司馬法用眾

  • 要旨: 兵の多寡に応じた戦い方の違いを説き、地形の選び方、敵情の観察方法とそれに応じた攻撃の仕方、追撃・撤退の注意点を列挙する。

兵の多寡による戦い方の違い

  • 少数の兵を用いるときは守りを固めることを重んじ、多数の兵を用いるときは統制を重んじる。少数は変化に富む用兵が利となり、多数は正攻法が利となる。
  • 多数を用いるときは進退を明確に、少数を用いるときは進退を柔軟にする。多数で少数を包囲する場合は遠く包み込んで一部を開けておく。分散して交代で攻撃する場合は、少数で多数を迎え撃つ。
  • 敵に多数が疑いを抱いているようなら自軍の判断で動く。有利な状況を独占できるなら旗を伏せて逆に敵を迎え撃つ。敵が多数であれば自軍は結集して包囲に備える。敵が少数であるか、あるいは恐れているようであれば、これを避けて道を開ける。

有利な地形の選び方

  • 戦うにあたっては、風を背に受け、高所を背にし、右手に高地を、左手に険阻な地を置き、低湿地や崩れやすい地を通り抜け、野営や休息の際には亀の甲羅のように守りを固める陣形を取る。

敵情に応じた駆け引き

  • 陣を布いてまず敵の出方を観察し、敵情を見て事を起こす。相手が待ちの姿勢であれば、こちらも様子を見ながら太鼓を鳴らさずに敵の動きを待つ。攻めるときは陣を構えて機をうかがう。

敵の動静を見極める観察法とそれに応じた攻め方

  • 兵の多寡でその変化を観察し、進退でその堅固さを観察し、危機に陥らせてその恐れを観察し、静かなときにその怠りを観察し、動くときにその疑いを観察し、奇襲によってその統制を観察する。
  • 敵が疑いを抱いているところを撃ち、疲れているところに攻めかかり、追い詰めて屈服させ、油断を狙って奇襲し、避けられない状況に乗じ、敵の企てを阻み、思慮を奪い、恐怖に乗じて攻める。

追撃と撤退の注意

  • 敗走する敵を追うときは休むことなく追い続ける。ただし敵が道を外れて止まるようなことがあれば、それには警戒を要する。
  • 敵の都に近づくときは必ず進路を確保しておき、退くときには必ず戻る手立てを考えておく。

疲弊を避け、士気を保つ工夫

  • 戦において、先んじすぎれば疲弊し、後れれば怯み、休みすぎれば怠り、休まなくても疲弊する。休みが長すぎても、かえって怯みに転じる。
  • 家族への手紙のやり取りを絶つことは、後顧の憂いを断つためである。良き者を選び兵を整えることは、人の強さを高めるためである。荷を捨て食を節することは、人の決意を開くためである。これらは古来の政の姿である。