六韜文啟

  • 要旨: 太公望は聖人が守るべきは「無為にして万物を化す」ことだとし、政教を施しながらもそれと悟らせずに民を治め、天下を静める道を説く。

聖人の守り

  • 文王が聖人は何を守るべきかを問うと、太公望は、何を憂え何を惜しむこともなく万物が自然に得られ、逆に憂え惜しめば万物は縮こまると答える。
  • 政の施しはその変化を知られず、時の運行はその移り変わりを知られない。聖人はこの道を守って万物を化し、窮まりなく終われば再び始まるとする。

天下の分封と大紀

  • 古の聖人は人を集めて家となし、家を集めて国となし、国を集めて天下となし、賢人を分封して万国とし、これを「大紀」と名づけた。
  • 政教を陳べ民俗に順い、曲がったものを直に化し、万国が互いに通じ合わずともそれぞれの所を楽しみ、人が上を愛する状態を「大定」と名づける。

静と動、大失

  • 聖人は静めることに努め、賢人は正すことに努めるが、愚人は正すことができず人と争う。
  • 上が労すれば刑罰が繁くなり、刑罰が繁くなれば民は憂え、民が憂えれば流亡し、上下ともに生を安んじられなくなる状態を「大失」と名づける。
  • 天下の人は流水のようなもので、塞げば止まり、開けば流れ、静かにすれば澄む。聖人は事の始めを見てその終わりを知ると説く。

静める方法

  • 文王が静める方法を問うと、太公望は「天には常の形があり、民には常の生がある。天下と生を共にすれば天下は静まる」と答える。
  • 最上の者はこれに因り、その次はこれを化する。民が化して政に従えば、天は無為にして事を成し、民は関与せずして自ら富むとし、これを聖人の徳と説く。
  • 文王はこの言葉が自分の思いにかなうとして、常に心に留めて用いると応じる。