三略中略

  • 要旨: 帝・王・覇という統治の段階を対比し、権謀による統率(覇者の道)の性格を論じたうえで、『三略』全体の構成(上略・中略・下略それぞれの役割)を明かし、功臣が全うすべき身の処し方を説く。

帝・王・覇の違い

  • 三皇は言葉を発せずとも徳化が四海に流れ、天下は誰の功とも意識しない。
  • 帝は天地に則って言葉と命令を発し、天下は太平となるが、群臣は功を譲り合い、百姓はその由来を知らない。臣を用いるのに礼や賞を待たせず、功があっても害を及ぼさない。
  • 王は道によって人を制し、人々の心を服させ、規範を定めて秩序を保ち、四海が一つにまとまり王の職分は乱れない。武備はあっても実際の戦闘には至らず、君は臣を疑わず臣も君を疑わないため、国は安定し、功を成した臣も義をもって退き、害を及ぼさずに済む。
  • 覇者は権によって士を制し、信によって士を結びつけ、賞によって士を働かせる。しかし信が衰えれば士は離れ、賞が乏しくなれば士は命令に従わなくなる、という下降傾向を持つ段階として位置づけられる。

覇者の権謀術(軍勢の教え)

  • 『軍勢』を引き、出征にあたっては将に専権を与えるべきで、朝廷が進退に干渉すれば功を成しがたいとする。
  • 『軍勢』を引き、智者・勇者・貪欲な者・愚かな者、それぞれの本性(功名心・志・利益・命への無頓着)に応じて用いるのが軍の要諦であるとする。
  • 『軍勢』を引き、弁舌の士に敵の美点を語らせて衆を惑わせてはならず、仁者に財を司らせて下に恩を売らせてはならないとする。
  • 『軍勢』を引き、巫祝を禁じ、吏士に軍の吉凶を占わせてはならないとする。
  • 『軍勢』を引き、義士は財で動かすべきではなく、義士は不仁の者のために死なず、智者は暗愚な主のために謀らないとする。

君主・臣下双方に求められる徳と威

  • 君主は徳がなければ臣に叛かれ、威がなければ権を失う。臣は徳がなければ君に仕えられず、威がなければ国は弱くなるが、威が過ぎれば身を滅ぼす、という均衡の必要が説かれる。
  • 聖王は世の盛衰・得失を見て制度を定めるとし、諸侯には二師、方伯には三師、天子には六師という軍制の格差が示される。世が乱れれば叛逆が生じ、王の恩沢が尽きれば盟誓を破って互いに討伐し合うとする。

権変(謀略)の必要性

  • 徳と勢いが互角で優劣がつかないときは、英雄の心を掴み、衆と好悪を共にしたうえで、さらに権変(臨機の謀略)を加えるべきだとする。計策なくしては疑いを解けず、奇策なくしては奸を破り寇を退けられず、陰謀なくしては功を成せない、と権謀の必要性を説く。

『三略』三篇の構成と読み方

  • 聖人は天に則り、賢者は地に則り、智者は古に学ぶとし、『三略』は衰えた世のために作られたと明かす。
  • 上略:礼と賞の制度を定め、奸雄を見分け、成敗の理を明らかにする。
  • 中略:徳行の差を論じ、権変を審らかにする。
  • 下略:道徳を陳べ、安危を察し、賢を賊う咎を明らかにする。
  • 人主が上略を深く理解すれば賢を任じて敵を制することができ、中略を理解すれば将を御し衆を統べることができ、下略を理解すれば盛衰の源と治国の要諦を明らかにできる。

功臣の身の処し方

  • 臣下が中略を深く理解すれば、功を全うしつつ身を保つことができるとする。高く飛ぶ鳥が死ねば良い弓は蔵われ、敵国が滅べば謀臣は用済みになるという故事を引き、「亡ぶ」とは命を奪われることではなく、威権を奪われ地位を退くことを意味すると説く。
  • 功臣に対しては、朝廷で高位を与えてその功を顕彰し、中原の豊かな国を与えて家を富ませ、美色や珍玩を与えてその心を慰めるのがよいとする。
  • 一度結束した衆は急に離しがたく、一度与えた威権は急に奪いがたい。軍を解いて師を罷める時こそ、存亡の分かれ目である。だからこそ地位を弱め国を奪うことで臣の力を削るのが、覇者の取る方策であり、その論は純粋な王道からは外れる(駁雑である)とする。
  • 社稷を保ちながら英雄を掌握し続けるのが中略の説く要諦であり、そのため世の君主はこれを秘めて明かさないのだと結ぶ。