫に献じた。
  • 姫はその礼に報いて秦王に取りなしたので、孟嘗君は解放された。

鶏鳴で関を脱する

  • だが秦王は後悔して追手を出した。
  • 孟嘗君が関に着いたときはまだ早朝前で、関門は鶏が鳴いてから開く決まりだった。
  • そこでまた別の食客のうち、鶏の鳴きまねに巧みな者が声を発すると、野鶏がいっせいに鳴き、関が開いた。
  • 孟嘗君はこれによって脱出し、無事に帰った。

秦、楚を攻める

  • 楚人は「国にはすでに王が立った」と秦に告げた。
  • 秦王は怒り、武関から兵を出して楚を攻め、首級五万を挙げ、十六城を奪った。

趙の平原君と名家たち

  • 趙王は弟の勝を平原君に封じた。
  • 平原君は士を好み、食客はしばしば数千人に及んだ。
  • その中に公孫龍がおり、堅白・同異の弁論で知られた。

孔穿と公孫龍の論争

  • 孔穿が魯から趙へ来たとき、公孫龍は「臧には三つ耳がある」といった類の詭弁をもって論じた。
  • その場では孔穿は応じなかったが、翌日平原君に対し、「三耳は難説でしかも誤り、二耳は易しくしかも正しい。君は易しくて正しい方に従うべきか、難しくて誤った方に従うべきか」と問い返した。
  • 平原君は答えられず、以後は公孫龍に孔穿と弁論させないようにした。
  • 彼は、公孫龍は言葉では勝つが道理では負け、結局は屈辱を受けると言った。

鄒衍、公孫龍を退ける

  • 鄒衍が趙を訪れた際、平原君は公孫龍と白馬非馬の説を論じさせようとした。
  • 鄒衍は、弁論とは本来、異なるものをきちんと区別しつつ互いに傷つけず、異説を秩序立てて混乱させないためのものであり、考えを述べて意味を通じさせることが目的だと説いた。
  • 勝つ者は自分の守るところを失わず、負ける者も求めていた真理を得る。それゆえ正しい弁論には意味があるが、言葉を飾り立て、たとえ話で相手を翻弄し、相手が本意に届かぬようにするのは大道を害するだけだと批判した。
  • そのような紛糾した議論を競うことは君子のすることではないとし、座の人々も皆これを善いと認めた。
  • 公孫龍はこのためついにその勢いをくじかれた。